ゴーンの逃亡箱 | カフェバー|credo|下高井戸駅1分

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バータイム店主による日々雑感

◆1月3日

 

 保釈中だったカルロス・ゴーンが海外にフケて、その逃亡経路や手段が明らかになってきた、というニュースを正月のテレビ番組で見ていたら、途中で「ぎゃっ」となってチャンネルを変えてしまった。

 

 自宅からホテル、空港に移動する際、やつは部分的に音響機材を入れる箱の中に入って移動していたという。キャスター付きの大きな機材入れをサンプルとして紹介していた。いかにも頑丈そうな真っ黒なものに、バチンバチンと鳴りそうなしっかりした留め具が光る。空気穴も開けられていたという。

 

 内側から空けることはできないだろう。ゴーンがどれぐらいの間、この中に入っていたのかは分からない。真っ暗な中で息を殺し、一味が留め具を開けるのをじっと待つ。もしも自分がそんな状況に置かれたら、数分で発狂してしまうだろうなと思った。

 

 番組ではスタッフが実際にその機材入れに入ったりして、「思ったよりも中は~」などと感想を言っていたけれど、どうでもいい。これ以上は見ていられなかった。ぼくのような日本全国の閉所恐怖症たちは息苦しくなって、この瞬間にテレビの前から逃げ出したことだろう。

 

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 自分が閉所の恐怖を初めて感じたのは20年以上前、社員旅行でグアムに行った時のことだ。

 

 潜水艦に乗って海中探索するアトラクションがあると聞き、同僚と2人で乗った。どんどん潜っていき、水深40メートルあたりでとまった。いつものコースらしい。「しばらくこうしているから、海中の様子を楽しんでね」などと英語のアナウンスがあった。エンジンも止まり、静かになった艦内から海中をしばらく見ていたら、身の危険を知らせるような、ぞわぞわとした感覚が体と脳にきた。

 

 不快感はたちまち強まり、息苦しくて背中にたくさんの汗をかいた。小さなバスほどのサイズの潜水艦に、数十人の人間が押し込まれて、海の深い場所でじっとしている――いま置かれているこんな異常な状況に意識が向かうと、気がどうにかなりそうだった。横に座ってのんきな顔をしている同僚が救いだった。彼に無関係なことをたくさん話しかけて必死に気を紛らわせた。

 

 やがて潜水艦が動き出し、海上に出て少しするとハッチが開いた。すぐさまデッキに出た。外の空気と太陽がありがたかった。

 

 自分はきっと、せまい場所や身動きのできない状況などに息苦しさを感じてしまうタチなんだろう。そんな風に単純に考えてきたのだが、その数年後、まだ小さかった息子といっしょに観覧車に乗った際、この恐怖症が自分の中に根深く育っていることを自覚した。年を取るにつれて高い場所も苦手になっていたので、この時の観覧車はまさしく恐怖であった。

 

 閉所への恐怖感は、さらに後年、ぼくを困らせることになるパニック発作につながっていくのだが、その話はまたいつか。

 

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本年は1月9日より営業を開始します。
よろしくお願いします。

 

2020年1月7日
下高井戸credo
バータイム店主