【写真1】入賞者7名の記念写真(前列左より仲山、井本、古菅、後列左より滝本、塩崎、原、近藤)
【写真3】審査員の前に設置された壁(日本初?のブラインド審査)
【写真8】表彰式の様子(ステージ)
皆さんこんにちは。
やっとGWに突入し、滞っていたイベントレポを何件かまとめて書きたいと思います。
まずは、4/26(日)東京江戸川区東部フレンドパークで開催された、第6回バッハ国際ギターコンクールのレポです。
2次予選には31名がエントリーしていましたが、4名が欠席し合計27名が参加し熱戦が繰り広げられました。
このコンクールは年齢制限などが無いため小中学生から60歳以上の年配者、プロからアマまで入り混じっての混合戦で見ごたえがあります。
残念だったのは先週の第1回オールジャパンギターコンクールで第2位入賞の宇田奈津美さんが欠席だったこと。出場していれば優勝争いに絡んだと思われます。
さて27名が参加した第2次予選の結果、下記7名が本選に進出した。
通常6名のところ今回は7名だったが、6位と7位が同点だったので2名共選ばれたとのこと。
【第6回バッハ国際ギターコンクール第2次予選結果】課題曲:ロンド風ガボットBWV1006(バッハ)、自由曲は無し
予選1位 井本響太
予選2位 仲山涼太
予選3位 原昌弘
予選4位 近藤光雄
予選5位 古菅裕之
予選6位 塩崎容正
予選6位 滝本優子
(※6位の2名は同点)
そして、本選結果は下記の通り。
【第6回バッハ国際ギターコンクール本選結果】課題曲:マズルカト長調(タレガ)、自由曲は下記の通り
第1位 井本響太(東京) Marche Du Ballet de cendrillon op.15-No.3(ソル)、ソナタジョコーサ(ロドリーゴ)
第2位 古菅裕之(神奈川)ソルの主題による変奏曲(リョベート)
第3位 仲山涼太(大阪) アルマンド(バッハ)、マジョルカ(アルベニス)
第4位 近藤光雄(東京) リュート組曲第2番BWV997よりジーグ、ドーブル(バッハ)、フォリオスより第3楽章(武満徹)
第5位 原 昌弘(大阪) カプリス第1番(レニャーニ)、ソナタ第3楽章(ブローゥエル)
第6位 塩崎容正(神奈川)大聖堂(バリオス)
第7位 滝本優子(東京) 大序曲(ジュリアーニ)
このコンクールで一番ユニークだったのは、今回初めての試みとして2次予選時に、審査員の前につい立て(壁)を設置し、審査員から演奏者が見えないようにして審査した事です。所謂ブラインド審査です。
目的は、審査員から演奏者を見えなくすることで、誰が弾いているかが分からなくなり、公正な審査となるようにする事です。
私の知っている限り、このような事を試みたコンクールは日本初では無いでしょうか?
壁の前にも観客席が100席ほど有ったので、そこに着席した観客は演奏者を見ながら聴くことが出来ます。私はこの位置(壁の前)で聴きました。
また壁の横や斜め後ろ、壁から後方にある程度離れた場所に着席すれば演奏者を見る事が出来ます。
審査員は壁から約1メートル後方の位置に着席していますので演奏者が全く見えません。
演奏順は、当日抽選で決まったランダムな演奏順で演奏するため、壁の後ろにいる審査員は、演奏者が誰か全く分からない中で、聴こえてくる「音」だけで審査する事になります。
演奏者を紹介する会場アナウンスも抽選で決まった番号のみのため、審査員はもちろん観客も演奏者の氏名が分かりませんので、顔見知りでない限り誰が演奏しているのか全く分からない中で聴くことになります。
こうする事によって、誰が演奏しているのか全く分からなくなりますので、審査員が演奏者に対する主観的・個人的な感情を排除し、音楽そのもののみで審査する事が出来ます。
つまり、自分のお弟子さんとか、懇意にしている方やお世話になった方に甘く採点しようとしても出来ません。
逆に、特定の演奏者を不当に低く評価する事も出来なくなります。
実際には演奏者が見えなくても、音色や音楽表現、音の出し方や調弦の癖などで自分のお弟子さんなら分かる人もいるかも知れませんが、通常の方法より個人的な感情をかなり無くす事が出来る良い方法だと思います。
この方式を採用した上で、更に師弟関係者の採点は削除したり、採点の最高点と最低点は削除して残りの点数の平均点で評価するなどを併用すれば、より確実で公正な審査になると思います。
壁があると審査しにくいのでは無いかと思い、何名かの審査員の方にお話を伺ったとところ、音楽そのもの、音そのものに集中できるので非常に審査しやすかった、と言う意見が聞かれました。なるほど、その通りかもしれません。
この方式により、公正な審査が出来た事と思います。他のコンクールでも採用して欲しい程です。ただ、2次予選で自由曲がある場合は、曲名から演奏者を想定する事が出来ますので、壁を設置しても効果は無いと思いますが・・・。
但し、ブラインド審査は良い事ばかりでは無いようでした。
自信無さそうな雰囲気で、恐る恐る無難にミスを少なく演奏した演奏者が本選に進んでいた方も居たように感じました。恐らく演奏者を見ながら評価したとすれば、本選には行けなかったと思われます。
そのせいかどうかは分かりませんが、本選の上位入賞者と下位入賞者の演奏内容には随分とレベルの差があったように感じました。
音楽と言うのは、音そのものが一番大切なのは言うまでもありませんが、演奏態度やステージマナー等もその演奏者の能力、パフォーマンスの一部と言えると思いますので、それらを総合的に判断するのも大切だなとも感じました。
本選ではつい立は撤去され、審査員も演奏者を見ながら審査していました。
予選、本選含め全体的には、概ね納得のいく審査結果であったと思います。
来年以降も是非壁を設置してブラインド審査して欲しいと思います。公平さ日本一の信頼できる名物コンクールになると思います。
もう一つの問題点として気になったのは、演奏者の氏名と番号がついに最後まで発表されなかった点です。
私は、演奏者の氏名が分からない中、演奏順の番号を頼りに自分なりに全員に点数をつけて評価しながら聴いていたので、予選通過者決定後は演奏者の氏名と演奏順の番号をロビーに掲示して欲しかったです。自分が誰にどのような評価をしたのか知りたいですので。
演奏そのものではなく、審査方法について長々と書いてしまいましたが、上位入賞した方々は素晴らしい演奏を聴かせて下さいました。
先にも書きましたが、本選入賞者7名の演奏レベルは思いの外差がありました。
1位と2位が3位以下を引き離しており、3位と4位がほぼ同じ、少し離れて5位、大きく離れて6位と7位がほぼ同じと言う感じでした。
特に1位の井本さんの弾いた課題曲タレガのマズルカは、2位以下を圧倒的に引き離す素晴らしい演奏でした。自由曲では2位の古菅さんも1位に劣らない演奏でしたが、課題曲の仕上がりに大きな差が出た感じです。
全体的なレベルはクラシカルギターコンクールやスペインギターコンクールとはちょっと差がありましたが、先週開催されたオールジャパンギターコンクールと同程度のレベルはあったと思います。
このコンクールで上位1~2位入賞者は、クラシカルやスペインでも本選に進出できるレベルだと思います。
将来的にはこのコンクールは、クラシカルやスペインと並んで日本の(関東の)3大ギターコンクールになる事が期待されます。(東京国際は別格として)
審査の時間を利用して、前々回の第4回優勝者、井原哲朗氏の記念演奏があり、ヘンデルの主題による変奏曲(ジュリアーニ)、グランホタ(タレガ)、サンバースト(ヨーク)など約30分ほどの演奏でしたが、これがまた一段と素晴らしい演奏でした。
落ち着き払った態度、自信に満ちた表情など、優勝して2年経つとこのように進化するのか、とうなってしまう貫録の演奏でした。テクニックの安定感はもちろん、楽器の持つ音の美しさや音量を出し切った迫力も申し分無く、十分に楽器や音楽をコントロールしており、ギター音楽の魅力をたっぷりと味わうことが出来る演奏でした。
来年の第7回大会の課題曲は、1次予選がマリアルイサ(サグレラス)、2次予選がクーラント~チェロ組曲3番より(バッハ)、本選がマリーア(タレガ)との事です。
マリアルイサは昨年の埼玉ギターコンクールの課題曲として弾き込んでいますし、審査もユニークで公平です。モチベーションアップとして来年は出場してみようかな、と言う気持ちが少し出てきました(笑)。
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