というわけでアカヒレとメダカが大きな水槽に同居することになりました。広さはもちろんのこと、濾過フィルターとエアレーションも入れたことで水質管理もだいぶ楽になります。もちろん濾過が機能するまでは時間がかかりますが、金魚と比べてアカヒレもメダカも水を汚しませんし、水質の変化にも割と耐性があるので、金魚がうちに来た時ほどには気を遣うこともなく、ようやく落ち着きかけたある日のことでした。お風呂から上がってきて水槽を覗いてみると、アカヒレ3匹のうち一番小さな子が、水槽の中で力なく漂っているのを発見しました。しかもこともあろうに、メダカの一番大きいヤツがもう自分で泳ぐこともできないそのアカヒレをつっつき回しているのです。
 慌ててまずはコップに隔離して、しまったばかりの小さい水槽を出してきて、0.5%の塩水を作りました。アカヒレをコップから移しましたが、力なく浮かぶばかり。死んでしまったのかと思うほどの状態でしたが、よくよく見るとエラは弱々しいながらも動いています。しかし尾びれはボロボロでまさに「痛々しい」という表現しかできないような様子です。

 アカヒレはけっこう縄張り意識の強い魚らしく、小さい水槽で飼ってた頃からもその一番小さい子は他のアカヒレに追いかけ回されていたのですが、そうはいっても一番大きいアカヒレと比べても明らかな体格差があるわけではないためか、弱ったりなどはしなかったんですけど、相手がメダカだと倍くらいの差がありますからね。メダカも自然界では群れで泳ぐことが多いため、縄張り争いをすることはないらしいのですが、水槽のような狭い環境だと縄張りを主張することもあるそうです。一応事前にネットで調べてメダカとアカヒレの混泳は問題ないとありましたし、水槽も大きくなるので大丈夫だろうと思っていたんですが…。メダカの一番大きいのがかなりジャイアンなヤツでして、メダカ水槽でも水面近くを悠々と泳いでは他のメダカが近づいてくると執拗に追い出す姿をよく見てはいたんで、気にはしていたんですよ。実際それを発見する少し前にも水槽を覗いて、その時は異常はなかったはずなんですが…。ただ尾びれの状態は短時間でこうなるとは思えないものだったので、やっぱり見落としていたのかもしれません。

 心配ではありますが、それ以上自分に出来ることはないため、あとは本人…いや本魚の回復力にゆだねることにしてその日は就寝。朝起きてみてみると、弱々しいながらも自力で泳げるくらいには回復していました。しかし尾びれは当然ながら一晩くらいで治るものでもありません。気になるのは、どうして尾びれがこんなになってしまったかということです。ひれが「溶けるように」なくなっているので、メダカにかじられたにしてはちょっと不自然です。調べてみると「尾腐れ病」という細菌性の病気があるらしく、症状としてはそれに近いのですけど、この病気は水質悪化によって抵抗力が落ち、感染してしまうことがほとんどだそうです。しかしながら、言うまでもなく今の水槽は立ち上げたばかりです。もちろん生物濾過はまだ機能してないでしょうけど、こんな短期間で急激に水質が悪化するほど魚を入れている分けではありません。というかむしろ少ないほうです。ただ水槽と水質が変わったことによるストレスで、もともと弱かった小さい子だけ抵抗力が落ちたという可能性もなくはないですが…。いくら丈夫なアカヒレといえど、不死身なわけではないですからね。

 尾腐れ病の原因となるカラムナリス菌は非常に感染力が強いらしく、1匹が罹患するとあっという間に他の魚にも伝染してしまうそう。他のアカヒレを注意深く観察してみてもそれらしき症状は見られないものの、相変わらずジャイアンメダカはぶいぶい言わせて威張っているので、ヤツから引き離す意味でも他の2匹のアカヒレもまとめて塩水浴させることに。ただ、以前のようにまたアカヒレ同士で縄張り争いが始まったら小さいのが標的になるかもしれないので、そっちも注意深く観察していたのですが、基本的に自分の陣地に入ってこなければ攻撃することもないようで、(水面まで泳ぐ力がなく)底のほうにいる小さい子は水面近くにいる他のアカヒレからいじめられることはありませんでした。

 しかしそれでひと安心かと思ったのも束の間でした。回復の兆しを見せていたかと思った数日後、朝いつもエサをあげている娘が「アカヒレちゃん2匹しかいない」と。フタはしているので飛び出したりすることはないはずで、起きてみてみると…小さい子は水温計のキスゴムのところで死んでいました。やはり病気だったのか、それとも弱り切ってしまったのかはわかりませんが、いずれにせよメダカと一緒にしなければ今でも元気に生きていのかもしれないと思うと、申し訳ないことをしたと思います。

 残りの2匹のアカヒレは元気そうで、もう塩水浴させる必要もなさそうなので、徐々に塩分濃度を下げることにしました。ただ、本水槽に戻すことにしても、今後はメダカとの混泳は避けたい。かといってまた水槽を分けたくもないので、ここは水槽に仕切りを入れて、「メダカ部屋」と「アカヒレ部屋」を分けることにしました。幸いというかなんというか、アカヒレの産卵床にするつもりでウィローモスマットを作った時に買った園芸用の鉢底ネットがあまっています。こいつをひとまず適当な大きさに切ってセット。オッケー、割と良さそうだとほくほくしながら寝床に着きました。そして翌朝、娘が部屋に入ってきて、

 「アカヒレちゃんの部屋にメダカちゃん入ってるよ」

 なんですとー!

 慌てて起きて見てみると、確かにアカヒレの部屋に本来いてはいけないはずのメダカがしれっと泳いでいます。どうやって入り込んだのかはわかりませんが、塞いだつもりでも大きめの隙間があったのかも知れません。とりあえずメダカをメダカ部屋に移し、今度は隙間ができないように水槽の幅より大きめに切って、少したわませる感じで再セットし、隙間ができていないことを確認して出社しました。そして夜帰宅すると、玄関に娘が出迎えに来て、

 「メダカちゃんの部屋にアカヒレちゃんいるよ」

 今度はそっちかよ!

 確かに水槽のガラス癖と仕切りの隙間はなかったのですが、どうも網目が大きすぎてうちのアカヒレサイズだと通過できてしまうらしいです。むーん、これは本格的にちゃんと作らなきゃダメだなと、仕切り板を自作することにしました。
 といっても何のことはない、ネットで同じようなことをしている人がいたので、それを参考にさせてもらった(というかパクらせてもらった)だけなのですけどね。まず網目が荒すぎる問題については、2枚の鉢底ネットを合わせ、網目を互い違いにすことで解消。テグスで結わえてお互いがずれないように固定し、100円ショップで売ってるレール式クリアファイルっていうんでしょうか? そのレール部分を使って挟み込む形で補強します。

世界征服の基礎はまず練馬から


 うん、いい感じ。

 これを入れてからとりあえず異種混合になることは避けられました。まぁジャイアンはかまわずジャイアンなんですけどね…。