下村敦史さんの『同姓同名』を読みました。

 

 


16歳の少年が、6歳の少女をめった刺しにして殺害する事件が発生した。
犯人の名前を、一部の週刊誌と生放送のワイドショーが「大山正紀」と発表したことで、同姓同名の大山正紀の人生が狂いはじめる。
サッカーでスポーツ推薦が決まっていたのが白紙に戻ったり、内定をもらっていた会社から内定の取り消しを受けたり…
大山正紀たちは、被害者の会を立ち上げ、真犯人の大山正紀の顔を世間にさらすことで、自らの無関係を証明しようと動き出す。



なんと、主要登場人物のほとんどが「大山正紀」という、挑戦的な作品。
普通なら、この大山正紀がどの大山正紀なのか、ごっちゃごちゃになりそうなところですが、それを見事に書き分ける素晴らしさ!
また、その部分を最後に巧みに利用するあたりは圧巻です。

「大山正紀」が10名ほど出てくるのですが、巧みな記述と、隠れた背景によって、あっと言わされるのではないでしょうか。

重大犯罪の加害者と同姓同名の場合など、特定の条件に該当すれば、名前を変えることができるという話を聞いたことがありますが、それもなかなかハードルが高い様子。
同姓同名であることで被った被害が大きいと判断されなければ、名前を変えることはできないそうです。

数十年前であれば、人間関係が基本的にご近所さんに限られていましたので、収監されているはずの時期に世間に顔を見せていれば、他人であることが証明できますが、昨今のインターネットが発達した時代では、日本中、場合によっては世界中から名前を検索されてしまうので、誤った情報が氾濫してしまう恐れが…
そんな危険性を描いた1冊になっていると感じました。

 

 

 

 

 

 

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