世田谷パブリックシアターで上演された、ケラリーノ・サンドロヴィッチ台本・演出『キネマと恋人』再演版を観てきました。

観たのは初日なんですが、あっという間に今日が東京公演の千穐楽でしたね。

私はシアタートラムで上演された初演も観ていますが、観終わった後、「あー、面白かった!」と感激したのを覚えています。

 

以前、初演版の感想を書きましたが(初演の感想はここに)、今読み返してみると、あらすじ書いて終わってる小学生の感想文みたいになってる・・しかもかなりのネタバレ(汗)

この後地方公演があるので、未見の方は、初演版の感想は観劇後に読んでいただいた方がよいかと思います。

 

以下、再演版の感想です。

 

 

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2019年6月8日(土)17時

世田谷パブリックシアター

台本・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ

映像監修・上田大樹

振付・小野寺修二

音楽・鈴木光介

出演・妻夫木聡 緒川たまき ともさかりえ 三上市朗 佐藤誓 橋本淳 尾方宣久 廣川三憲 村岡希美他

 

 

 

今回の再演版は、世田谷パブリックシアターに劇場を移すと言うことで、初演時のシアタートラムという小さな劇場で贅沢な観劇体験ができたゆえに、大きな劇場に移ることでその魅力が拡散してしまうのでは?

とか、

初演と再演を比べると、やっぱり初演の方が良かったな、と思いがちだったり(初演のインパクトが強いせいでしょうか)するので、

正直、ちょっぴり不安を覚えての観劇だったんですが、

 

再演版、とても良かったです!

 

初演時の手作り感は薄れたものの、ショーアップした楽しさもあり、人物像や、人物の心の動きなどはよりクリアーになっていた気がします。

 

あと、今回改めて思ったんですが、衣装もいいな!と。

そして、着替えが多い!これ、出演者の方々、大変ですよね・・・

動きや段取りの複雑さに加えて、それぞれの人物を生きなければならない。

 

今回は2階席だったので、表情などは見えなかったんですが、心情はよく伝わってきたし、

初演版と同じキャストで再演された、というのもとても幸福なことですが、この3年間の間に、皆さんそれぞれ、さらに円熟味を増していた気がします。

年齢を経ただけではない、何か、俳優としての(?)揺るぎなさのようなものも感じましたし、

また、同時に、この作品の物語の強度も改めて実感しました。

 

観ていながら、またあのみんなに会えた、

またあの

「ごめんちゃい」

「ありがとさん」

が聞けた、という喜びがふつふつと湧いてきました。

 

初演版では、小野寺修二さんのステージングは、シアタートラムという空間の中では、私には自己主張が強いように感じられたんですが、今回、世田谷パブリックシアターの空間では、それらはとても活きていたと思いました。

2階から眺めるダンサーやキャストの動きや、映像などもとても美しかった。

 

このお話、ロマンティックで切なくて・・ともすればウエットになりがちなところ、コンテンポラリーダンスの要素が加わることで少しドライさも加わっているし、アナログな手法と、新しい技術が混じって、全体的にセンスのいいものになっている気がします。

 

二役を演じた妻夫木聡さん、今回、その差がより明確になっていたし、特に現実の人間の方の造形がより深みを増していたように感じました。

緒川たまきさんのその儚さ、強さ、美しさはやはり絶品だし、ともさかりえさんとの姉妹愛も胸に響きました。

そして、

登場人物全員が、愛おしい。ほんとに。

 

この作品は、ウディ・アレンの映画『カイロの紫のバラ』を下敷きにしていますが、映画を舞台化して成功しているのは、『キンキーブーツ』や『ビリー・エリオット』などがパッと思い浮かびましたが、この『キネマと恋人』、それらに匹敵していると思いませんか?

 

ケラさんの作品は、時に不条理劇だったり、ナンセンスコメディだったりと、観る者を選ぶ時もありますが、この作品は、映画好き、演劇好き、エンタメ好きのすべての方に観てほしいなあ、と思いました。

 

ラストシーンは、やはり胸に染み入るもので、この作品、私にとって宝物だなあ、と思います。

初日の幕が降りた時、心から拍手をしてスタオベしながら、ケラさん、出演者のみなさん、スタッフさん、そして、エンタメ、ありがとう、と感謝の気持ちでいっぱいになり、とても幸福な気持ちで帰路についたのでした。