今回の選挙の結果が頭から離れません。なぜアメリカ人でもない私がこれほど傷ついているのか。
少しずつ見えてきた気がします。
人間の醜さ、業の深さをあぶり出されたような気がするからです。
誰もが持つ自分とは異なるもの、集団への恐れ。その恐れを克服するために、他者を知る努力があり、学びがあり、よりよい社会に向けての進歩があるのではなかったか。
その努力を、恐れを克服し、ともに社会を築こうという努力を理性と呼ぶなら、その理性が、人間の傲慢さ、他者より優位に立ちたいと願い、異なる集団を差別し、自尊心を満たしたい、そういう人間の本性、業の深さに負けた気がするのです。
今回トランプに投票した人たちが、一般に言われる、教育のない白人男性だけだったらどれほどよかったか。実際には教育のある人も、女性も、裕福な層も一部のマイノリティも彼に投票している。
政策云々はおいておいて、
本来であれば、トランプのように自分に敵対するものにはあらゆるレッテルをはり、貶めようとする人物は予備選の時点で否定されていたはず。
豚のように汗をかくちっちゃなマルコ。
嘘つきクルス。
Low energy のジェブ
生理中の不機嫌な女。
憎しみに満ちた、腐敗した嫌な女。
メキシコ系だから、公正な判断ができない判事。
そもそも自分のタイプではない、政治目的で自分をセクハラで訴える醜い女。
トランプが肌の色が違う、というだけで扱いを変える種類の人種差別主義者だとは思わない。でも彼は敵対した瞬間にそれを人種や性別のせいにする。敵対するならば、アメリカが作り上げてきた民主的選挙プロセスすらも不正と呼ぶ。皮肉にも自らの当選で選挙システムが自分に対し不正に歪められていたわけではないと証明してしまったが。
他者を貶める過激な発言で注目を集め、自らの強さを誇示しようとする。それは「いじめっ子の論理」そのものであり、大人たちは子どもにそうあってはならないと教えてきたのではなかったか。
隠れトランプサポーター。
彼らの、本当は他者を受け入れたくない、他者を理解する努力をしたくない。異質のものを一括りにして、アメリカ社会から排除したい、本来は白人の国である、という意識。
ムスリムの一時入国禁止。
壁を築くことによる、薬物を持ち込むレイプ魔の不法移民の排除。
そこには現状を、原因を理解しようとする努力はなく、排除の論理だけがある。
先に移民として渡米し、生活を築いてしまったら、その生活を犯されたくない。後続のものには自分の得た繁栄をわけたくない。マイノリティでも自分は大丈夫なはずだ。マイノリティを差別するトランプの側に立つことで、自分のグループで優位にいると感じたい人たち。弱いものをいじめる強者に群がる、その精神を思わせる。
大統領を目指せる女性であることは主婦であることよりずっとずっと難しい。絶対に彼女のようにはなれない私。
友人の言葉を借りるなら、劣等感を悟りに変えた女性たち。
いろいろな理由をつけて、一つ一つ男性社会の壁を破ってきた彼女に向けられる浅はかな嫉妬心。
ヒラリーは優等生と言われてきた。優等生すぎると言われてきた。カリスマ性はないかもしれないけれど、一つ一つ問題を解決し、階段を登ってきたんだろう。
優等生であろうとする努力を否定する。
ガリ勉をカッコ悪いと見下す精神に似ている。
ヒラリーも完璧ではない。疑惑もたくさんある。
それでも、彼女が人一倍の努力をし、他者を受け入れる努力を奨励し、女性、少数者、その他多くの人の権利のために戦ってきたのは事実。
少なくともヒラリーはいい人、いわゆるpolitically correct でいようとした、フリかもしれない。いい人ぶることは偽善かもしれない、でもいい人ぶる努力を否定してしまったとき、人はただの救いようのない罪深い存在でしかなくなってしまう。
トランプの当選はいい人のふりなんてしなくてもいい。これまで溜まっていた他者に対する排除の意識を口にしてもいい、というメッセージを送ってしまった。
すでに、多くの中学校や高校では
白人の国だ！white power
壁を作れ！build the wall
と集団で練り歩き、マイノリティを脅す事件が多発している。
SNSではアジア系やヒスパニック、ムスリムが国に帰れ！と言われた事件の投稿で溢れている。
With all this being said, ここまで言っておきながら、
トランプ支持者を一括りにして批判してはならない、とも思う。
他者を理解しようとする努力、それはトランプ支持者にも向けられるべきであると思う。
大統領に必要とされる気品、象徴する価値観よりも、宗教的価値観から選んだ人、一部の政策から選んだ人、とにかく何かを変えたかった人。
いろんな背景がある。
いい人ぶって、理解しようと努めたいと思う。
ヒラリーの敗北宣言の言葉を借りるなら
never stop believing that fighting for what's right is worth it.
ご参考
出口調査の結果