MCR『堀が濡れそぼつ』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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下北沢ザ・スズナリで上演された、櫻井智也作・演出・MCR『堀が濡れそぼつ』を観てきました。

堀靖明さんが主人公を演じる物語を観るのは、『佐藤さんは殴れない』に続いて2回目ですが、暴力的とも言える強烈な登場人物達の中にあって、まっすぐで一生懸命で、それゆえ可愛くて切なくて、でもなんとも言えない温かみがあって・・と、今回も堀さんの魅力全開のお話でした。

 

今回は、堀(堀靖明)と、その妻、幽夏子(笠井幽夏子)の夫婦のお話。

例によって相手の本音を切り裂く会話に笑わせられながらも、幸せになろうとしているのに、時に密かに裏切り、傷つけあってしまう、それでも・・という夫婦の情景に心を揺さぶられました。

ラストの台詞、よかったなー。

 

以下、ネタバレありの感想です。

 

 

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2018年5月21日(月)15時

下北沢ザ・スズナリ

作・演出 櫻井智也

出演・堀靖明 笠井幽夏子 おがわじゅんや 北島広貴 異儀田夏葉 彩木りさ子 伊達香苗 佐藤有里子 加藤美佐江 澤唯 櫻井智也 志賀聖子 川久保晴 長瀬ねん治

 

 

 

冒頭、妊娠中の妻が自慰をしているところを偶然夫が見てしまった後のやりとりという、インパクトのある場面からはじまって、櫻井さん、攻めるなあ、とちょっとビックリ。

でも、妻の苛立ちや、どこか二人のギクシャク感も感じられて、この夫婦、どうやら訳あり?という予感がします。

 

郊外に家を建て、妻は身ごもっており、一見幸せそうな堀夫妻。

けれど、妻の元恋人は、堀の親友だった男で、元恋人が死んだ時、妻は後を追おうとしたほどだったけれど、やがて堀と結婚。

女友達に、「今が一番しあわせ」と言う妻ですが、

 

隣人の佐藤(佐藤有里子)から怪しげな霊媒師の澤(澤唯)を紹介され、その霊媒師が言うには、お腹の子は元恋人の生まれ変わりで、この家庭に降りかかる不幸から守ってくれている、と・・。

はじめは信じなかった妻ですが、昔、堀の両親に世話になったというヤクザの櫻井(櫻井智也)が出所してきて、トラブルを持ち込んでいることなど、他人が知りえないことを澤が言い当てるため、ついに信じてしまいます。

 

そっとお腹に手を当てる妻の姿からは、愛した男が生まれ変わって自分の腹の中にいることの喜びを感じているのだろうな、と、その気持ちもなんとなくわかる気もして、そう思うと、なんだか自分が堀を裏切っているような背徳感が・・そして、あまりにも堀が可哀想になり、切なくなりました。

 

が、一方、堀の方も、職場の女子社員の異儀田(異儀田夏葉)から好かれていることがわかり、実は堀も、妻に対する気持ちとは別の次元で、異儀田の匂いにどうしても惹かれてしまっていたりする。妻への愛情はあるけど、でも・・というよくあるアレでしょうか。それを匂いと表現するところがおもしろい。

でもそんな堀に毅然とした態度をとる異儀田さんの演技がカッコよかったです。

 

妻は自称霊媒師の澤と佐藤に言われるままに風水にはまって家の中は壺やらなにやらでいっぱいになっていき、家庭は荒んでいきます。

もう、どう見ても妻は佐藤達に騙されているし、カルトにはまっていくプロセスを見ているようでつらかった。

 

妻の様子がおかしいことを心配している女友達は、堀をカラオケボックスに呼び出し、妻の友達の一人の伊達(伊達香苗)は、妻がお腹の子を元恋人の生まれ変わりだと思っていることまで言ってしまいますが、堀は、それでも、

「大丈夫」

自分は、自分達は、「大丈夫」と。

 

堀は、親友が存命中から、親友の恋人である妻のことが好きで、でも、元恋人が死の間際に、「堀とだけは(一緒になるのは)やめてくれ」と言っていたのを聞いていた・・。

その後、どんなプロセスがあって二人が結婚したのかはわかりませんが、ある種の負い目を負いながら、でも、がんばって、お互い鈍感でいようと努力してきたんですね。この、夫婦だからこそ鈍感でいようとする、というのはわかる気がするよなあ、と思う私。

 

佐藤達のプッシュはどんどん激しくなり、ついに、妻に家を出て集団生活をするように勧めます。ここで、始めて、妻はハッと気づいた様子。その話にはのらず、堀を迎えに行くと言って家を出ます。

 

佐藤達は佐藤の息子(加藤美佐江)を使って堀の家に盗聴器をしかけ、堀夫婦の会話を聞いていた。また、妻の友達の伊達も嫉妬と報酬から佐藤達に情報提供。

そんな風にして、近所の人たちを次々に餌食にしていたことを、偶然訪ねてきた櫻井が聞いていて・・

 

多分、櫻井は、「良い子はマネをしてはいけません」というような方法をとり、悪だくみをしていた者たちの姿は消えてしまったんですが(子供は櫻井がひきとっているらしい)ここは、きちんと報復がなされたという感じでちょっとスッとしてしまいました。

平然と人殺しをするけれど、恩義のある堀達や子供には優しい、ヤバさと優しさが混在する櫻井というキャラが、なかなか魅力的でした。

 

ラスト近く、堀は、シェイクスピアばりの長台詞で、妻に対する気持ちを、まっすぐに、汗をとばしながら、ひたすら叫ぶ。

生まれてくる子供があいつの生まれ変わりだとしても、それでいい、いやよくないけど、それでもいい、と。

ここはもう直球が気持ちよく胸に飛び込んできてがっちりと受け止める喜びを感じながら観ていました。

 

「昔の人を忘れられなくても、それとは別物で俺のことが好きなら」

「好きじゃねえよ!愛してるんだよ!」と怒鳴り返す妻の台詞もまた味わい深く。

 

そんなこんなでいろいろあった二人ですが、相手の一番奥深いところ、見られたくないところを見てしまった、見られてしまったけれども最後、お互いのことを「大好き」と。

それは好きでいようとする、好きでいられるようにとの願いをこめた「大好き」だけど、とても清々しくて、「大好き」って台詞、いいなあ、と思いました。

 

ふと、夫あるいは妻のことを、「大好き」って言える人って、どれくらいいるかしら?「愛してる」とは言えても、「大好き」って、なかなか言えなかったりしません?なんて思ったり。

 

櫻井さんが描く世界は、暴力的でもあって、私的にはそれは許容できるかできないかのギリギリのところで、むしろその瀬戸際感を楽しんでいるところがあります。

でも、その暴力性の裏に感じられる優しさと純粋さが胸を打つし、このアブナさが許されるのも小劇場だからこそで、そこがまた魅力だなあ、と思うのです。

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