超微細な炭素ナノ分子の「フラーレン」を使ってマウスの体内に遺伝子を導入することに、東京大の研究チームが初めて成功した。血糖値を下げる作用があるインスリンを作る遺伝子などをマウスに導入し、効果を確認した。フラーレンは低毒性で大量生産も容易なため、安全で安価な遺伝子治療への応用が期待される。23日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に論文が掲載される。
フラーレンは、炭素原子60個がサッカーボール状に結合した分子。東大大学院理学系研究科の中村栄一教授、東大医学部付属病院の野入英世准教授らは、フラーレンに4つのアミノ基をつけた水溶性フラーレン(TPFE)を開発し、DNAとの結合を可能にした。
緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を結合させたTPFEをマウスに投与した結果、肺や肝臓、脾臓(ひぞう)で遺伝子の発現が確認された。インスリンを作る遺伝子を導入すると、マウスの血中インスリン濃度が上昇し、血糖値が約20%下がった。
DNAと結合したTPFEは細胞膜を通り抜けた後に分離し、DNAの遺伝情報が発現する仕組み。
遺伝子導入の研究では、ウイルスや脂質類似物質を“運び屋”として使う方法があるが、臓器への障害など安全性に問題があった。TPFEでは臓器障害が見られず、野入准教授は「安全な遺伝子治療の実現を真剣に考える段階に入った」と話している。
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