もうすぐ9月も終わりですが、日中はまだ暑いですね。

私はといえば、7月に観た野木萌葱さん作・小川絵梨子さん演出の『骨と十字架』の感想を書いている途中でいろいろなことが起こり、酷暑の中引っ越しをすることになってバタバタでした。

8月にはアガリスクエンターテイメントの『発表せよ!大本営』も観に行き、どちらもとても見応えがあったのですが、感想を書けないまま過ぎてしまいました。

 

他にも、この夏に観たいお芝居がいくつもあったんですが余裕がなく、9月に入って、前からチケットをとってあった、高木登作・寺十吾演出・鵺的『悪魔を汚せ』を観てきました。

約1か月ぶりに劇場の椅子に座った時は、やはり嬉しかったです!

 

鵺的は、脚本家・高木登さんが主宰するユニットで、私は4月に上演された「1つの部屋のいくつかの生活」の『修羅』を観ましたが、本公演を観るのははじめてです。

 

鵺的は、高木さんの言葉によれば、“アクチュアルな題材を悪魔的に描くことを特徴としている”とのことで、正直、自分、大丈夫かしら?と思っていて、一人では怖いので(笑)友人たちを誘って観に行きました。

 

結果、おもしろかった!

 

万人にお勧めできるとは言い難いのですが、ここ最近心が乱れることの多かった私には、その容赦のなさがむしろ良かった気がします。

以下、ネタバレありの感想です。

 

 

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2019年9月15日(日)14時

サンモールスタジオ

作・高木登

演出・寺十吾

出演・祁答院雄貴 秋月三佳 福永マリカ 水町レイコ 釈八子 斉藤悠 高橋恭子 秋澤弥里 杉本隆幸 奥野亮子 池田ヒトシ

 

 

 

まず、『悪魔を汚せ』というタイトルが無敵な感じですよね。すごいパワーワードで、胸にズン、とくる。

 

普段は、作品のどこかに希望や愛を探したり、見つけてホッとしたりするのも好きな私なんですが、この作品は、常識や、教訓や、道徳や、ヒューマニズムに与しないところがかえって清々しくさえあって、美術や、衣装や、「家族」という集団がもつおどろおどろしさなどは横溝正史や江戸川乱歩の世界を思わせるものでした。

 

とある一族の、家、血筋、欲望、逸脱、狂気、などをめぐるまさに修羅の人間模様で、途中、悲惨なことや悲劇的なことが起こるんですが、愛情を育む場所の「家族」が時に憎しみの場となることや、「家族であること」から簡単に逃れられない抗いがたさなどは程度の差こそあれ普遍的なことでもあるよなあ、と思いながら観ていたりもしました。

 

また、いろいろなものにとらわれて身動きができなかったり、物事に妄執したり、物事の解決を求めずにやり過ごそうとする大人達と、そんな中に生まれてしまった3人の子ども達、という構図もあって、

登場人物達のキャラクターがとてもよく描かれていました。それを体現する俳優さん達も非常に巧かったし、時に観客に揺さぶりをかけたり、遊びを取り入れる寺十吾さんの演出も冴えていたと思います。

 

そんな中、父親が違う3人の子ども達の演技がとても印象に残っています。

 

冒頭、長男役の祁答院雄貴さんの語りから始まるんですが、一歩間違うと陳腐になってしまうところを巧みにかわしていたと思いますし、口調や演技は藤原竜也さんみたいで、まさに藤原さんがやりそうな役だよなあ、と思っていたら途中から藤原さんにしか見えなくなっていました(笑)

でも、その語り口は恐ろしいことを淡々と言っているのにどこか心地よく響いてきたし、不思議な魅力があって、観ていてなぜか彼を拒絶する気になれませんでした。

 

長女役の秋月三佳さんは、この狂気の集団の中にあって常識や人間としての心を失わないようにしようとする葛藤や、ラストシーンにおける決断がとても痛々しく、壮絶に響いてきました。(この作品、いわゆる「いい人」に全然救いがなかった!)

 

そして、シリアルキラーも真っ青の次女を演じた福永マリカさん、「ああ、この子はやばい・・」と恐怖と絶望を感じながらも、その一挙手一投足がこの人物を鮮やかに体現していて、目が離せませんでした。

 

常識からいえば到底受け入れることができない3人ですが、私には、『悪魔を汚せ』は、この一族に生まれてしまった3人の若者たちの、サバイバルの話であったようにも思えました。

長男は虚無に逃げ込むことで、長女は最後に自分の手で変化を起こすことで、そしてもはや誰にも止められないサイコパスとなった次女は実は一番変化を望んでいたのかもしれなくて、狂気と狡さの大人達の世界の中で、三者三様に「生き延びよう」としていたのでは、と。

 

正直に言うと、終盤に向けて、この一族の秘密に関して、「実は・・・」という推理小説ばりのどんでん返しがあるのかな?と思っていたんですが、それはなくて、ああ、そのまんまなんだ・・とちょっと力が抜けたところもあるんですが、その後に来たラストシーンが凄かった!

 

長女は、この屋敷に火をつけ、次女ともども一族を葬り去ろうとするのですが、さらにその後・・・という最後のシーンは、一筋縄ではいかない結末をこの物語に与えていて、とても衝撃的で、これからも続く闇への絶望とともにどこか高揚感と、解放感に似た感情に胸が震えてしまいました。

 

あの結末で沸き立つ想いをしてしまう作品を創るとは、鵺的ってまさに悪魔的!そして魅力的。

人って、普段はいろいろとセーブして生活しているけれど、タブーや闇に惹きつけられるところもあって、それをフィクションという場で解放できるのが、アングラ演劇なのかしら、なんてことを思ったりもしたのでした。

 

やばい。けどまた観たいです。鵺的。