前回は事例相談者が相談に来た経緯を理解していくことの重要性を書きました。

 

今回は、そうした対話を通して理解した事例相談者の話しの内容から、

事例相談者がどのようにしたいのか、どんなことを解決したいと考えているのか、

事例指導者としての考えなども交えながら、

いくつかの問題点を共有していくステップを書いてみたいと思います。

 

私がこれまでこのブログで相当に意識して書いてきたことは、

「事例相談者のことを理解しようとする」

「事例相談者を尊重する」

「事例相談者のやり方を否定しない、指摘しない」

というように強調してきています。

 

しかしながら、そうは言っても、

事例指導者のもとに相談にきているのですから、

事例相談者の単なる理解者になっているだけでは

よくわからないまま面接が終了してしまう…なんてこともあるかもしれませんね。

 

ここで大切なことは、

事例相談者から話しをしてもらった事例内容を通して、

事例相談者のどこにフォーカスしていくかという点だと思います。

※決して相談者に焦点をあてるのではありません。

 

勿論、事例相談者から《この点に触れて欲しい…》とは明確には言ってこないでしょう。

※例外はありますが…。

 

これは事例指導者が事例相談者の話しを聴きながら、

理解した内容を言い換えて伝え返してみたり、

内省を促すような問いかけをしてみたりすることを細かく重ねているからこそ、

事例相談者にとって自分の問題点が明確化されてきたり、

何となく薄っすらと、ボンヤリと自らの問題がここにありそうかな…等と感じたりできます。

 

こうした時にその絶妙なタイミング等で、

事例指導者はガイドをしていくように大事な点をフォーカスしながら質問を重ねます。

 

時には、事例指導者が感じたことを開示することも有効かもしれません。

 

ここで細かく、いくつかの点に触れていくこともありで、

事例相談者がそうしたことに向き合い、そして何を問題としているのか、

今ここで解決していきたいことは何なのか、

事例相談者がはっきりと自分自身を理解していく瞬間が生まれます。

 

問題点をお互いに共有できるようになるには、

事例相談者の考え方や想いを理解していくプロセスがとても重要であり、

事例指導者はその内側で、

事例相談者と対話を重ねている自分の姿を客体的に見つめ、

その対話の内容を様々な情報や角度から統合したり構造化したりしながら、

裏面に隠れている本質的な部分をあれこれと自身の胸に何度も訊き、

そして重要なポイントで絞り出す感じでしょうか。

 

それが事例相談者にとってもし異なるのであれば、

それはいつまでもその点に固執しないことです。

 

いくら事例指導者の発言した言葉が事例相談者にとって適切であっても、

受け入れられないことはあるでしょう。

 

対話が足りないことからそのようになったか、

若しくはタイミングなのか、

 

その場で起こることは色々と変化しているわけで、

こうすれば良いという正解はないのです。

 

事例指導面接も、キャリアコンサルティング同様に、

人と人との信頼関係から成り立つものなので、

何か足りないと感じたら元に戻ることが重要かもしれません。

 

こんな時は、今一度、事例相談者が考えていること、

感じていることをわかろうとすることが、

事例相談者の問題を認識していく最短の道かもしれませんね。

 

事例指導面接の究極は、

今日この場で、

事例相談者自身が自分の抱えている問題を明確化でき、

その問題を解決するための方法や手掛かりを、今ここで考えられるステップを踏めれば、

十分な成果があったと言えるのではないでしょうか。

 

事例指導面接は、

事例指導者が事例相談者の問題を押し付けることではなく、

また、

その問題解決の方法を事例指導者のやり方で教えることでもありません。

 

自分の問題が何なのかわからない事例相談者が、

自分の問題に気づいたときは、ひとつの成長ステップを踏んでいることになります。

 

そこに絶対的に必要な要素は、

全てを聴いてもらえる専門家がそこにいることではないでしょうか。