第三の人生
夜の9時ころ 実家から お花を少しもらってほしいと電話があり
ルンルンで自転車でかけつけたところ
玄関にみたことのないくらい大きな花束が・・・
どうしたの? って聞いても
父は新聞を読みながら黙っていて
母は すごいでしょう こんなにたくさん って感動しきりで
何がなんだか しばらくよくわからなかったものの
どうやら父が送別会で頂いてきた花らしいのです
私の父は すでに初めの会社を早期退職していたので
いまの会社は数年しか働いていないのですが
斜陽産業の大変さを(まあ今はどこも昔ほどの羽振りの良さは無いとはいえ)
働き盛りの頃から経験していて 家族もそのことをよく理解していたつもりです
父は 律儀で真面目すぎる性格ゆえ
若い人以上に 朝早くから現場に張り付いていました
有給も使った記憶がない(!)そうで
使い切って それでも なお休んで欠勤になっている私は
退職する前に 有給を消化しようとしない父に
苛立ちさえおぼえてしまいました
母が入院して手術をしたときでさえ
休みを取ってもらうよう説得するのが大変だったのです
昔は みんなそうして働いて 高度成長期を支えてきたのかもしれませんが
今回だけは 話は別です
ようやく退職を決意して 母と旅行に行く予定だったのに
なぜか近所の建築事務所を紹介してもらったので
来月からまた働くことにしたというのです
もちろん 有難い話なのですが
自転車通勤も可と言われ 長年の満員電車から解放された喜びで
それならと つい 二つ返事 してしまったのだそうです
どうにかして 休みをとって母と旅行に行ってほしいと懇願しました
はじめは聞く耳をもってくれませんでしたが
今月 急に話が進展して ようやく 母 念願のイタリア旅行が叶いました
今週から5月末まで イタリアの主要都市を回ってくるそうです
母は 結婚する前に 教職員の先生方とイタリア美術の旅をしたのですが
そのときに行けなかった美術館が心残りだったそうで
40年ぶりに思いを果たすことになったのです
そんな話も 今回初めてきくことができました
機内に持ち込めるスーツケースを買うというので一緒に出かけました
私が学生の頃は まだ祖母が健在で 両親は家をあけることができなかったので
自分だけ旅行にいったときは 心のどこかで申し訳なく思っていました
正確にいえば 旅行に行ったときは
大興奮でそこまで考えが至らなかったので
帰国して しばらくしてからですが・・・
新宿で スーツケースを選びながら
本当にありがとうってお礼を言って
餞別に プレゼントすることにしました
実家の母には 私が風邪っぴきだったこともあり
母の日のお祝いもできなかったので それも兼ねてということで・・
閑話休題・・・
そんなこんなで 父は退職前に
有給を少しだけ(笑)使ってお休みすることになり
送別会を早めに開いてもらったのだそうです
大きな花束を持って帰ってくるのに
背中が痛い 足が攣りそうになったと
新聞の蔭から ぶつぶつと聞こえてきましたが
旅行中 留守番の妹が 花の世話が大変だというので
私も少しだけ もらってきたというわけです
大好きな薔薇と 百合がほしいとリクエストをして
母が また花束の形にしてくれたので 帰ってから写真にとりました
百合が入っているので とてもいい香り ・・・
立派な花束は
父の
数年にすぎないけれども
真面目に勤め上げた日々に
なんてふさわしいのだろう と
娘ながら誇りにおもいました
あ
それと
母と過ごした三十数年の日々も・・・
花の香りを吸い込みながら
色々なことを思い出すことができました




