S君は、時々授業をさぼる。

バイクが大好きで学校を休んで出かけてしまう。

いつも何かに怒っているような寂しいと訴えているような。。。

長女と同じ高校出身でもあったので、それを話のネタにどうしたのかと聴いてみることにした。

 

うん?

瞳の中に・・・茶色い何かがいる!

 

これ何!?

狐!

動物霊ってやつ!?

 

まずい、何か起こりそう。

 

何かが分からないので、ひとまずYさんから言われて少し勉強した天使にお願いして、守護のために天使を送っておく。

あとは出来るだけ休まず登校してもらって、出来るだけ私から彼に寄っていくしかない。

弾いてやる!(笑)

 

一月後、彼の自宅は火事になった。

ボヤで済んだことに天使にお礼を言う。

あの茶色いのは炎の色だったのかなぁ。

 

でも彼からは、まだ何かを感じる。

もう一度ガイダンス。

今度はじっくりと聴きだす。

 

「何で、なんで俺だけ生き残ったんだろう。〇にたい。」

彼は高校時代にバイク事故で、一緒にツーリングしていた友人を全員亡くしていた。

自分だけ生き残り、しかも五体満足。

お葬式で泣き叫ぶ友達の親たちの姿に、生きていて申し訳ないと、俺も一緒に死ぬべきだったと思ったそう。

 

時々どうしようもなく自分を責める気持ちが出てきて、バイクで走り回ってしまうそう。

「あいつらのところへ俺も行きたいと思ってしまう。」

 

数年に一度、親しい人を亡くして、こんなふうに自分を責めている生徒さんに出会う。

授業中、タオルを持って「眠いから顔洗ってきます!」とクラスのみんなには分からないように泣いていた男の子もいたっけ。

力になりたくても、話を聴いてあげることしかできない。

 

その後は何事もなく過ぎ、卒業後、久しぶりに彼から電話がかかってきた。

「俺の胸の上を車が走って行って・・・。リハビリ中なんですよー。」

「あのババア、俺の上でブレーキ踏むもんだから肺がつぶれちゃって息が出来なくて。そのまま走り抜けてくれたらよかったのに。」

 

あー、とうとう。

東京に就職してもまだバイクを手放さなかった彼。

お母さまからも説得してもらったけれど、〇にたいという気持ちがまだ潜在的に残っていたのだろうか。

東京からこっちに転院してリハビリしているからお見舞いに来てほしいと言う。

 

「病院のご飯に飽きたからマック買って来て!」

これから一生車いすだ!と言いながら笑う彼は憑き物が落ちたようだった。

冷めているからチンしろとかうるさい。

元々、明るく元気で優秀。

設計の仕事をしながら、今は東京で一人暮らしだ。

 

これまで出会ってきた生徒さんたちも、今は元気で社会人になっている。

授業中泣いていた彼なんか、「いつか会社を乗っ取って、俺が社長になりますぜ。」と悪い顔して笑いますもん。

 

今が辛くても、笑顔になれる未来がみんなあるんだなぁと多くの方に出会って実感してる。

人間って意外に強いよ。