たたむか否か | カフェバー|credo|下高井戸駅1分

カフェバー|credo|下高井戸駅1分

バータイム店主による日々雑感

 転勤、結婚、出産、体調不良、あいつとは二度と会いたくない、などさまざまな理由で店にすっかり来なくなった常連客が数多くいる。ここ最近も長く付き合ってきた客たちが下高井戸を離れて行った。

 

 9年近くも店をやっていれば客の新陳代謝は世の常と人は思うかもしれないが、地元密着、一店勝負のわが店などはどうしたって近所に住むなじみの客に頼らなくてはならない。去っていった客の落ち込み分を補ってくれる新規客があればいいが、そうは思うようにいってくれず、たいへん苦しい数カ月が続いていることを隠さずに記しておきたい。

 

 わが店の分店で、現在、妻が切り盛りしている新店舗「GESSO」の開店に伴い、7月の状況によっては10月末の契約更新時期をもって店をたたむつもりでいた。

 

 その後は、ずっと続けているもう一方の昼間の仕事を増やし、ドレッシングの通販事業も強化し、あとは「GESSO」の裏方サポートに回ろうという考えだった。売り上げは減るだろうが、店関連の支出も減るから、まあ食ってはいけるだろう。そして、生活も再び昼型に戻って健康的な毎日を送れることだろう――という算段だ。

 

 そんな考えに気持ちが傾いていたころ、とんと姿を見せなくなったなつかしい客や意外な客が示し合わせたように店にやってきた。

 

 数年前からアメリカに赴任していたI夫妻が一時的に帰国し、その間、友人を連れて毎夜やってきた。同じ週にはドイツに赴任していた商社マンのY氏も近所の仲間を連れだってやってきた。それらの会合に集まった人の中では久しぶりの再会となったベテラン俳優のMさんやBさんの顔もあった。

 

 翌週は、高校の同級生だったS君が突然やってきて約30年ぶりに再会。「このブログは匿名だけど、以前に書いてあった母校が甲子園に出場したという話を読んで、これは同級生に違いないとピンときたんだ。で、来てみたらやっぱり君だったか」と言って笑っていた。

 

 マルサのIさんも約2年ぶりに来店。「実は少し前に結婚したんだよ」と言って、一緒に来た奥さんを紹介してくれた。また、前職時代から世話になり、店にも飲みにきていたKさんは、本人ではなく20歳になった息子が1人でやってきた。「父からこの店の話はよく聞いてました」などときちんと言った。彼は小学校の入学祝いに僕がプレゼントした品を覚えてくれていた。

 

 再会した人たちは、住んでいる場所や生活環境に変化はあれど、みんなあの頃と同じ仕事に打ち込んでいた。いずれも20年以上の勤務。ある人は「ただ長くいるだけだ」と自嘲気味に言ったが、しかしひとつの仕事を一途にやり続けている人との会話は、しみじみ胸を打つところがあり、会社勤めを途中で逃げ出したクチの自分にはまぶしく見えた。

 

 海外へ帰っていく客たちとは、「また次に戻ったら店で会いましょう」と約束してしまったけれど、さてどうしたものか。久しぶりに会った彼らとの気持ちのいいやり取りのおかげで、やっぱり店はいいもんだよなあ、などと思い直している。

 

 


2019年7月30日
下高井戸credoバータイム店主