相談に来られたA子さんに「結婚前には両目を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ」とお話しした。


結婚前は相手の長所だけでなく短所もよく見極めなさい。そして結婚した後は、多少の欠点には目をつぶり、お互いに支え合いながら暮らしていきなさい、という人生の知恵。


ところがA子さんは苦笑いしながらこう言った。


「私は結婚前には片目を閉じて見ていたんです。結婚してからは両目を大きく開いて見てしまいました」なるほどと思った。


恋愛中は相手の良いところばかりが目につく。多少の欠点が見えても「きっと大丈夫」「結婚したら変わるだろう」と都合よく解釈してしまう。そして結婚して現実の生活が始まると、今度は相手の欠点ばかりが気になり始める。


靴の脱ぎ方、言葉遣い、お金の使い方、生活習慣の違い。以前は気にならなかったことが次々と目につき「こんな人だったのか」と落胆する。そして気がつけば、長所よりも短所を探す名人になってしまうのである。


仏教では、人は自分の心を通して世界を見ると教える。同じ相手を見ていても、感謝の心で見れば有り難い存在となり、不満の心で見れば欠点だらけの存在となる。


もちろん我慢すればよいという話ではない。問題があれば話し合い、改善する努力も必要である。しかし相手を裁くことばかりに心を使えば、自分自身も苦しくなる。


人は誰しも不完全な存在である。完璧な夫も妻もいない。だからこそ、相手の欠点を一つ見つけたら、長所を二つ三つ探してみる。その心の余裕が夫婦を長続きさせる秘訣なのかもしれない。


A子さんは「今は悩んでいます」と言われたが、その悩みは実は多くの夫婦が通る道なのだろう。


結婚とは、理想の相手を探すことではなく、不完全な者同士が互いに学び合い、育ち合う修行の場なのかもしれない。相手を変えようとする前に、自分の見方を少し変えてみる。その時、閉じるべき片目は相手に対してではなく、自分の執着や思い込みに対してなのだと思う。