林道小菅線にブロンプトンをつれて(その2) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

猿橋駅で下車して小菅の湯行きのバスにエクストリーム乗り換えを挑戦することにした私。
ある年の晩秋の週末、いつもの通り武蔵中原4時43分始発の南武線下り立川行きに乗車します。
この列車は塩山駅から柳沢峠や大弛峠を目指す際にも、甲州街道尺取虫方式の旅でも、何度も使っているのでお馴染みです。

今回は、乗車にあたってJR東日本発売の「のんびりホリデーSuicaパス」(当日限り有効2,670円)を購入しました。

行きは武蔵中原から猿橋まで1340円、帰りは奥多摩駅まで自転車で下ってくるつもりなので、奥多摩~武蔵中原間1,100円で、合計2,440円と損してしまいますが、もし猿橋に戻る場合は10円お得ですし、青梅線で帰ってくる場合も途中下車して食事をする場合はこの切符の方が安くなります。

ホームにあがると川崎方向からの乗り継ぎ客がいないせいか、静寂そのものです。
夏が過ぎて秋も深まると、この時間は真っ暗です。
快晴の日中は夏日でも夜明け前のこの時間帯はかなり涼しくなっており、自転車で駅まで走る際にもライトと長袖が必要です。
今回はブロンプトンで林道を登るので、山の中へ行けば日中も肌寒く、上りは結構な運動量で汗をかくので半袖だったとしても、下りはその汗で風邪をひくおそれがあるので、脱ぎ着できる長袖は必要です。


こうして真っ暗な朝に南武線下り列車に乗っていると、中学生の頃、クラブ活動の朝練や寒稽古などで早く学校へ行かねばならないときに、こうして自転車で武蔵新城駅まできてこの時間帯の電車を利用したものです。
あの頃は旧型国電で駅も地上駅だったので、今よりずっと寒かった記憶があります。
乗り換え駅で、人口の多い武蔵小杉駅ではなく、そのお隣の車両基地のある武蔵中原駅始発のため、発車直後はガラガラなのは当時と同じですが、武蔵溝ノ口、登戸、稲田堤、府中本町、分倍河原と、他線との乗り換え駅毎にお客さんが入れ替わるのも同じです。
立川まで乗ってゆくのは、一目でそれとわかるハイカーが多いと感じられます。
私は…どう見えるのでしょうね。
折りたたみ自転車で林道を攻めに行くなんて、見破れる人は稀でしょう。

立川駅5時23分、7番線ホーム着。
南武線は2号車の進行方向2番目のドアに乗車していれば、立川駅ホームでの上りエスカレーターは目の前なので、駆けない程度に急いで階上へと登り、お隣5番線に移動します。
そして立川駅5時24分始発の大月行き中央線下り列車に乗車します。
乗り換え時間は僅か1分。
以前は中央線のホームに駅員が立っていて、南武線からの乗り換え客が乗り終わってから、旗を振ってドア閉めの合図を車掌に送っていましたが、この頃はそのようなことがなくなり、乗り継げない確率も増えました。
こうなると、横浜線も町田始発の電車しか乗り継げないし、4時39分登戸始発に乗るしか手がなくなります。
家から登戸駅までは自転車で40分の二山越えルート。
この時は、乗り継げなかったらそのまま次の中央線に乗って、韮崎から西の甲州街道を走ろうかと思っていました。
エクストリーム乗り換えにチャレンジする際には、乗り遅れたり、乗り継げなかったりした場合の次善の策を用意しておくことにしましょう。
受験制限のある試験ではないから、失敗を糧にして何度でも挑戦すればよいですし、それはそれで、意外な展開になることが楽しみだったりもします。


さて、無事中央線に乗り継いだら、次の日野駅へ着く前、電車が多摩川を渡る際に、進行方向右側の車窓から、まだ夜が明けきらない上流方に、奥多摩や秩父の山々がシルエットとして見えるかどうかチェックしておきましょう。
天気予報が「晴れ」ないし「晴れ時々曇り」でここから山が見えていれば、まずは今日一日雨に降られる心配はありません。
というのも、天気予報が「晴れ」でも、朝のこの時間帯の列車に乗って、高尾駅を過ぎて小仏トンネルをくぐると、相模湖駅は霧の中ということが、夏を中心によくあります。
相模湖から上流の桂川沿い、笹子峠を越えるまでの郡内地方は、関東平野や甲府盆地が晴れていても、山影にまで日が差してくる朝の8時くらいまでの間は、霧に包まれていることはよくあることです。
それからもうひとつ、2つ先の八王子駅で他のお客さんが乗り込んでくる前に、先頭車両の一番前へ移動しておきましょう。
猿橋駅の階段は、下り列車の一番前にあります。
エクストリーム乗り換えの際、ホームの移動など時間ロスを極力防ぐためです。

それが済んだら、私は目を瞑って静かにしています。
「自転車を漕ぐこと風の如く、車内では林の如し」です。
朝に居眠りができる馴れた方は、乗り過ごし防止のため、到着五分前にアラームをかけておきましょう。
いつも乗っている通勤列車と違い、旅先での移動はタイミングが取り辛いのです。
ブロンプトンを連れた際の旅の特徴として、この動から静への、そして静から動への躍動があります。
なお、準備運動は駅までの走行身体が暖まった後、電車に乗る前の空き時間に武蔵中原駅で済ませておきます。
電車内に誰もいないのをいいことに、体操やストレッチをしている人をたまにお見かけしますが、いくら他人に迷惑をかけないからといって、走っている列車内での運動は行儀が悪いし危険です。
それに最近の通勤型電車には、痴漢対策のため防犯カメラがついていたりもしますから、いつどこからみられているか分かったものではありません。
ここまで来る道すがら時間が無かった人は、最終目的地に到着してから行えばよいのです。

猿橋駅6時15分着。
その少し前に、富士急バス大月営業所の裏が車窓から見えます。
前回説明した通り、小菅の湯行きバスは営業所6時15分発で線路に並行している国道を逆方向に走るので、十中八九はバスが出てゆくところがうす暗くてもはっきりとわかります。
そして、今一度電車内で、あのバスに乗り換えてやるぞと念じます。
電車が駅に到着してドアが開いたら、脱兎のごとくにとゆきたいところですが、駆け込み乗車同様に駆け出し下車や、駆け足乗り換えは禁止されているのでやめましょう。
ここはゆっくり急げで階段を登り、改札を出たら北口階段をくだります。
北口にはエレベーターもついていて、その中でカバーを外してブロンプトンを展開するという裏技もありますが、エレベーターが2階にとまっていたならともかく、1階にとまっていた場合は却って時間ロスになります。
カメラの情報を見るとここまでで2分。

カバーを外して自転車を展開し、北口正面の道を、駅を背にしてまっすぐ130m進むと国道20号線(旧甲州街道)に出るので右折します。
この時間帯で車が少ないので、渡って右折し、次の宮下橋西詰信号を左折して、そのまま下り坂の宮下橋で桂川を渡ります。
ここまで3分で6時18分。
扇山と思しきシルエットを朝日の出る方角に認めながら、中央高速道路の下をくぐり、もうひとつの百蔵橋で、これからバスに揺られて谷奥へと詰める葛野川を渡ります。
ここまで概ね下りで、百蔵橋を渡ったのち100mほど登りがあるものの、これは下り坂で勢いをつけていれば問題ありません。

突き当りのT字路を左折し、山梨県道505号線を七保方面に向かいます。
乗車する予定の小菅の湯行きバスは後ろから間合いを詰めてくる格好になるため、なるべく早い段階でバス停を見つけたいのですが、そこは地方のローカルバス路線で、ちゃんと上り下りの別があるわけでなく、あるバス停は道路の左側、次のバス停は道路の右側と言うようにバラバラです。
しかも、昭和のバス停みたいに背が高くて大きいわけではなく、道路から少し引っ込んだところにあったり、物置やゴミ捨て場の陰にひっそりとあったりしてぱっと見には見つかりません。
走りながらきょろきょろしていたら、最も近いはずの下和田バス停は通り過ぎて、次の沢向橋というバス停が目に入ったので、そこにブロンプトンをとめました。
時刻は6時20分。
猿橋駅から5分で到着し、いつものように自転車を畳んでカバーを掛けてバスを待ちます。
沢向橋のバス到着予定時刻は6時22分でしたが、1分遅れの6時23分に、先ほど電車から見た小菅の湯行きのバスが参りました。
次回はこのバスに乗って、終点を目指します。