東京芸術劇場プレイハウスで上演中の、野田秀樹作・演出・NODA・MAP・『Q :A Night At The Kabuki』を観てきました。

『Q』は、QUEENのアルバム「オペラ座の夜」の全曲を舞台化するという企画から野田秀樹さんにオファーがあったもので、豪華な俳優陣をそろえて連日華々しく上演されています。

 

あの『ロミオとジュリエット』の後日譚ということで、生きていたロミオとジュリエットが出てくるらしく、二人のロミオ、二人のジュリエットというのもワクワクしますし、

アルバムを丸ごと舞台化、というのもいったいどんな感じになるんだろう、と興味津々、

そしていつも野田MAPは魅力的なキャストを揃えているので、やはりチケットをとりたくなる、

 

前回の『桜の森の満開の下』は結局チケットがとれずに生では観れなかったんですが、今回は一般販売でとることができて、行ってきました。

 

さて、ここからは「すごくあたまのわるいかんそうぶん」になりますので、この作品を観て楽しまれた方、感銘を受けた方にはお許しいただきたいと思います。

また、少しネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。

 

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2019年10月15日(火)14時

東京芸術劇場プレイハウス

作・演出 野田秀樹

音楽 QUEEN

出演 松たか子 上川隆也 広瀬すず 志尊淳 橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀 野田秀樹 竹中直人 他

 

 

 

観終わった後、思ったのは、「すごく、野田MAPだなあ」と。

いや、野田MAPの作品なんだから当たり前なんですが、

「別にクイーンじゃなくてもよくない?」と思ってしまいました。

まずは、野田さんが言いたいこと、伝えたいことがあって、それにアルバムを当てはめたような・・

 

私、もっと自由な世界が展開されるのかな、と思っていたのかもしれませんが、でも、結局、「そこ」にいきつくんだなあ、と『逆鱗』を観た後に感じたことと同じような気持ちになりました。

 

ただ、私自身、クイーンに傾倒していたわけでもないし、むしろ映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観て、その楽曲のおもしろさや独特の存在感などを知った“にわか”で、今回の「オペラ座の夜」のアルバムも聞いていないので、全くの的外れかもしれません・・・。

後半につながる台詞の、直截的な表現には、野田さんがこの国の将来に対してさらなる危機感をもっているのだなあ、と感じましたし、そもそも野田MAPはそういうものなんですよね?って今頃気づいているのか、私。

 

前半はいつものように疾走感のあるカオスで、ロミオとジュリエットと源平合戦、現在と過去、現実と妄想が入り混じる中、その中で時々くさびのように撃ち込まれる台詞が後半になると重く鋭いものとして暴かれる。

その後のロミオとジュリエットが、必死で変えようとした運命も、時代という大きな運命の前には抗えない。

 

届かない手紙、

一人の人間としての「名前」がいやおうなく捨てられていくという時局、そんな中でも、あの人への「愛」は、「愛する」ということだけは。

 

今回、若いロミオとジュリエットを演じた志尊淳さんと広瀬すずさんのピュアな輝きはまばゆいばかりで、若さと真摯さは野田さんの求めに十分応えていたと思うし、

その後のロミオとジュリエットを演じた上川隆也さんと松たか子さんの熟練身のある演技にはさまざまな感情が胸に呼び起こされました。

また、巴御前を演じた伊勢佳世さんが、イキウメ時代とはうって変わった存在感で、新鮮な驚きでした。

 

『逆鱗』を観た後の感想で、私は、野田さんはいつも私たちを戦争の過去に引き戻そうとしている、と書いたんですが、『Q』のパンフレットの中で、野田さんと吉永小百合さんの往復書簡の文章を読んで、野田さんがなぜ「戦後」にこだわるのかが、少しわかった気がしました。

 

この平和を失わないためには、ずっと「戦後」であり続けなくてはならない。

決して、これから、「戦前」、「戦中」になってはいけない、この、「戦後であること」こそが、平和を担保している、という信念なのだな、と。

 

一方で、敗戦から何十年も経つ「戦後体制」からの脱却こそが、平和のために必要であるという考え方もあって、SNSでもいつもいろんな意見が飛び交っていますが、そこには大きな齟齬があるんだなあ、と改めて思います。

 

私は、どちらもこの国の将来には危機感をもっていて、また、平和への想いは同じなのだから議論こそが必要だと思いますが、現実には感情論になりがちだし、互いの信念が強いからこそ、難しいですね。

 

そしてもうひとつ、パラドックス定数の『深海大戦争』の中で描かれていた、深海の生き物たちが持ってしまった「火」。もはや人類においても、その「火」を持つものと持たざるものがいるという事実において、フェーズが違ってきているという「現実」(理想や善悪ではなく、あくまでも現実)があると思うのだけれど、それもまた・・

 

なんて、高見の見物のようなことを言っているのはずるいので自分なりの考えをもって、まずは選挙には必ず行かなくては、と思います(笑)

 

そんなことを考えたりした『Q』でしたが、野田MAPの定番の作品作りを考えると、観客としては、立ち去るべきかなあ、と思ったりもしますが、そういいながらも豪華なキャストに惹かれて、やはりエントリーしてしまうかもしれません。