「泉ちゃん、ついに専属決まったよ!」


「え…ほんとですか?」


「うん、こないだノンノの編集長と会っててね…

君を売り込んできたんだ」


「すごい!やったぁ♡ありがとう前野さん!」


「これから忙しくなるよ~」


「大丈夫!頑張るっ(๑•̀ㅂ•́)و✧」


「その意気その意気!よし、今日はお祝いに

みんなでパーっといこう!俺が奢るっ!」


「わーいっ♡」












目の前で何が起こったの?



痛みも何も感じなくて振り返ると前野さんが血だらけで倒れていて…



庇ってくれたんだとすぐに分かった







前野さんに必死で呼びかけると、すでに虫の息ながら力を振り絞って喋るのを聴いた




前「これ…で…もう…ゆる…される…かな…」







やっと話が出来たのに…



これから…海外でやり直すって言ってたのに…




こんなのって……




こんな別れ方って……






ショックのあまり音が消えた




何も聞こえてこない




光啓の声でさえ…




今私の目の前は…色も音もなくなったモノクロの景色が涙で滲んで見えるだけ





もう…




ダレモウシナイタクナカッタノニ…











前野さんが搬送されるとゆいこさんが逮捕され、警察に連行されていった




ふと目にした…




にっしーの肩でひっそりと泣く光啓…




そうだよね…光啓だって悲しいよね…




恋人だった人が目の前で罪を犯して逮捕されるなんて辛すぎるよね…




「光啓……」






1人で泣かないで…私も…




一緒に泣くから






ギュッ




「!」



日「ごめんな、こんな所見せて」



「ううん…光啓だって辛いよね…」



日「お互い様だよ………」



「うん」



日「しばらく…このままいさせて」






そういうと抱き締めてくれてる力が強くなる




日「前野さんなら大丈夫だよ、こんなに強い泉を育ててくれた人だから…きっと大丈夫」



「うん(泣)……ありがとう」










西「2人とも落ち着いた?」



「にっしー…」



西「はい、こういう時は甘いものだよ」





偶然会社に来ていたにっしーが全てを知った上でこうして気遣ってくれる




優しいな、にっしー…




買ってきてくれた自販機のココアを飲む




日「ごめんな?お前も予定あったろうに…」



西「いいんだよ、明日から仕事だからその前に挨拶をって思って来ただけだから」



日「新年早々こんな事に巻き込んで悪かったよ…」



西「そんな事気にすんな(^^)」



『日高くん、吉井さん』



「副社長……」



日「白井さん、お疲れ様です」



『何があったか栗原から聞いて、びっくりしたよ…大丈夫?』



日「はい…」



『よかった…今、警察の方が事情を聞かせてほしいって…』



「……わかりました」



『大丈夫だよ、女性の方だし…』



日「…今からですか?」



『うん…気持ち的にしんどかったらまた後日でもいいって』



「大丈夫です…」



『7階の応接室で待ってもらってるから』



日「わかりました」



『何かあったらフォローするから』



「大丈夫ですよ、いってきます」




ポンッ



西「……」



「にっしー…」





にっしーの…




言葉にしないけど伝わってくる優しさが暖かい



その優しさは光啓にも伝わったみたいで…





2人は…そっと微笑みを交わし合う