Norris Turneyと同様に、Harold Ashbyは晩年のエリントンを支えた真のエリントニアン。Ben Webster直系のテナーで、ノドを大きく鳴らして吹き込むスタイルは生き写しのようだ。
 
軽妙なクラリネットを吹いたJimmy Hamiltonがいなくなって、重厚なテナー奏者Harold Ashbyが入ったことで、エリントン楽団の音は重たいハーモニーを響かせるようになった。Paul Gonsalvesとの2テナーを生かすべく、エリントンがアレンジを変えたのだと思う。
 
メンバーの個性を作編曲に取り入れるのがエリントンの流儀。メンバーが変わってエリントンのアレンジが変わるのを聴く。これがエリントンを聴く楽しみでもある。

The Private Collection Vol.9, Studio Sessions New York, 1968
10枚まとめて発売された未発表音源のうちのVol.9に、Ashby入団直後の録音がある。1曲目からAshbyがフィーチュアされ、エリントンからの信頼度の高さがわかる。
 

Born to Swing
知る人ぞ知る傑作。ヨーロッパ盤ブームの頃は幻の名盤だった。
 
本盤のプロデューサー・Stanley Danceはエリントンを熟知していて、彼が企画したエリントン関連のレコードにはハズレがない。といっても本盤はAshbyがエリントン楽団に入る8年も前に録音された初リーダー盤。Stanley Danceはすでにエリントンと同じニオイをかぎ取っていたのかも。
 
素晴らしい内容のレコードだが、オリジナル入手は容易でない。売ってくれた英国のセラーも、扱ったのは3回目だと言っていたので、英でもレアだと思われる。(多くはすでに日本人コレクターが所有していると思われる。)
 
ジャケが改悪された再発のMJR盤なら10ドル程度で入手できるが、オリジナル盤の圧倒的な迫力は失せてしまっている。音は断然オリジナルが良い。オリジナルジャケを使った高音質の復刻盤が待ち望まれる1枚だろう。
 
Tenor Stuff with Paul Gonsalves 
ゴンザルベスは下品なブローさえしなければ超一流。本盤でもスローなバラードをHarold Ashbyと2テナーで演じた曲は至高の名演。ミディアム~スローで統一して欲しかったね。
 
2人ともBen Webster直系だが、Ashbyはより強くノドを鳴らして息を吹き込む、ホンカーがやる吹奏スタイル。ブルースのレコードにも起用されたのがわかる。

Scufflin '
ワンホーン作品。ブルースを軸にしたBlack&Blueにはピッタリ。他のレーベルよりホンカー色が強く出ている。さすがはBlack&Blue。
 
The Viking(Gemini, 1989)

欧州のリズム陣との相性は意外に良く、晩年の作品の中ではオススメできるレコード。師匠のBen Websterも欧州で活躍したことを考えれば、Harold Ashbyにも欧州に適性があったのかもしれない。

1990年代のCD。
CD時代になってからの録音で、LPで聴けないのは残念だが、60才を超えても力量が落ちていないことがわかる。3枚ともオススメ。
 
あと1枚、再興されたProgressiveレーベルのPresenting Harold Ashbyが、行方不明になっていて見つからない。いずれレコード棚とダンボールの中を総ざらいするしかないけど、パッとしない内容だからあまり気が進まない。