ガーディナー ベートーヴェン ミサ曲ハ長調 初演は不評だった意欲作  | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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ベートーヴェンのミサ曲ハ長調は1807年、ハイドンの長年の雇い主だったエステルハージ公の委嘱により作曲されました。

 

「ミサ曲 ハ長調 作品86は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがニコラウス・エステルハージからの委嘱に応え1807年に作曲したミサ曲。4人の独唱者、合唱、管弦楽という編成で書かれており、同年の内にアイゼンシュタットにおいてエステルハージ公の音楽隊によって初演された。ベートーヴェンは翌1808年に交響曲第5番などを主要4作品を初演した演奏会の場でも、本作の抜粋を披露している。楽譜は1812年にブライトコプフ・ウント・ヘルテルから出版された。
依頼者のエステルハージ公がミサ曲の内容をよく思わなかった一方、同時代の批評家E.T.A.ホフマンは「無邪気に澄み渡った心情の表出」を評価しており、マイケル・ムーアは音楽の「直截さと情動的内容」を特筆している。」(Wikipedia ミサ曲 ハ長調 (ベートーヴェン) より)

 

初演は練習不足もあり、また上記Wikipediaの記事にもありますようにエステルハージ公に気に入られなかったことで、ベートーヴェンにとって生涯で最も屈辱的な失敗に終わったと言われます。

「初演は1807年9月13日、ウィーンからも遠くないアイゼンシュタットにあるエステルハージ家代々の邸宅において、エステルハージ公お抱えの音楽隊によって行われた。
(中略)
初演は練習不足のまま行われた。シュトルツフスは舞台稽古が「満足のいくものではなかった」と記し、さらに合唱隊の5人のアルトのうちひとりしか姿を見せなかったと書き留めている。
(中略)
初演の評価は芳しくなく、とりわけ曲を委嘱したエステルハージ公には不評だった。ルイス・ロックウッドは、19世紀の伝記作家であるアントン・シンドラーとアレグザンダー・ウィーロック・セイヤーが語ったこととして次のエピソードを紹介している。

話によれば、エステルハージ公は作品を聞き終え - おそらく自らが崇拝していたハイドンのミサ曲の様式と全く異なっていることを見出したのだろう - ベートーヴェンに言った。「しかし親愛なるベートーヴェンよ、君はまた何をしてくれたのかね。」すると、話は続いて、教会の楽長が笑っているのが聞こえたのである - これは他でもないヨハン・ネポムク・フンメルである。作曲家でありピアニストでもあった彼自身も、エステルハージの宮廷のためにミサ曲を作曲しており、ちょうど前年には同じハ長調で書いたところだったのである。エステルハージ公の質問には憤慨し、フンメルの尊大な嘲笑やアイゼンシュタットに集った質の低い客の面々に対しては激昂し、ベートーヴェンは怒りのまま同地を後にした。

チャールズ・ローゼンはこのエピソードをベートーヴェンの「公の場での最も屈辱的な失敗」と呼んだ。エステルハージ公はおそらく自らの感想を直接はベートーヴェンに伝えなかったはずである。というのも、後にヘンリエッテ・フォン・ツィーリンスカ伯爵夫人に宛てた手紙の中で次のように極言しているからである。「ベートーヴェンのミサ曲は耐え難い馬鹿馬鹿しさと忌々しさで、私は正しく演奏されているのかにすら自信を持てなかった。腹立たしく、屈辱的だった。」」(Wikipedia ミサ曲 ハ長調 (ベートーヴェン) より)
 

しかし、以前にもこの曲のことを記事投稿したことがありますが、聴く度に良い曲だと思います。エステルハージ公にはハイドンやフンメルの曲のイメージが強かったのかも知れませんし、その日の演奏の出来が良くなかったのかも知れませんが、今日聴いたエリオット・ガーディナー指揮モンテヴェルディ合唱団の演奏も本当に生き生きとした演奏で気持ちよく聴ける音楽でした。

 

交響曲第5番や第6番の少し前に作曲された曲です。ベートーヴェン自身の作曲の技術も充実していましたし、何より師匠であるハイドンが続けて来た新作ミサ曲の発表会の後を任せられる形になったわけですから意欲も漲っていました。そうして出来上がった曲の評価が低かったことによるベートーヴェンの失意の大きさはよく分かる気がします。でも、やはりこの曲、きちんとした演奏で聴くと本当に素晴らしい曲です。本当にもっとよく演奏されても良いのに、と思ってしまう、そんな曲です。

 

 

 

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エステルハージ公の委嘱により1807年に作曲されたミサ曲ハ長調。初演や依頼者の評価は芳しくなく、ミサ・ソレムニスの陰に隠れなかなか陽の目を見ない作品ですが、斬新で革新的な手法を盛り込んだ意欲的な作品です。

ベートーヴェン:
シェーナとアリア《おお、不実な者よ》
カンタータ《海の凪と成功した航海(静かな海と楽しい航海)》作品112
ミサ曲 ハ長調 作品86
シャルロッテ・マルギオーノ(ソプラノ)
キャサリン・ロビン(メゾ・ソプラノ)
ウィリアム・ケンドール(テノール)
アラステア・マイルズ(バス)
モンテヴェルディ合唱団
オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク
指揮:サー・ジョン・エリオット・ガーディナー
録音:1989年11月 トゥティング、1991年11月 ロンドン

 

 

 

 

 

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しかし数日後、王都への道中、ルートルフは妹のミリッツァと一緒に謎の男たちに攫われてしまう。護衛の助けが間に合わない絶体絶命の状況に、ルートルフは勇気を振り絞り……!?
さらに、自分が別世界の『記憶』を持っていることをこのまま隠し続けるのは難しいと考えたルートルフは、兄以外にも秘密を打ち明けることを決意して――。
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「ぼく、のこと、ひみちゅ」
ふたりは別世界の『記憶』と『加護』という不思議な力を頼りに、領地に襲い来る問題への対処法を考えていくが……。
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ルートルフがようやく1歳に!! 兄弟コンビの領地復興ストーリー第2弾!

貧乏男爵家次男のルートルフは、別世界の『記憶』を持った頭脳派0歳児。やがて困窮する領民の状況を知った彼は、兄のウォルフにだけ自身の正体を明かして、領地救済に乗り出していく。ふたりは黒パンやコロッケなどを次々と発明し、おかげで領地は危機を脱しつつあった。
そんなある満月の夜、ルートルフとウォルフはオオカミのザムの背に乗せられて、隣のディミタル男爵領へ連れていかれる。森の中に着いたふたりが見たのは、柵に捕われたザムの仲間たちだった! 領地困窮の大きな原因となった害獣大繁殖のカラクリを知ったふたりは、オオカミ解放作戦を開始するが……。
さらに、1歳を迎えたルートルフの前に見知らぬ赤ちゃんが現れて!? 赤ちゃん度MAXでお届けする、領地立て直しストーリー第2弾。

 

 

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刑事の鈴木は、目覚めるとロボット掃除機になっていた! しかも眼前には男の死体が……。『地べたを旅立つ』改題。解説/辻真先