「・・・これ、相当古い香炉じゃない? 付喪神になってるよ。」
「えっ! はぁ?」
淹れている紅茶をこぼしそうになる。
「付喪神って、あの”つくもがみ”?」
なんじゃそれ。もはや会話になってないわ。と自分に突っ込みながら答える。
彼女とは数年ぶりの再会だ。
今回は旅行がてら娘さんとこちらに来ると言うので、初めて我が家にお招きした。
「それから、仏壇は普段は扉を閉めておくようにって言ったよね。開いたままだよ。」
「あ、ごめん。扉を閉めると菊も閉じ込めちゃうから、かわいそうだなって。。。」
「菊は外に飾ることにして、ご供養する時だけ開けて普段は閉めてね。」
「そっかぁ!そうするね!」
「たいていの人が間違っているだよねー。普段は閉めておかないと。」
トワイニングのオレンジペコを「美味しい・・・。」とつぶやきながらゆっくりと味わってくれる。
嬉しい。
紅茶淹れるのは自信あるんだよねー。
そういえば、夫の実家のこの仏壇を引き取ってしばらくしたら、いきなり彼女から電話がかかってきたんだった。
「仏壇、夜中に黒い靄みたいなのが出入りしてるよ。閉めて!」
なんで、何でわかったの!?
おののきながらスマホ片手にすぐに扉を閉めた。
この仏壇を引き取ってから、家鳴りが酷い。
夜中にビシッ!ばしっ!という音がする。
リフォームしてプラマードuにしたのに、2階の寝室の真新しい窓ガラスにはヒビが入った。
さらには、ガタガタと1階の仏間からは毎夜音がする。
安眠できないなぁー、と思いながら、従来楽観的な私は気にもせず毎日を過ごしていたのだ。
