MCR新旧作品集「毒づくも徒然」2作品目は、あひるなんちゃらの『あじのりの神様』で拝見した石澤美和さんと、パラドックス定数の小野ゆたかさんが姉弟を演じるというので楽しみにしていた、『リフラブレイン』。
両親に捨てられ、超絶貧乏暮らしをしている姉と弟。
健気にがんばる姿が涙を誘う・・・というお話にはならず、理不尽な目にあっても常識を蹴散らして斜め上をいくしたたかさ。
時に鈍感に、時にアグレッシブに生き抜いていく二人があっぱれでした。
でも、二人の間だけに流れる姉弟の情愛もやはりあって・・・
2018年12月1日(土)13時
下北沢OFF・OFFシアター
作・演出 櫻井智也
出演 小野ゆたか 石澤美和 わたなべあきこ 長瀬ねん治 澤唯 本井博之 志賀聖子 おがわじゅんや 上田房子
両親が出ていき、さらに二人とも死んでしまったため、姉(石澤美和)は高校を中退。風俗で働きながら弟のユタカ(小野ゆたか)を高校に行かせますが、そのうち、借金を作って風俗もやめてしまいます。
取り立てに来た借金取り(澤唯)の言うことの方が正論だったりして、姉と借金取りの会話が可笑しかった。
そして借金取りの脅し交じりの命令で、姉の借金を弟が山奥の住み込みの工場(?)で働いて返すことになります。
姉のためにそれを受け入れる弟と、自分から弟が離れていくことに寂しさを覚える姉。
しばらくして姉から呼び出された弟は、姉が今勤めている会社の同僚の小川(おがわじゅんや)にこれから告白するので、フラれたらナイフで自分を刺してほしいと頼まれます。
ところが弟が刺したのは、無神経な言動で姉をフッた小川の方。どこかで自分の人生を放棄してもいいと思っている姉と、姉を傷つけた小川を許せない弟。
そして弟は刑務所へ。
面会に来た姉と弟のやりとりから、両親の死の真相もからみ、姉の罪の意識や、姉と弟の確執やそれでいて離れがたい二人の心情が非常識な言動の中にも実は繊細に描かれていて。
かと思うと、出所して姉のところに戻ってみれば、なんとそこには姉をフッた小川がいて、二人は結婚するのでこのアパートを出ると言う。
弟には高校時代から付き合っていた彼女(わたなべあきこ)がいたんですが、出所して彼女に会いに行った時、彼女から、どうしても姉に負けてしまう自分が嫌だ、とフラれてしまう。彼女の、姉と弟の絆に勝てない悔しさ、切なさという心情もよく描けているなあ、と思いました。
どこにも行く場所がなく、金もない弟が、公園でかつての同級生(長瀬ねんじ、志賀聖子)に会い、屈辱的な態度をとられた時、ゆっくりとナイフを取り出し、ああ、また・・・
と思った時、そこに両親が出ていって泣いている弟を一生懸命なぐさめている幼い姉(上田房子)が現れます。
ここはもう、すごくベタなんだけど、幼い姉の登場で再びの罪を犯すことを免れ、
「ねーちゃーん!」と叫ぶ弟に、こちらも涙腺がゆるんでしまいました。
が、ここで綺麗には終わらないのがMCR(笑)
さらに、借金取りのもとで仕事をすることになった弟が取り立てに行った先には、小川と離婚して弟が入っていた刑務所の看守(本井博之)と一緒にいる姉が。
もう、この、姉のしょうがなさ、したたかさには笑うしかなくて、私も泣き笑いになってしまいました。
結局、弟はなんだかんだいっても姉離れができないし、姉も同じで、でも、それは支えあっているということでいいんじゃない?と思う私。
私にもうんと年の離れた弟がいるので、何となく、この二人の関係がわかるような気もするし、最後の場面では、弟の彼女も交えて3人で楽しく談笑して終わったので、ああ、彼女も戻ってきたんだ、そういう関係に落ち着いたんだ?よかったなー、とほっこりとした気分で観終わることができました。
姉を演じた石澤さんの、その、包容力のある体格と、身勝手なしたたかさのギャップが面白かったし、小川に告白するところのピュアさや弟に対しての複雑な心理を笑いにのせて演じる姿が魅力的でした。
弟を演じた小野さんは、ちょっととぼけて純真なところと、実は心に鋭いナイフを持っていて、時に暴力的な危うさを見せるところがよかったです。
ところどころ鋭いナイフで切り裂くような台詞が満載でしたが、それがまた的を射ていて、やはり、この毒は癖になってしまいます。