MCR新旧作品集「毒づくも徒然」『親展』『リフラブレイン』に続いて観たのは、『櫻井さん』と『あの世界』。

『櫻井さん』の方は、「櫻井(智也)さん、なぜ・・・?」と思ったし、

『あの世界』は、私の知らない世界ではありますが、たくさん笑って胸が熱くなりました。

以下、ネタバレありの感想です。

まずは、『櫻井さん』から。

 

 

 

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2018年12月2日(日)13時

下北沢OFF OFFシアター

作・演出 櫻井智也

出演・猪俣和磨 安東信助 篠本美帆 北島広貴 伊達香苗 田中祐理子 堀靖明 澤唯 櫻井智也

 

 

 

 

『櫻井さん』は、“自意識の悲劇”という言葉が浮かんだほど、今まで観たMCRの作品の中で、一番容赦がなくて、救いがないお話でした・・・。

途中途中で笑いやシュールな高揚感もあるんですが、これ、観る人によってはとても痛むのでは?と心配にもなりました。

と、ちょっと他人事のように言っている私は、自意識が鈍くなっているのか、あるいは鈍らせる術を会得しているのか(笑)、

 

舞台には銅像の台座のようなものがあり、登場してきた櫻井智也さんがその中に入って、銅像になりました。

へええ~と思って見ていると、銅像のところにやってきた青年(猪俣和磨)が、通りすがりの男(澤唯)と口論したあげく、拳銃自殺をしてしまいます。

 

死因について捜査をする3人の刑事(安東信助、篠本美帆、北島広貴)のへっぽこぶりに笑いを誘われつつ、段々とそこに至るまでが明らかになっていくんですが、

「詩人になりたい」青年は、家族や世間からすればニートで、でも本人は妥協はできず、過去に一度だけ入選したことにすがりつつ、父親(櫻井智也)からは責められ、母親(伊達香苗)からは信じていると言われ、できのいい妹(田中祐理子)からは正論で攻撃され、それらすべてがプレッシャーとなって、段々と追い詰められていきます。

 

自分の詩が認められる唯一のチャンス、と思われたことも、汚い大人達(堀靖明)に利用され、ついには母親の金にまで手を出して、のっぴきならないところまでいってしまうところの、その、泣きたいくらいの切羽詰まり方、

自分の才能への過信や不信や、常識的に生きることを自意識が邪魔をするさまは、見ていてとても痛々しい。

 

そんな風に張りつめて生きていたら、何かのきっかけがあればプツリと切れてしまうであろうし、この青年が、ある人物の言葉が後押しになって自ら拳銃の引き金を引いてしまったように、ちょっとした言葉やきっかけで、他人の糸を切ってしまうこともある、ということを思いおこさせて、恐怖すら覚えていたかもしれません。

 

銅像なのに表情のリアクションがおもしろかったり、そのままの格好で急に父親になったり、そのほかの役を兼ねる櫻井さんのシュールさや、

追い詰められていく青年の痛々しさ、

愛情過多ゆえに息子を追い詰めていく母親など、

どれも印象に残る演技でしたが、でもこれ、私が知っているMCRじゃない・・・

だって、MCRって、一見、毒水だと思っていたものが、浄水だった、っていうカタルシスがあるんじゃなかったっけ・・?

 

この、狂気のベールがうっすらとかかっているような作品世界の出来事を、銅像としてすべて俯瞰していたような櫻井さん、

「一体なぜ、何を思って、この作品を書いたのですか?」と、作者である櫻井智也さんに聞いてみたい気になりました。

 

が、考えてみれば、私がMCRを観始めてからまだ間がないし、

「わかった気になってんじゃねえよ」っていう声が聞こえる気がします(櫻井さんの声で)笑

と、ある意味ずっと心にひっかかりの残る、忘れがたい作品でした。