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Zeina et al. The British journal of radiology 82(975):254-61, Nov 2008
 
狭心症や心筋梗塞の画像診断ってどうやるかご存知ですか?
 
急いで治療をしないといけなさそうな患者さんは従来通り、入院して心臓のカテーテル検査(冠動脈造影検査)というものを受けます。
いわゆる、ベッドの上に横になって、局所麻酔をしたあとに手首や足の付け根の血管(動脈)から細い管を心臓の根元(大動脈基部)まで進めていき、カテーテルの先から造影剤というレントゲンにうつる薬剤を血管に流して撮影を行います。
 
1. 血管に直接お薬を流して撮影するため綺麗な写真がとれます。
2. 血流にのって造影剤が血管に広がっていくため、血液の流れる方向やスピードがよく分かります(治療方針を決めるのに役立ちます)。
3. 上手な人がするとレントゲンによる被曝量や造影剤の使用量を少なくできます。
4. 検査と同時に、そのまま治療することもできます。
 
などなど、いろいろなメリットもありますが、やはり検査にかかわる合併症というのも存在します。
 
1. 手首や足の付け根の血管に針を刺してカテーテルを挿入する(詳しく言うとシースという血液の逆流防止弁がついた眺めのカテーテルをいれたあと、検査・治療用のもっと長いカテーテルを使っていきます)ため、患者さんの血管の性状や、術者の技術によっては血管を傷つけてしまうことがあります。
2. 検査や治療が終わってカテーテルを抜いた後は、針を刺した場所の止血が必要になります。最近は止血用のバンドを使用することが増えましたが、うまくバンドがあたっていなかったり、患者さんが安静を保てずに動いたりしたことで傷口の下に血腫という血の塊ができることもあります。
3. 検査時間が長くなると被ばくの量も増えますし、造影剤の量も増えます。造影剤の使用量が増えると腎臓に負担がかかるため、腎臓の機能が低下している人には大問題となることがあります。
 
もっと負担が軽く同じような検査ができないか?ということで登場したのが冠動脈CTです。みなさんも聞いたことがあるCTといって体の輪切りの画像がとれる機械で、心臓の血管も撮影しちゃおうという試みです。
 
この冠動脈CTが日本で使われ始めたのはいつだったでしょうか。自分が勤めていた病院では、10年ちょっと前くらいだったように記憶しています。
 
カテーテル検査をしなくても、それと似たような写真がとれるってすごくないですか?
ただ、ここにもやはりいろいろと検査の制限があります。
 
1. 普通のCT(単純CT)だと血管に色をつけることができないため、カテーテル検査と同じように造影剤をつかって写真(造影CT)をとる必要がある。
2. 心臓は拍動しているため、撮った写真を再構築するして立体画像を作る必要があり、そのため心電図をとりながら撮影し、同じ心臓の周期で画像を集めないといけない。そのため、不整脈がある人にはこの検査が向かない。
3. 上記理由のため、脈拍は遅い方(心拍65/min以下くらい)が綺麗な写真がとれる。そのため、β遮断薬など脈を遅くする薬を使うため、脈が遅くなりすぎたり、血圧が低下する危険がある。
4. 造影剤を流すために点滴を取らないといけない。点滴をいれるのが難しい人などは、検査中に点滴がもれてしまうことがある。
5. 造影剤に対してアレルギーがある人や腎機能が著しく悪い人は検査ができない。
6. CTの性能にもよるがカテーテル検査より写真の精度が下がる(たいして細くないのに大げさに写る場合もある)。
7. 血流の方向やスピードは分からない。
8. CTなのでレントゲン以上に被ばくする。
 
冠動脈CTの制限をこういう風に列挙してしまうとイマイチな検査に聞こえてしまうかもしれません。ただ、上に載せている写真のように、3Dの写真として見ることもできるため、そこから有用な情報が得られることも多々あります。
 
治療と同じように、検査にもそれぞれ長所と短所があります。担当の先生の説明をよく聞いて、自分にあった検査を選んでくださいね。