アジア寺子屋スタディツアー その① (吉村 瞭) | Cordillera Green Network インターン体験記

Cordillera Green Network インターン体験記

フィリピン・ルソン島北部のバギオを本拠地に、山岳地方(コーディリエラ地方)で活動する現地法人の環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network:CGN)」の日本人インターンによるブログです。お問い合わせはcordigreen(a)gmail.com
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お久しぶりです!CGNでインターンをしている吉村 瞭です。

 

2017年8月6日~24日まで、立教大学のフィリピンホームステイサークル「アジア寺子屋」のスタディツアーの企画・コーディネイトを担当しました。

 

「アジア寺子屋」は毎年夏休みにキリノ州マデラという村で約3週間のホームステイを行いながら文化交流を行うサークルです。彼らはこれまでにも何度かCGNのスタディツアーに参加しています。多民族国家フィリピンで、マデラ村を見ただけではフィリピンを知ったことにはならない、もっと多面的にフィリピンを知ろうという目的でツアーへの参加を決めてくれた彼ら。

 

実は私も前々から同じことを感じていました。フィリピンは7109の島々からなり、公用語は英語、タガログ語ではあるものの,それとは別に地域の言語が約80程あるといわれており、それらの言語は地域によって全く異なります。私はそんな多民族国家フィリピンの中の一部を見ただけでフィリピンを知っているとは言い切れないと思います。とはいえ、フィリピンの全部を見ることは中々難しいので、できる範囲でフィリピンの様々な面を学び、それを通してフィリピンは多様な文化が存在していて、どれもが全部フィリピンなんだと知ってもらいたい、そんな気持ちで私もこのツアーに挑みました。

 

実はこのツアー、当初の予定ではCGNがコーディネイトを担当するのは8月7日~10日の四日間でした。しかし出発の直前、マデラに武装勢力「新人民軍」が現れたという知らせを受け、急遽ホームステイの受け入れが中止に。こうした事態によりCGNはツアーの期間を彼らの帰国予定である24日まで延長し、約3週間のスタディツアーを行うこととなりました。

 

私自身、この知らせを聞いた時、頭が真っ白になり何をすればいいのか分からなくなりました。ツアー延長を決めることで、どれだけ沢山のフィリピン人に動いてもらうことになるか、それらを自分でちゃんと把握しきれるか、不安と焦りでいくら深呼吸しても空気が頭に入ってこない状態でした。

 

しかし、CGNスタッフやフィリピン人はこの事態に全く動じておらず、その姿に感謝と尊敬の気持ちでいっぱいになりました。元々フィリピン人の素敵なところだと思っていたハプニングにも動じず柔軟に動く姿はなお一層私の心に強く響くものがありました。

 

このような状況下ではじまった、スタディツアー。参加者のアジア寺子屋の学生さんは計7名でフィリピン5回目というベテランから今回が初海外というひとまで様々。

 
実は今回、今年の1月までCGNのインターンを行っていた山本佳波さんも、卒業論文の調査のためこのスタディツアーに(10日まで)参加!
 
そうしてインターンの先輩である佳波さんが優しく見守ってくださる中、私の挑戦ともいえるスタディツアー始まりました。

 

最初はみんなでオリエンテーションを行いました。

オリエンテーションではCGNの活動について代表のレナートから説明があり、その後ツアー前に事前勉強会ということで私からコーディリエラ地域の先住民族について、この地域が抱える鉱山問題について、植林についてプレゼンテ―ションを行いました。

 

コーディリエラには多くの先住民族が住んでおり、彼らは民族としてのアイデンティティを強く持っています。彼らは民族ごとに言語を持っており、そこには高い誇りがあります。日本人は方言という文化はあれど、地方ごとに言語が異なるということはなく、日本人同士は日本語で会話するのが当たり前。そういう我々にとって、民族によって全く異なる言語を持っている状況をすぐに理解することは難しいかもしれません。ですがフィリピン人という枠に当てはめるのではなく、彼らは何民族なのか、その民族はどういった特徴があるのかなど学ぶことでフィリピンをより濃く知ってもらいたいと伝えました。

 

今回はなかでも、ベンゲット州に多く住むイバロイ族について取り上げました。イバロイ族はラテン気質なフィリピン人が多い中でも珍しく、シャイな人が多いのが特徴。

 

また鉱山問題では、植民地時代より始まる大企業の開発がこの土地にどれだけ大きな影響を与えたのか、歴史を学びながら勉強しました。鉱山=汚い、鉱山なんかやめればいい、そういった安易な答えではここでの問題を理解したとはいいません。この問題の背景にあるフィリピンの社会問題や環境問題についても知ってもらった上で、ではどうしていくべきなのか考えてもらいました。

 

最後の植林では、植林を行う理由や、これからみんなで植える木について勉強しました。

植林というと地球温暖化を防ぐといった、あまりのも大きなテーマになってしまいがちでなんだか身近に感じにくいかと思われます。ですが、植林をすることでその地域の土砂崩れを防いだり、きれいな水を供給できたりと地域への還元力は非常に高いのです。

 

長い座学もようやく終わったところでみんなでバギオにあるセントルイス大学内の博物館へ。ここではコーディリエラの先住民族文化について学びました。

 

ガイドを務めてくれたコロンブスさんの最初の一声、「我々はフィリピン人というより民族としての意識が強く、アイデンティティは民族にある」という言葉を聞き、この地の人は本当に民族に対して高い誇りを持っているのだと感じました。その一方で少し疑問も。今経済成長が著しいフィリピンで、コーディリエラ地域もその影響を受けているのは事実。経済発展がされていく中でせっかくの文化がなくなってしまわないか、何か失われないための努力はなされているのかと不安になりました。文化は変容していくものですが、それによって何か大切なものが失われてほしくないと強く思いました。

 

ここではみんなで伝統楽器を奏でるなど様々な体験も行いました。

 

 

翌日は朝からみんなでバギオからジプニーで2時間程の距離にあるCGNの植林地アンボンドランへ

 

足元が不安定な中、苗木を持ちながら行ったり来たりする作業はなかなか大変で、みんなで声を掛け合いながらベンゲット松を植えました。

 

身体を動かすと自然とおなかがすいてしまいます。

お昼はみんなでフィリピン家庭料理の定番アドボを食べました。アドボとは醤油ベースの煮込み料理で、主にバブイ(豚肉)やマノック(鶏肉)を使用します。

 

たらふくアドボを食べた後に、紙布作りアーティスト志村朝夫さんお手製のコンニャク・アイスクリームをいただきました。

 

この色鮮やかなアイスクリーム、ここには何も着色料などは含まれておらず、ピンクはドラゴンフルーツ、黄色はウコンそのままの色です。

 

その後アンボンドランを後にしてイバロイ族の伝統的家屋をコテージにした「Suvani's Avong Heritage Home」(以下アボン)へ

 

 

ここはイバロイ族の伝統的な生活を守っていきたい、知ってもらいたいという思いから6年前にオープンしたコテージです。

 

この日はここに一泊し、高床式で自然の風を感じながらイバロイ族の伝統的なライフスタイルを体験しました。

 

 

夕飯はピニピカン。ピニピカンとはコーディリエラ地域伝統の料理で、生きた鶏の首を意識がなくなるまでピシピシ叩きます。そうやって絞めることで血、一滴も無駄になりません。今回はこの工程を最初から見学しましたが、みんな目を背けることなく命が私たちのためにささげられる様子を見届けました。

 

日本のスーパーで見かけるプラスチックパックに詰められた肉も全て命をいただいているもの。しかしあのパックは原型をとどめていないため、命をいただいているという気持ちは湧きにくいかもしれません。絞めた鶏をカットしていくと、そこには生まれる直前の卵がお腹の中に。改めて命をいただいているんだなと感じる機会となりました。

 

木の温もりを感じ、自然の音しか聞こえないアボンでの静かな夜に参加者一人ひとりが色々なことを感じながら寝床へと着きました。3日目以降の様子はアジア寺子屋スタディツアーその②にて!