逆転
「いつからか、見守りながら、見守られ」親しくしていた彼女のご主人がご逝去されたのは四年前のこと何事につけご主人に頼っていた彼女は一人暮らしになり悲しみに暮れた彼女夫婦と私とは長年のお付き合いなので気心も知れておりそれとなく彼女の見守り役に何かあるとすぐに不安になる彼女のこと些細なことでもすぐ私に電話をして来たその都度、ちょっとした調べものを応援したり彼女の相談事にも私なりの考えを率直に伝えながら後は、彼女の判断に任せてきた正直最初は,えっこんなことまで聞いてくると思ったほどの彼女だがその都度、はい、わかりました。と言いながらも全てを自身の肥やしにある時期からの電話で、ふっと気付いたことがある私は、彼女をさりげなく見守っていたつもりでいたが実は彼女が私を見守っているのだと気付いたごめんなさいね、笑われるかも知れない事なの貴方に聞いてもらうけど笑わないでねお電話大丈夫ですか、いつもすいませんねえと彼女は気を使いながら掛けてくるので大丈夫ですよ私達は年齢も同じだしむしろ元気なお声が聞けるのを楽しみにしているから気が楽になったのか彼女は2・3日に一度は必ず電話をくれるようになったたいていの場合15分~20分くらいで終わるあなたどうなのお身体大丈夫、ご主人はお元気と聞いてくる毎回同じ返事になるが、有難う大丈夫よ、と言ういつのまにか私を見守っている彼女別居している息子さん夫婦やお孫さんの事も今は、ほとんど言わなくなった弱な感じの彼女だがどんどん強くなっており物事を達観している感じもする我が家と違い、彼女には裕福ゆえの悩みも多々あったが愚痴を言えば言うほど彼女自身が家族から置き去りにされている様な気がして惨めな気持ちになるのかも知れないそれならと見守る側になり度々電話を下さる支えられるよりも支える方がご機嫌な感じでいい互いに会話をすることで安否確認もできる今日もまた電話が鳴った、貴方身体はどうなのご主人は大丈夫、ここまではいいのだが貴方、ご主人を大切にして上げてねと毎回彼女は言うが私は、この言葉に抵抗を感じている何くれとなく面倒を見ており大事に過ぎているんですけど、と言いたい言葉をぐっとこらえ「ハイ、わかりました」と言う立場は逆転してるが彼女には、いつまでも元気でいて欲しい最後まで読んで頂き、有難うございました。