冠動脈バイパス術が終わって一息ついていたら、左内腸骨動脈瘤破裂の患者さんがきて緊急手術になっちゃいました。
そんな季節が到来したなぁってしみじみ感じます。
まぁ、無事手術が終わったんで良かったんですけど。


急変。
急に病態が悪化して命に関わる状態のことをこう呼びます。

先日、腹部大動脈瘤の手術後の患者さんが急変し亡くなられました。
自分は主治医ではなかったけど、自分が会いに来るのを楽しみにしてくれた患者さんでした。

術後、呼吸・循環動態は概ね安定していたけど、慢性腎不全の急性増悪がありおしっこがあまり出ない状態が続きました。
なんとなくおかしいなぁって感じはしていたけど、腎機能以外の採血結果は大きな問題なく本人も割りと元気にしていました。

術後3日目の夜、おしっこがあまりです、手術前から体重がどんどん増えてきたため、アシドーシスの進行やカリウムの上昇はなかったけど、右足の付け根から大きな点滴を挿入し、CHDF(持続透析ろ過:24時間ゆっくり行う透析みたいなもの)をすることになりました。
酸素化の悪化が出始めたためBiPAPという圧力をかけられるマスクはしていたものの、笑顔で頑張るって言ってくれました。

術後4日目。
バイタルは安定していたけど、朝の採血で肝酵素・LDH・CPKの上昇、アシドーシスの進行を認めました。ビリルビンの軽度上昇もあったため、腹部エコーをしましたが肝臓や胆嚢など腹部臓器には大きな異常はりませんでした。そうなると腸の血流が下がってなる腸管虚血、虚血性大腸炎などの病気が疑われます。
そして、そういった病態になった場合、それなりの割合で一気に全身状態が悪くなり命を落とすことがあります。早急な対応が必要となりますが、この方の場合、高齢者であり、基礎疾患も多かったため積極的な治療(外科手術)をすることはできませんでした。

自分にできることは点滴の内容をカロリーから電解質の割合など細かく計算し、少しでも体の負担が軽くなるように調整することだけでした。

この日も午前中は意識もしっかりしており、頑張るよって笑顔で言ってくれました。

そして夕方になり突然、興奮状態となった後、呼吸が乱れ徐々に脈拍と血圧が低下。
心肺蘇生には成功しましたが、いつどうなってもおかしくない状態いなってしまいました。

術後5日目。
朝から血圧が徐々に低下を始める。
主治医から家族に説明があり、延命措置はとらないこととなった。
自分が手を握って「よく頑張ったね。」と声をかけるとしばらくして自発呼吸が止まった。
それから脈がのびて心臓が止まるまでは30分とかからなかった。
なんとなく自分が来るのを待ってくれていたような感じがした。



普通にしゃべることが出来た人が24時間後には亡くなってしまう。
急変ってほんとに変化が早い。
そのため家族の受容(病態の変化を受け止めること)が難しい場合も多々ある。
病気によっては急変することがあることを本人・その家族は理解しておく必要があると思う。
これだけ医療が発達しても万全という訳ではないからだ。



家族の同意を得ることができたので、その方は病理解剖を受けることになった。
最終結果はまだ出ていないが、小腸の一部と大腸の多くの部分が壊死していた(腐っていた)。