東急シアターオーブで上演中の、ダイアン・パウルス演出・城田優・クリスタル・ケイ出演・ブロードウェイミュージカル『ピピン』初日を観てきました。

従来の「ミュージカル」という概念を打ち破る、不思議で、スリリングで、驚きや、笑いが詰まったおもちゃ箱のような世界。

魔法のような時間の中、観客も一体となって作品を作り上げた、とても良い初日でした!

 

『ピピン』は、1972年にボブ・フォッシー演出で上演され、2013年にダイアン・パウルスの新演出でリバイバル上演されてトニー賞最優秀演出賞を獲得していますが、今回は、その時のスタッフが再集結し、演出、振り付け、衣装、セットなど、新演出版そのままに上演されています。

 

私は、2015年の来日版を観たことがあるので、それと同じことをやるというのは、相当ハードルが高いのでは・・・?と思っていましたが、この日本版、

 

いい!!

 

作品全体にチャレンジ精神がみなぎっていて、キャストの渾身の演技には大きなパワーがもらえるし、

「伝えたいこと」がとても明確な気がします。

 

やはり、歌詞や台詞を日本語で聞けるのは理解しやすいし、また今回の翻訳や訳詞はとても耳に入りやすかった。

でも、それだけではなくて、このカンパニーの、この作品を日本の観客の心に届けようとする強い意思や情熱を感じました。

 

多分、演出家やキャストの方々のそのための丁寧な作業があったのではないかと想像しますが、結果、ただ、ブロードウェイ版をなぞるのではない、日本版ならではの明確さと深みをもった作品になっていると思います。

 

以下、初日を観た感想です。

少しネタバレを含みますので、未見の方は自己判断のもと、お読みください。

 

 

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2019年6月10日(月)18時

東急シアターオーブ

脚本・ロジャー・O・ハーソン

作詞・作曲・スティーブン・シュワルツ

演出・ダイアン・パウルス

振付・チェット・ウォーカー

サーカス・クリエーション・ジプシー・スナイダー

翻訳・小田島恒志

出演・城田優・クリスタル・ケイ・今井清隆・霧矢大夢・宮澤エマ・岡田亮輔・中尾ミエ他

 

 

 

『ピピン』は、フランク王国の国王カール大帝の息子、ピピンの逸話をもとに作られた物語ですが、史実をヒントにしていますが評伝ではなく、ピピンの自分探しの物語で、

 

それを、リーディングプレイヤーという狂言回しが時にピピンに難題を与え、舞台をコントロールしつつ話を進めていくんですが、カリカチュアされたブラックユーモアや物事の本質を突くようなエピソードが含まれつつ、いくつものメタ構造になっていて、

これは観る人によって捉え方が多岐にわたるであろうキャパシティをもっている一方で、

 

ピピンが「Corner of the Sky」というナンバーで歌う、人生に対する問いかけ~シンプルで、とても普遍的な~誰もが一度は持ったことがある、いや、生きている限りずっと持ち続けるのかもしれない、その問いかけが一本の芯として作品を貫いている。

そして、物語の最後にピピンが見つけた答えに関しても、観客によってそれぞれの感じ方があるだろうな、と思います。

 

ピピンを演じる城田優さんは、その問いかけをする役にとてもぴったり!

一途に答えを求め続ける純粋無垢な求道者の姿は、何となくご本人の一面に重なる気もしました。

今まで私が観た城田君出演のミュージカルは、『ファントム』『エリザベート』『ブロードウェイと銃弾』なんですが、そのどれとも違う、王子ピピンの澄んだ歌声がとても美しくて素敵でした。

 

一方、リーディングプレイヤーの方は、カリスマ性と強いリーダーシップが必要とされる役だと思うんですが、クリスタル・ケイさん、ミュージカル初舞台とは思えない、それらを兼ね備えた堂々たる演技でびっくりしました!

ともかく、かっこいいんですよね。

力強い歌声、凛とした立ち姿。筋肉質な肢体も、この役にぴったり!

 

城田君も、クリスタル・ケイさんも、パワフルな体格をお持ちで、二人のその個性が、この作品にとても合っていたと思います。

あと、ハスキーなクリスタル・ケイさんの歌声と、城田君の澄んだ歌声のハーモニーもすごく良かった。

 

ハーモニーといえば、旅の途中でピピンが出会った未亡人のキャサリン役の宮澤エマさんと二人で歌うナンバー「Love Song」は、すごく甘くてロマンティックでした。

ここはうっとりタイムラブ

 

そして、ピピンの祖母、バーサ役の中尾ミエさん。

バーサが歌う「No Time at All」は、まさに私の人生の季節にぴったりのナンバーなんですが(笑)、そのパフォーマンスには、観た人はみんな驚き、感動すると思います。

あの時、劇場の温度がぐっと上がった気がしました。

 

ピピンの父親のチャールズ国王を演じた今井清隆さん、シェイクスピア俳優ばりの明晰な台詞回しと、深みのある声に聞きほれました。

ピピンの継母のファストラーダの霧矢大夢さんも、上品な悪女で素敵だったし、

ピピンの義弟を演じた岡田亮輔さんも、コミカルさとピュアさのある役どころで楽しかったです。

 

それから、フォッシースタイルのダンスを踊るダンサーさん達、

そして数々のアクロバット、

終演後の挨拶で城田君が「命がけの舞台」と言っていましたが、まさに、命がけの演技の連続!

これは、観客も、自由なリアクションで応えるべきですね。

 

城田君のコンサートに行くと、静かな客席には「もっと!声だして!」と指導が入るんですが笑(お行儀よくしなさい、と言われてきた私達にはこれが意外とハードルが高かったりしますが決して楽しんでいないわけじゃないことはわかってほしいと思ったりしつつ笑)

 

この作品も、

「わあーポーン

「すごーいゲラゲラ

「ひえーっ滝汗

と、観客が自由に反応することがキャスト達を支えることになるんだろうな、と思いました。

これから観に行かれる方は、思いっきり楽しまれるといいと思います!

 

シアターオーブの公演は6月30日まで、その後、愛知、大阪、静岡と続きますが、サーカス小屋のテントに誘われて、異空間の中に迷いこむような2時間30分、これからも、たくさんの観客を魔法にかけてほしいと思います。

 

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