「はー、それにしても気持ちいいなぁ。。。」

ポカポカと温かい日差しを背中に受けながら馬は草を食んでいた

「こんな状態がごくごく普通に当たり前のようにあったなんて・・・」

馬はさきほど「私の声」が言っていたことを思い返していた。


「『無かった』のではなく、僕が『気付かなかった』だけ・・・かぁ。。。」

もし「私の声」が言うとおりそうだったとして、一体いつからそうなってしまったのか、馬は記憶を巡らせ始めた。


走って走って走って・・・その繰り返しだったなぁ。。。

では、なぜ走っていたのか・・・

そう思った途端、いろんな記憶が浮かんできた


「あのゲートさえ越えれば幸せになれるから」

「あのゲートさえトップで越えれば素晴らしい馬生が待ってるから」

「あのゲートを越えなければダメな馬だと思われるよ」

「今遊んでたらゲートを越えられなくなるよ、今は我慢して越えてから遊びなさい」

そんな声が聞こえてきた


「うわー!もうやめてくれー!!!」

途端に馬は目の前が真っ暗になったかのように悶絶しながら走りだした


「そうだ、あの声だ。あの声があったから僕は走ったんだ・・・」

息を切らせて、汗をかきながら馬はつぶやいた


「そうしなきゃいけないんだ・・・。そうしたら幸せになれるんだ・・・」

絞り出すような声で馬はつぶやいた



「それでどうなったの???」

また「私の声」が聞こえてきた


「・・・・・・・・・」

「クスクス それで幸せになれたのかい?」

「君は僕なんだからわかってるだろうに・・・」

「ねー、そうだよね!笑」

相変わらず軽妙だ。



「君は本当に僕なのかい?いろいろ考えることが多すぎてあえて聞かなかったけど」

「本当にも何も、『今の私』だって言ってるじゃない 笑

あ、間違えた!『今の君』 笑」

「・・・・・・・・」

「正確に言えば、『今を生きている君』」

「はー・・・もうどうでもいいや」

「どうでもよくない」

「お、めずらしく笑わずに答えたね」

「大事なことだからね」

「大事なこと?とは?」

「その意味では僕は君であって君ではない」

「???一体何なんだよ、僕は君とか君は僕ではないとか・・・」

「僕は『今を生きる君』、君は『今を生きていない君』

そういう意味で違う、って言っている」

「あーもう、なんなんだよ一体・・・」

「その違い、わからない???」

「わからないも何もあるもんか!僕は『今生きている』から僕なんだろう?『今生きていない』なら死んでるってことじゃないか!

え?ひょっとして・・・僕は死んでしまったのかい????ここって天国???ひー!!!笑」

「『今生きている』と『今を生きている』では意味が全然違うさ」

「あ、ごめん!ちょっとふざけすぎてしまったね、気を悪くさせてしまったかな・・・ほんとごめん!ごめんね!」

「や、別にどっちでもいいんだけど 笑」

「あ!笑った!気を悪くさせちゃったかと思ってドキッとしたよ!(ほっ)」

「はい。今のが『今を生きていない君』だったね」

「え?」

「僕を『怒らせてしまったんじゃないか』って心配して、気を使って謝ったよね 笑」

「うん・・・まぁ・・・ね」

「その瞬間、君は『今を生きていなかった』ってことだよ 笑」

「???」

「君の意識が、目の前にいる僕と話しているっていう『外に向かった』状態から、僕が気分を害してしまったかも知れないから、何とかしてそこを修復しようという『内に向かった』状態へ変わってたってことさ」

「あぁ・・・うん。確かにそうかも。」

「その瞬間、君は目の前にあるものが見えなくなっていた。僕の気分を取り戻させることで頭がいっぱいだったはず」

「うん・・・。でもよかったよ、機嫌直してくれて」

「あー・・・せっかく説明したのにやっぱり『今を生きていなかった』んだね 笑」


なんだかややこしくてよくわからなかったが、よくわからないなりにも、「僕の声」がとても大事なことを僕に話してくれているんだなということはよくわかった



つづく