ボクサーとしてのオレの宝物は、

なんといっても、右ストレートだ。



王様のパンチと呼ばれるストレートは、

本当に身につけるには、大変に難しい。



どれだけ、このパンチを練習してきたことだろう。

トレーナーに褒められるほどにはなったが、

オレの中では、まだまだ理想に遠い。



パンチには、基本的に2種類ある。

ガツンとどつく系か、脳に振動を与えるタイプである。



ガツンはだれでもできる。

しかし、これでは相手は、止まらない。



逆にキレて、大反撃してくる。



ところが、脳に振動を伝えるタイプ、

ぞくに、キレてるなーといわれるパンチを

習得するのは、とても難しい。



サンドバッグを打ってみればわかるが、

キレるパンチは、サンドバックがほとんど揺れない。



足で初動をかけ、腰を前方へ、

そして、左をひきながら、右肩が前に出ることに

連動して、右の拳が自動的に飛んでいく。



そして、インパクトのときだけ力を入れ、

すぐさま、元のポジションに戻す。

手を引くのではなく・・・。



理屈はこうなんだが、身体化してしまうまでに

かなりの時間がかかる。



だが、身体化すると、全身から集めたパワーが、

相手の内部へと伝達する。



近距離、中・長距離、すべてのレンジで使用でき、

相手まで最短で到達するこのパンチは、

本当に、大好きだ。



だから、いつもサンドバックを打つとき、

シャドウをやるとき、ジャブ・ワンツーを

念入りに、繰り返しやっている。



長いことかかって身につけたこの右ストレートは、

オレの一番の宝物なのだ。( ̄▽+ ̄*)