ブロンプトン、朝4時台の移動感覚 | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

冬になって、ブロンプトンによる通勤経路がそれまでと少し変わると、色々なことがおきます。
先日は、午前4時過ぎに朝食を食べたあと家に帰ってハンターカブで出直すということがありました。
お隣の駅の吉野家さんにいつも通り着いたところまでは良かったものの、そこで私がつい余計に本を読んでしまったのが原因でした。
前にこのブログで忙しいのにいつ読書しているのかについて、「細切れの時間を利用している」と書いたことがありました。
もちろん、一日中雨降りで休みの日などはブロンプトンに乗るわけにゆきませんから、まとまった時間本を読むことに集中するのですが、そんな日は滅多にありません。
ということは、仕事をしながらでも通勤の最中でも、ごくごく短い時間に本を開けて1節でも、数行でも構わないから読むということを積み重ねてゆかないと、ボリュームのある本は読めません。
食後や電車を待っている間のちょっとした待ち時間に本を読むには、電子書籍を取り出して電源入れてなどとやっているよりも、鞄から本を出して栞が挟んである頁を開けた方が遥かに速いのです。
電車が到着したときも、パタンと閉じてサッとしまっておしまい。
馴れの問題かもしれませんが、3分とか5分といった短い時間の中で集中して本を読むのは、紙の本でなければできないと私は思っています。


その日の朝も、朝食ができるまでのほんの数分、昨夜寝る前に読んでいた本の続きに目を走らせていました。
前の晩もかなり面白いと感じた内容だったので、我慢できなかったのです。
するとみるみるうちに続きの内容に引き込まれ、行儀が悪いと知りつつも、朝食を食べながらページをめくっておりました。
こういう時、時間が経つのは早いものです。
学校でも、同じ授業時間なのに面白い先生の授業はあっという間に時間が過ぎるのに対し、話がつまらない、興味をもてない、何のためにこんなことを学ぶのかはっきりさせずにダラダラ授業している教師のコマは、何倍にも長く感じるのでした。
これと同じことは読書でも言えます。
小説でも哲学書でも、内容の簡単さや難解さにかかわらず、引き込まれてしまう本というのは、ほんの数行読んだだけでも感じているよりずっとはやく時間が過ぎています。
きっとあれこれ考えながら読んでいるからでしょう。


この時も、1節しか読んでいないのにちょっとわからないことがあって、スマホで調べてその内容まで熟読したら、いつもより余計に時間がかかっているのにまったく気づきませんでした。
会計を済ませてブロンプトンを展開し、すぐ近くの大通りを横断する信号迄行って時計を見たら、4時35分でした。
新川崎駅を4時43分発の電車に乗るのに、あと8分しかありません。
否、駅に着いた後自転車をたたんでカバーをかけ、改札口を抜けてホームに降りるまでには、どんなに急いでも1分はかかります。
ということは、あと7分で駅まで走らねばなりません。
ここで距離のことを詳細に説明すると、私の家から新川崎駅までは、どこにも寄り道せずに最短ルートを通って片道4.2㎞の道のりがあります。
信号を守って普通に走って15分ですから、4時25分までに家を出れば間に合うのですが、最寄駅の吉野家さんに立ち寄って朝食を食べてゆくので、走行距離は800m増えて片道5㎞になります。
もちろん食べる時間も勘案せねばならないので、家を4時とか4時5分に出るようにしていました。


それが12月に入って隣の駅の吉野家さんに行かねばならなくなり、距離は片道5.85㎞まで伸びてしまいました。
しかも家から隣駅まではひと山越えねばなりません。
だから4時に出ていたのでは間に合わず、10分早めて家を3時50分には出るようになりました。
これって市場に勤める人たちと同じ時間サイクルかと思いきや、彼らは1時2時に起きて家を出るということで、私にはまねできません。
さて、その吉野家さんから新川崎駅までは2.75㎞。
これを小径車ブロンプトンで7分以内に走ることが果たして可能でしょうか。
もし乗り遅れたら、4時43分の次は5時17分と、実に34分間も電車がありません。
しかも次の電車に乗ると大船5時44分着、藤沢同48分着と、お寺に6時までに辿り着くのがギリギリの時間になってしまいます。
おそらく地方に住んでいる鉄道利用者は、こんな感覚で列車を利用しているのでしょう。
そんなギャンブルみたいなことしたくないし、だいいち早朝で車が少ないことで車やオートバイの運転手も油断していたり、一日のうちで最も眠気に襲われたりしている時間帯だろうから、その中をギリギリの速度で自転車を飛ばしてゆくのは危険でしょう。
ということで、吉野家さんから来た道を戻り、また山を登り返して3㎞ちょっとの道を自宅まで戻りました。

家に戻って時計をみると、ちょうど一番列車が新川崎駅を発車する4時43分でした。
『間に合ったかも』と思いながら上下防寒着を着こみ、4時48分にハンターカブで家を出ました。
寒いし、ついつい「車で家を出る」という選択肢も頭をよぎりましたが、こんなに朝早くから車に乗って、帰りは学校の下校時間帯にも重なるし、そんなときにもし居眠り運転をして事故でも起こしたら取り返しのつかないことになります。
その点オートバイなら、今の季節はさすがに居眠りなどできないほど寒いわけです。
けっきょくハンターカブで鎌倉に到着したのは5時35分くらいと、一番列車に乗ってブロンプトンで走ってくるより10分程度の遅延で済んだものの、オートバイは寒風に対して受け身ばっかりなので、自転車で走って到着したときよりも遥かに身体が冷えてしまっていました。
仕方なく、掃除しながら軽い有酸素運動になるよう動いたり、ストレッチをしたりして身体を温めたのですが、やはりブロンプトンで走り込んできた場合と違って、運動量の足りていない感覚はその日一日ついて回りました。
ついでに、帰りは帰りでブロンプトン+鉄道併用通勤とは違い、帰りの電車で眠れないことと、家には15分くらい早く帰れるものの、往路同様やはり身体が冷え切ってしまい、今度はすぐにお風呂に入って温めないと、本が読めないし、パソコンでブログ書きをしようにもいつもの調子に乗れないのでした。


やはり1週間のうち最低で半分以上は、ブロンプトンを漕いで通勤しなければ、健康が保てないように思いました。
学生のときにスポーツをしていて、「1日サボれば身体は3日分鈍る」なんて言われていましたが、それが本当ならば毎日何かしら運動しないと、どんどん身体は退化してゆくということになります。
私の場合、旅先でブロンプトンに乗るとか、ブロンプトンで峠越えをするために、日常トレーニングをしているというモチベーションがあるから良いものの、これがただ健康を保つため、経済的な事情のために自転車で通勤するとなったら、続けるのにかなりきついのではないかと思いました。
ところで、この経験をした翌日は、やはり同じルート、同じ時間でお隣の駅の吉野家さんにゆきました。
二日続けて同じ轍を踏んでしまっては「学習能力がない」と自己評価を下げてしまうので、こんどは「ながら食事」はせず、とにかく食べることに集中することで時間通りに食べ終わりました。

昨日と同じ信号で止まって腕時計をみると4時25分でした。
風も昨日同様に弱風の北風が吹いているだけです。
これなら余裕で間に合うわけですが、つい、「昨日あのまま走っていたら間に合ったのか」という疑問が頭に浮かんだので、「鉄は熱いうちに打て」とばかり、危なくない程度に急いで新川崎駅まで走ってみることにしました。
信号は守る、全力の8割くらいの運動で走った結果、駅に到着したのは4時31分30秒でした。
けっきょく実際に走ってみたら6分半しかかからなかたので、仮に昨日諦めて家に戻らなかったとしても、途中アクシデントにでも遭遇しない限り、間に合ったはずだということが分かりました。
さらに横須賀線の到着時刻を観察していると、列車がホームに入ってきてドアが開くのは、4時43分ちょうどではなく、同43分30秒とか45秒なのです。
だから、駅に到着して慌てずにゆっくりカバーをかけても間に合ったわけです。
これは、いつも私がホームで本読んでいた本を閉じるタイミングから、その日に限ってのことではなく、いつもの時刻表通りであると承知しています。
もし何らかのアクシデントで列車に乗り遅れても、次の電車まで30分以上も読書時間が与えられたと喜べばよいのかもしれません。


人間が何か新しいことに挑戦する際に大事なのは、アクセルを踏み続けることよりも、ブレーキをかけないことの方だといいます。
たしかに水泳でもスキーでも、タイムトライアルするときには自己を鼓舞することよりも、弱気にならないことの方が大事で、自分で自分に制動をかけてしまったなら、殆どの場合良い結果は得られません。

ブロンプトンで峠越えするような場合も、カラ元気を出すと持たないので、諦めないことの方に心の重心を置いています。
つまり、いかに無駄なく、抵抗を少なくしてスムーズに運動するかが肝要なのです。
だからはるか前の信号が赤の場合、まるで路面電車の運転のように徐行し、その信号が青になったらそのまま走り抜けられるよう、タイミングを計りながら走ります。
この方が、いちいち信号で停まっては青信号になった途端に全力ダッシュをかけるという走り方よりも疲労が少なく、またトータルでは同じ距離を早く移動できます。
そしてそれこそが、もっともブロンプトンに適した走りだと感じています。
この時間帯は、歩行者も他の自転車も、車も絶対数が少ないということで、邪魔が入らない分無駄のない自転車走行ができるということも特徴です。

駅までブロンプトンで走ってゆくことも、ある意味では交通ルールを守ったうえでのタイムトライアルなわけで、2.75㎞を6分半(390秒)で走るということは、分速でおよそ423m、平均時速に直すと25㎞/hで、平地を5㎞くらいの距離であればクロスバイクよりも早く走れ(同じ乗り手が乗った場合という意味)、駐輪の手間や、駐輪場から駅まで歩く必要もない6速ブロンプトンにとって、そんなに無茶な数値ではありません。
「限界に挑戦」などという走り方は感心しませんが、ブロンプトンを通勤に利用している身としては、朝4時5時台の走行と移動時間の感覚というのは、苦しくても快感が含まれます。
くわえて、仮に列車に乗り遅れても、ほかの選択肢が与えられてラッキーだと喜ぶくらいの余裕が欲しいものです。
なぜなら通勤と違い、旅先では自宅に帰ってオートバイや車で仕切り直しなど効かないですし、列車に乗り遅れたら乗り遅れたで、「もし間に合っていたらできなかった経験」をするかもしれないのですから。