夜。

とある一軒家。

赤い服の、シロひげのおじさんがやってきて、窓から子供部屋に入る。


「よっこらせっ・・・と」
「だ、だれ?!」

「ぼうや・・・、おじさんはね」

「あやしい!!」

「見てのとおり、サンタ・・・あやしくないッ!!自己紹介ぐらい、させろッ!!」

「ボクは中川しょうた!小学3年生っっ!!」

「オマエがするんかいッ!!」

「プレゼントは携帯ゲーム機がいいらしいよ!!」

「ほんとか?!!って、早速催促かっ?!」

「うんっ!!みんなそう言ってる!ボクもそう思う!!!」

「おまえが欲しいだけだろッ?!」

「今どきゲーム機もプレゼントできなきゃ、サンタ失格らしいよ?!」

「おお!サンタだって認めてくれるんだね、このわたしを!!」

「ゲーム機くれたらね!!」

「親に買ってもらえよ、そんなもんは!!」

「無理だよ!ボク、日頃の行いが悪いもん!!」

「ワルなのかッ?!」

「相当なワルだよ!!」

「まさか・・・、オンナを泣かせてんのか?!」

「しょっちゅうだよ、そんなん!!」

「なにおぅ?!おじさんですら、そんなんご無沙汰なのに・・・ッ!!」

「みかちゃんが悪いんだよ、いつもしつこいから・・・!」

「いいなあ、オンナにしつこくされるなんて・・・!!」

「おじさん、なにしに来たの?」

「仕事だよッ!!」

「大変だね」

「ああ、オトナは大変さ!!!」

「でも、クリスマスってまだだよ? 1ヶ月先じゃん」

「いまから少しずつ配らないと、間に合わないのッ!!!分かるだろ?!!」

「まさか・・・一人でやってんの?」

「当たり前だろ!!一人で世界中、配ってんのさ!!!」

「外国へも行くの?!」

「ああ、行くよ!子供たちが待ってるからねッ!!」

「英語とかしゃべれるの?!」

「もちろんさ!!ベラッベラだよ?!!かつてはそれでオンナも口説いたもんさ!!」

「・・・へえー・・・(白い目)」

「信じなさいよッ!!!」 

「う、うん・・・」

「おじさん、こうみえても大卒なんだよ?!」

「そ、そう」
「しかも外国の、有名なトコなんだよ?!!」
「そ、そう・・・。スゴイんだ」

「そうだよッ!オトナはね、子供の見えないトコで色々スゴイの!!」

「わ、わかったよ」

「わかった?!」

「う、うんっ」

「ホントにわかった?!!」

「わ、わかったよ。おじさん、そんなカッコイイのに、頭もいいんだなって」

「ホント?!!!」
「うん、尊敬する。わざわざ来てくれたし」

「えっへっへっへっへっっ!!!」

「嬉しいよ、サンタさん初めてみたから」

「去年までは寝ていたんだろう?!」

「うん。今日は眠れなかったから、会えた」

「よかったな!」

「うん。今日ね、犬においかけられて怖かったんだ。それ思い出したら、眠れなくて」

「そうか・・・!おじさんが来たからには、もう、怖い思いはさせないからなっ!!」

「ありがとう、おじさん」

「じゃあ、しょうたくんには、コレをあげよう! おじさん、次に行かねばだからッ!!」

「なあにコレ?プレゼント?!」

「そうだよ!!キミのようなワルでも、もらえるんだぞ、プレゼント!よかったな~!!」

「ありがとうー!!」

「いま不況で大変だからね!それで我慢しなさいね!!」

「我慢って・・・ゲーム機じゃないの??」

「そんなもん買えるワケないだろ!どっからそんな費用、出すんだい?ボランティアでやってんだよ、おじさんは!」

「そ、そうなんだ・・・」

「バブルの頃は良かったよ!みんなチップをくれたからね!でも・・・今、だれがそんなもんくれるんだい?大変なんだよ、おじさん、大変なんだよッ!!」

「そ、そう・・・」

「じゃあね!おじさん、歩いて帰るからっ!見送りはいらないよっ!見ないでね!空飛べないからっ!!」

「え・・・?ソリじゃないの??」

「トナカイがいないのに、どうやってソリ動かすんだよ?!!空だって、もう飛べないよッ!!」

「そ、そうなの?!」

「そうだよ!おじさん、いま一人なんだから!!オンナどころか、ビジネスパートナーだっていないんだよッッ!!」

「そ、そうなんだ・・・。なんか可哀想だね、おじさん・・・」

「おじさんより、トナカイさんのほうが可哀想だけどね・・・」

「えっ」

「・・・・そのプレゼント、大事に食べてくれな。 よーく味わって・・・」

「えっ、食べものなの??」

「・・・・うん」

「なんか生ぬるいけど」

「・・・ああ、さばいたばっかりだからね」

「えっ」

「・・・大丈夫、シカ類の肉はうまいって言うし・・・」

「ええっ?!」

「・・・じゃあな、しょうたくん・・・」

「お、おじさん!まさかコレ」

「・・・・ふふっ・・・・」

「うそでしょう?!」

「ふふふ・・・・」

「なに哀しい顔で笑ってんの、おじさん?! 」

「・・・ご家族のみなさんによろしく・・・」

「お、おじさんはそんなコトしないよね?!ビジネスパートナーを、そんな風にしないよね?!!」

「・・・・・しょうたくん」

「な、なに?」

「・・・・明日は鍋にするがいい・・・・じゃ!(出て行く)」

「い・・・いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!」