帰国後は、引っ越し、大学、就職活動…と、フィリピンでの日々から180度変わった生活にひたすら慌ただしく過ごしてきたように思います。今回はこちらで振り返る機会をいただいたので、帰国後考えたことなども交えて体験記を書いていきます。
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もともとCGNでお世話になることになった経緯は、大学の講義で「INGOの国際政治上の意義」というテーマを扱ったことがきっかけです。NGO、とりわけINGO(Iはinternationalの意)について、沢山の文献を読みました。先生のお話も勉強になりました。しかし当時の私はNGOで働いている方と直接お話ししたこともなければ、その活動に参加したこともありませんでした。「机上の勉強と現実はどう違う(一致する)のだろう」「組織の内部ではどのように運営が回っていくのだろう」など、気になることがあれこれと湧いてきて、これは実際に行ってみるしかない!という結論に至ったわけです。受け入れ先を探すに当たっては様々なご縁のおかげで最終的にCGN代表の眞理子さんにたどり着き、短期間ながら受け入れていただけることになりました。
インターン中は、眞理子さんや他CGNスタッフの皆さんのご厚意で、様々なところへ同行させていただきました。植林の事業地にてコーヒーの苗木を植えたり、鉱山開発地域で鉱員の方のお話を伺ったり。現地の人々とのつながりが深いCGNならではの経験をさせていただき、自分の中の価値観がめまぐるしく変わっていく毎日を過ごしました。そんな中、私が担当として一貫して関わらせていただいたのが、CGNグリーン奨学金事業の補助とTALA国際交流イベントの企画ですので、この2つについて少し詳しく振り返ります。
[植林ツアーに参加させていただいて]
CGNグリーン奨学金事業では、奨学生との定期ミーティングということで2つの地域(カリンガ州タブック、マウンテン州タジャン町)を訪ね、学生たちに話を聞きました。当時の様子は過去の記事をご覧いただければと思います。
私は基本的にこの事業を担当されているアイダさんに同行させていただく形でしたが、どちらの訪問でも、どんな立場で奨学生たちと話せばよいのかとても悩みました。おそらく私は彼らと会うのは少なくともインターン期間中はこれが最初で最後になるでしょうから、アイダさんと同じ立場にたつのはやはり違う気がしました。アイダさんは、よく笑い、よく喋る太陽のような方で、奨学生を温かく包み込むお母さんのような存在です。彼らにとっては、「何かあったらアイダさんに。」という安心感のような感覚があるのではないでしょうか。一方私は彼らと歳も変わらず、次回のミーティングにはきっともうここにはいない存在。どうしたものかと考えていたら、アイダさんがアドバイスをくれました。
「外部の人の目に触れるだけで、奨学生にとってはとてもいい刺激なのよ。それにあなたは日本人なんだから、それだけでユニークじゃない」。
うーん、分かったような、分からないような。でも、「あなたはそのままのあなたでいればいいのよ」というメッセージだったんだと思います。そこで、変に気張ることなく「同じ学生だけれど、日本人だからちょっと面白い存在」ということで彼らの正直な気持ちだとか、同じ学生ならではの悩みを話したりして楽しめればいいのかなと思うようになりました。最初は緊張している様子で表情の硬かった子たちも、私の経験や悩みもシェアしていくうちに笑顔を見せてくれたり色々な話を聞かせてくれたりして、とても嬉しかったのを覚えています。
そして、訪問中に見聞きした彼らの生活をニュースレターとして発行し、彼らの手紙と一緒に里親へ発送します。こうした一連のプロセスに関わらせていただいたおかげで、この奨学金プログラムのもう一つの側面が見えてきました。単なるお金のやり取りではなく、里親の方々の温かい気持ちによって奨学生と彼らの暮らすコミュニティ全体に日本という国への理解が生れ、戦争イメージとの決別、新しい文化交流ともいえるものがうまれつつあるという事実です。
マウンテン州タジャン町、カヤンウエスト村も奨学金プログラムの事業地の一つですが、ここでは日本語の名前の付いた手料理が振る舞われ、日本の演歌を歌うママさんが宴を賑わし、「日本人が来たら温かく迎えたい」と、まさに日本人である私を皆さんがまるで家族のように温かく迎え入れてくれました。過去にはたった数日間の滞在でしたが温かいもてなしに「帰りたくない」と涙を流した日本人もいたとか。直接顔を合わせることは難しい里親と学生たちの関係ですが、お金だけのつながりではなく、それぞれの気持ちが行き交うようなCGNの奨学金プログラムからは、非常に多くのことを学びました。

[奨学生ミーティング@カリンガ州タブック]

[コミュニティの皆さんと一緒にごはん
@マウンテン州タジャン町カヤンウエスト村]
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さて、もう一つのTALA国際交流イベントですが、こちらはTALAが新しい出会いの場、異文化交流の場として人々のより身近な存在にしたいという思いのもと、バギオの語学学校生と現地のフィリピン人学生を主な参加者として企画されました。こちらも詳しい内容は過去の記事にて紹介しています。

[現地学生との交流会@パンガシナン州(第3弾)]
私のインターン中には計4回催されたこの企画ですが、記念すべき1回目は先輩スタッフの方が企画されていました。これに参加させていただいた私は「なんだ、意外とできそう」と思ってしまったのですが、これが大間違い。企画、チラシ作製、宣伝、分担、コスト管理などなど、実際には前日までにやることが盛り沢山ということに2回目、3回目…と徐々に学んでいくのですが、当日しか見ていなかった私にはその苦労が見えなかったのですね。
外部のパートナー(各語学学校や国際交流基金の担当者さま)にご協力いただきながらイベントを組み立てていくわけですが、これが想像以上に上手くいかないことが多く、その過程で巻き込まれた皆さんには大変なお力添えをいただきました。ご迷惑も沢山おかけしました。改めて感謝とお詫びを申し上げます。ありがとうございました。
最後まで私の企画はイベントとしては完璧には程遠いものでしたが、ご参加いただいた皆さんから「フィリピン人の友達ができて楽しかった」「日本にはこんなに美味しい食べ物があるなんて知らなかった」という嬉しい感想をいただいたり、イベントがきっかけでその後も関係が続いているのを知ったりしたときには、何ともいえない喜びがあります。
顔と顔を突き合わせての交流によって生まれるものは、インターネットなどのメディアを通しては不可能であったり、あるいは何倍ものやり取りを経なければ得られなかったりします。また、集まる人々はそのイベントに興味があるという点で共通の関心をもっているので、そこでの出会いは非常に貴重で有意義なものです。私は今回、こうしたイベントの可能性を強く感じられたことがひとつの大きな収穫だと感じています。この気づきは、現在就職活動中の私にとって、職業選択の上で大きな参考になっています。

[お好み焼き&寿司パーティ(第4弾)]

[現地学生との交流会@TALA(第2弾)]
また、イベントに限ったことではなくCGNの活動全般においては、植林、ワークショップなどそれぞれの目的にプラスして、そこで生まれる交流、つながりが非常に大事にされている印象を受けました。息の長い、愛される団体を支えるものは結局人なんだろうなと思いました。

[植林体験を通して交流を深める@植林ツアー]
それから、フィリピンの生活自体を通しての宝物といったらやはり様々な人々との出会いです。眞理子さんを通して出会った人生の先輩方から叱咤激励をいただいたり、TALAのお客さんとして来られたチャレンジ精神旺盛な学生さんコンビから刺激を受けたり、イベントの参加者の方がイベントのプロで貴重な辛口アドバイスをいただいたり。語学学校のマネジャーの方々も、忙しい中相当なお時間を割いて私のイベントの企画に協力してくださったり、仕事観なるお話までいただけたりと、とてもとても勉強になりました。歳が自分とそこまで離れていないのに、このフィリピンという特殊な環境の中“カッコよく”生きる方々に出会い、「まだ学生」という甘えをどこかで常に持っていた自分に気づかされ恥ずかしく思ったこともありました。おひとり御一人との出会い、それぞれからいろんなことを感じ、学びました。
そしてなんといっても一番近くで見守ってくださった眞理子さんをはじめ、CGN・TALAのスタッフの皆さんには、ご指導いただき、沢山の学び・経験をさせていただいたことに深く深く感謝いたします。
フィリピンでの生活は日本での当たり前が当たり前ではなく、電気が点かない、水が出ない、といった事態が起きたりして、助け合っていかないと物事が立ち行かなかったりします。体力的にも精神的にもそれなりのエネルギーを使っていました。
一方日本での暮らしは、朝起きて温かく勢いのよいシャワーを浴びて、学校へ。ジプニーとは違って電車の改札もピッとやれば簡単に定刻通り目的地まで行くことができるし、下手すれば誰とも会話を交わすことなく、何不自由なく1日を終えることだってできます。でも、こんなに全てにおいて省エネモードでいいのだろうかと最近思います。自分の置かれた状況に良くも悪くも順応してしまうのが人の性なんだろうなと思いながらも、なんだかちょっと物足りない。これからは能動的に、エネルギー全開で力を注げるような環境・活動を自分でつくっていこうと思います。
フィリピンで出会った人々からの学びをどう生かすか、帰国した今が大事なときですね。頑張ります!ありがとうございました。
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余談...
私事ですが、父がCGNの豆を自家焙煎してプチカフェなるものを営業しようと画策中です。そのため、これからもCGNの皆さまには今までとは別の形でお世話になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
