最近感じること。
それは患者側ももっと病院の現状を知る必要があるということ。

一時期は医療従事者のいろいろな問題がマスコミを騒がせていた。
多くは医療ミスや医療従事者のモラルに対するもの。
あたかも世の中にはひどい医者・病院だらけだって感じの報道で。

でも最近は患者側のモラルも問われるようになってきている。
医療従事者に対する暴言や暴行。
医療費の不払い。
診療時間外を狙った受診。


昔は「お医者様」だった時代があった。
自分が医者になりたてのころは「患者様」と呼ぶ病院が増えてきたときだった。

どっちが良くてどっちが悪いという問題ではなく。
お互いに歩みよらなければならない時期だと思う。


命というとても身近な問題なのに、医学というものは専門性が高く理解しがたい。
理解しがたい世界だったがマスコミ、インターネットの普及などによりわりと情報を得られるようになった。
情報は氾濫しているが理解することはやはり難しい。
そんな中、いろいろと是正しなくてはならない医療問題が発覚して。
問題が出てくるにしたがって患者側の権利も守ろうという活動が活発になって。
医療の透明化、情報開示が求められて。

そんなこんなで、なんとなく患者側の権利を尊重することが先行しすぎた感がある。
それ自体は悪いことではなく、正しいことなんだけど。
それをはき違えて理解している人もいて。


何が良くて何が悪いのか。
判断することはとても難しい。
でも病院の現状を把握していないと不利益をこうむるのは自分自身。
誰に文句をいっても始まらない。


1.病院はボランティア団体ではないため経営を考えなくてはならない。
そのためDPCという仕組みを取り入れて余計な検査・治療を控えるように医者は指示される。
もうけを出すためにしたい検査も控えなくてはならないし、出したい薬もだせない現状がある(ちょっと大袈裟ないいかたかもしれないが)。
患者さんのためと思って、いろいろな検査を行い、いろいろな処方をし、いろいろな治療を行っていると病院の経営が破綻してしまう。

2.2年間の研修医制度ができたため、慢性的な医者不足が起こっている。
今まで新卒できていた医者が2年間これなくなったわけで、その分のマンパワー不足が生じている。
特に忙しくきついと言われている診療科は影響が大きい。
何も分からず入局し、きつい毎日が普通と感じていた自分たちの時代。
今は研修医として忙しさを体験することで入局を断念し、それほどきつくない診療科を選ぶ人間が多くなったと言われている。
きつく忙しい診療科ほど、人が少なく、給料が安く、訴訟が多かったりする。

3.時間外労働の多さもひどいものがある。
当直明けでも次の日の仕事が終わるまで帰ることはない。
患者さんの調子が悪いと何日も病院に泊まることもある。
睡眠不足だからといってもちろんミスが許されるわけでもなく完璧な診療が求められる。



確かにひどい医者はいると思う。
でも、それはごく一部の人間のはず。
警察でも、教師でも、他の公務員でもよくニュースにはなるけど。
それはごく一部の人間で、他の多くの人間は誠心誠意頑張っている。

頑張っているけど、あまりにも働く環境が酷なのだ。
本当に患者さんのことを思って、患者さんのための治療しようとするといろいろな制限がかかってしまう。
したくないのではなく、できないという現状がある。
そんな中で頑張っている医者が大勢いる。
頑張っている看護師がいる。
頑張っている医療従事者がいる。
それが今の病院。


ここ数年、医療従事者側は患者側の立場に立つことを努力してきたと思う。
それに対して患者側が医療従事者側の現状を知っているかというとそうではない。
これからはお互いの立場を理解しよりよいものを求めていく必要があると思う。
それは病院に対して求めるだけではなく今の医療制度そのものを変えていく必要がある。


まずは舛添さんに現状を知ってもらわないと。
道のりは遠いだろうな。