父が亡くなる数日前、でした。妻と二人で父の部屋を訪ねた時、です。父は息こそ少し苦しそうにすることはありましたが意識ははっきりしているようで私や妻の話しかける声に頷いたり小声で答えてくれたりしていました。ちょっと話が途切れた時、妻が私に何か歌ってあげたら、と言いました。歌うったって…、躊躇したのですが、父の手を握りながら小さな声で「ふるさと」を歌い始めると、父は指で拍子を取り始めたのです。そして…少し目を開けて私の方に頷いたような気がしました。
「ふるさと」の後に何となく出てきたのが「花」でした。春のうら~ら~の、す~み~だが~わー、…
それから。
父が好きだった歌と言うとすぐに思い出すのが「青い山脈」でした。「わ~かく、あかるい…」と歌い出すと、何となく父が笑った気がしました。
そして、もう一つ。父が好きだった歌。(と母がいつも言っていた記憶があります)
父が少しだけでも元気を取り戻して、一緒に歌えたら。そんな思いがこみ上げるようでした。次に行った時にはまた何か歌おうかな。しかし、その2日後に父の具合はまた悪くなり、それから2日…。
頑張ったよね、おとうさん。
本当に、天寿を全うしてくれたのだと思います。
そう言えば、父が亡くなったのは11月2日ですが…
「お父さんとお母さんの結婚記念日、11月3日だったな。」父の遺体の前で弟が言いました。
「そうしたら、明日はあっちでお祝いするのかもしれないね。」
「そうかも。」
「でも、もしかするとお袋の方は自分が死んだことに気付いてないかもしれないけど、な。」
「まさか。」弟は笑いました。私たちの母は平成10年に亡くなっています。心臓の手術中に血が止まらなくなりそのまま帰ってこなかったのです。悲惨な最期でしたが、本人はまったく苦しまない死でもありました。あの人のことだから。20数年経った今でも自分が死んだことに気付いていないかもしれない、などと思ってみたりするのです。まあ、ばかげた想いではあります、けれど。
とりとめの無いこと書いてしまいました。まだ気持ちがまったく落ち着かないようです。何かが抜けてしまった…、そんな気がします。
何やってるんだか。
父に笑われた気がしました。
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