唐突ですが、
企業組織(個人経営者等含む)に雇われた経験がある方は多いかと思います。
※勿論、経験のない人もいますが…。
ここでは2人以上から組織として表現しますが、
組織で仕事を続けることが一般的な選択肢だとします。
組織の使用者から、
例えばほとんど一方的に「賃金」の改定を伝えられた経験のある方、いらっしゃいますか。
私も若い時、
アルバイトの頃から幾度も経験しています。
正社員になってからも色々ありました。
「賃金」が上がる分には少しは嬉しい感じがします。
驚くほど上がれば、
相当嬉しいけれど、それはいつまで続くのか不安も出てきます。
期待に応えられ続けるかも心配です。
逆に、なんだかんだと諸条件を示され、
結局、自分にとってはもしかしたら不利になるかも…
と感じた時はどうでしょう。
気持ちがざわつくこともあります。
いきなり「賃金」が下がったら、
やり切れない思いが込み上げてくるかもしれませんね。
キャリアコンサルタントはそうした相談を受けることも多いかと思います。
「賃金」は、その人にとってのかけがえのない時間、
貴重な労力、やりがい、生きがい、将来、家族との生活等々、
全てをかけているといっても過言ではありません。
また、仮に「賃金」が納得できたとしても、
職場環境等がその人にとって辛ければ、なかなか難しい問題が発生してきます。
実際、使用者、経営者から示された「賃金」がきっかけになり、
職場環境が悪くなることも多い。
これって経営側が気づいていないこともあるんですよね。
そうした現象に驚くことも結構あります。
厚生労働省が調査発表している令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」
の結果を通して、先日、仲間たちと勉強する機会がありました。
特に、
企業組織が「賃金」改定にあたって最も重視した要素がなんであるのか。
企業経営の基本中の基本は、
業績が上がれば「賃金」を上げ、業績が下がれば「賃金」を下げるということ。
そんなことは子どもたちでもわかっています。
それでいいのでしょうか。
今では組織(経営者)が自力で業績を上げられなくても、
政策的なインセンティブが設定されることもあり、なんだかよく分かりませんね。
※個人的な見解ですみません。
国が何かしてくれたら、
一時的に賃上げ施策をとる企業組織もあるかもしれません。
でも、それでは虫が良すぎる感じがします。
国側も企業経営側も魂がそこにあらず(心ここにあらず)という感じを受けます。
継続性にも欠けることでしょう。
読者の皆様は、
企業の「賃金引上げ等の実態」についてどんな要素があると思われますか。
ここ数年の環境動向等から、
様々に異なりが出る(ばらつく)のではないかと想像していました。
ここにキャリア形成支援のあり方が試されていくとも考えています。
こういうときだからこそ人材(人財)を大切にしたいという考えを強く持ち、
「雇用の維持」とか「労働者の能力開発機会の拡大」とか、
「労働力を確保・定着」させたいとか。
そこを重視する企業のパーセンテージが増えるのではないかとイメージしました。
結果、令和3年の調査でも、
全ての規模の企業組織においてトップ(約50%)の答えが同じなのです。
企業組織の約半数が出している答え。
最も重視する要素は「企業の業績」だそうです。
前年度の令和2年と比較してもほとんど変わらず。
きっと今年度の令和4年も同じような調査結果だと思います。
しかしこれでは、
わざわざお金をかけて調査する意味がないようにも感じてしまいました…苦笑
要するに(業績が上がれば賃金を上げる)という単純な思考構造のままともいえます。
「労働力の確保・定着」「雇用の維持」などは10%にも満たない。
そうした企業組織に対してキャリアコンサルティングを導入しようとすれば、
当然に働きかけをしているキャリアコンサルタント自身が実績を重ねたいがために、
業績を求めていくことになる。
まさにパラレルプロセスの現象が生まれそう…
まるで似たもの同士の関わりになりかねない気がします。
勿論、放っておいてはいけませんが。
それだけ私たちにしなやかな軸が備わっていないと本質的な展開は難しいと考えます。
※単なるプレゼンテーションのための素材作りであれば、いくらでも綺麗なデータを取れるとは思いますが、実態とはあまりにギャップがあることになるでしょう。
本来、組織の業績というものは、
労働者の個々の能力を発揮させられるような環境等を、
経営者が工夫を凝らしながら提供しようと必死に模索するからこそ、
業績が本質的に向上するのだと考えます。
経営者が自らの会社の業績を最も重視し、
労働者の「賃金」をコントロールするというのは、ある意味、陳腐です。
業績重視の組織は崩れるのも早い。そうした組織を多くみてきています。
業績がいい時は都合よく明るい雰囲気が組織内で漂います。
それは認められた人たちだけがそう感じるものです。
しかもそういう人が目立つので実態が掴み難くなる。
「できる」従業員は経営者と同じように羽振りがいい。
しかし業績が下がった途端、
組織の雰囲気、その空気感が冷たくなります。
「結局人だよね」
と、経営に携わる方の多くが言葉にします。
しかし業績が芳しくないときにはそんな言葉は聞こえてこないことも多いのです。
どんな組織でも業績・数字が先にくることがあります。
キャリアコンサルタントはそんな実態にもうまくお付き合いしながら、
自分達の軸をブラさず、組織は実際に実態がないことを知っているからこそ、
個の支援を特に大切にすることが必要だと私は思います。
せめて自分自身が担当するクライエントを大切にして、
数字などにとらわれず、本質的な支援に注力する。
柔軟に考えられる力が必要なんだと考えます。
クライエントを大切にするからこそ、
時には必要に応じて組織に介入し否定する覚悟、勇気も必要でしょう。
※あくまで建設的にということです。
組織への働きかけはこうするのだ…というような形にこだわったやり方では、
上記に記した業績重視の経営者とあまり変わらない気がします。
経営知識がある方ほど、
組織観に専門的にとらわれすぎていることもあります。
日頃から色々考えていること、
それは1級キャリアコンサルティング技能検定試験の口頭試問などでも試験官に伝えることができます。
一例ですが、
「キャリアコンサルタントとしてどのように研鑽を積むか」
と問われれば、
ロールプレイで扱った事例や目の前の事例相談者の置かれた立場やその支援内容等から得られた体験をもって、
自身が日頃から考えている社会問題等に置き換え、
問題提起をしたり、自分に何ができるかを宣言したりすること、
それは指導レベルキャリアコンサルタントとして社会から求められることになるのではないかと思うのです。