オフィスコットーネプロデュース『夜、ナク、鳥』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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吉祥寺シアターで上演された、オフィスコットーネプロデュース・大竹野正典作・瀬戸山美咲演出『夜、ナク、鳥』を観てきました。

オフィスコットーネプロデュースの作品はいくつか観ていますが、以前観た大竹野正典作・シライケイタ演出の『海のホタル』を観た後のダメージが強くて、今後、こういう、保険金殺人系の作品は観ないようにしよう、と思ったんですが、

今回、演出が瀬戸山美咲さんということと、松永玲子さん、高橋由美子さん、松本紀保さん、安藤玉惠さんという出演者の豪華な顔ぶれに惹きつけられて、思わずチケットをとりました。

 

『夜、ナク、鳥』は、2002年に発覚した福岡久留米看護師連続保険金殺人事件をモチーフにした作品で、緊張感のある展開や4人の女優さんたちの熱のこもった演技に終始引き込まれ、人間の弱さや怖さに震撼しながら観ていましたが、『海のホタル』の時のようなダメージは受けず、少しほっとすると同時に、どこか冷静に観ていた自分が意外でした。

 

『海のホタル』では、殺人の対象が自分の息子だったからなのか、

あるいは、今作で、殺される男たちの造形が、少し滑稽に描かれていたせいなのか、

容赦なかったシライケイタさんの演出に比べて、瀬戸山美咲さんの演出は少し現実から浮き上がっていたような感じを受けたからなのか。

 

私は、主犯格のサイコパスぶりと、ある状況下においてコントロールされてしまう人間の弱さや、女性の集団心理の特徴を表す「友達」というキーワードに興味を惹かれて観ていて、そこに関心がいく自分もちょっと怖いな、とも思いました。

 

以下、ネタバレありの感想です。

 

 

 

 

IMG_2733.JPG

2018年2月24日(土)14時

吉祥寺シアター

作・大竹野正典

演出・瀬戸山美咲

出演・松永玲子 高橋由美子 松本紀保 安藤玉惠 政岡泰志 成清正紀 井上幸太郎 藤井びん

 

 

 

 

 

舞台は、三方を客席が取り囲むようになっていて、中央にソファーと電話台が置かれ、そこが居間になったり、病院の部屋になったりしました。

物語は大阪に置き換えられていて、ある病院に勤めるヨシダ(松永玲子)、イシイ(高橋由美子)、ツツミ(松本紀保)、イケガミ(安藤玉惠)の4人の看護師は同じ看護学校の同窓生。

 

4人は、仲の良い同僚という感じで、なかでもヨシダは他の人の悩みを聞いたり、金を貸しても催促しなかったり、みんなで同じマンションを買って住もうと言ったり、ちょっと強引なところもあるけど面倒見のいい人物のように見えますが、ヨシダがこの事件の主犯格で、

 

男のために自分の人生が踏みにじられていると感じて苦しんでいるイケガミやイシイの悩みを聞き、優しく相談にのったり、問題をでっちあげて自分が解決するふりをして恩にきせたり、一方で借金の返済を迫り、ついにイケガミやイシイが相手を殺すしかないと思うところまで追い詰めます。

 

イケガミが、男を殺害するシーンは、ともに手を下したツツミと、電話で遠隔的に指示を出すヨシダの冷徹さが怖かった。その後、イケガミは男の亡霊を見たりして不眠状態になるけど、でも自分はヨシダのおかげで「救われた」と思っている。

 

ヨシダは、イシイにも同様の手口を持ちかけ、はじめイシイは倫理観や良心から抵抗しますが、ヨシダの、「自分自身が投資の失敗で破滅寸前なので密かにイシイの夫に貸していた金を返してほしい」という作り話を真に受けてしまいます。

ツツミやイケガミからの同調圧力や、あんなに面倒をみたのに、今自分を助けてくれないなら、もう「友達」ではない、というヨシダの言葉から、ついに、イシイも、保険金目的で、夫を殺害することを決意するところで劇は終わりました。

 

今回の作品では、女たちの間の共感と衝動が事件に向かわせたように描かれているのかもしれませんが、外から見るととても仲良く見えるけれど、女同士の集団の中では力関係がうごめいていることもよくあることで、

劇中何度も出てくる「友達」という言葉に救いを求めつつ実は縛られている様や、一見、共感と助け合いの上に成り立っているようにみえる関係が、その実支配と被支配の関係であったように私には思えました。

 

イケガミもイシイも、確かに男関係では苦労していただろうけれど、ヨシダによるコントロールがなかったら、殺人までは犯していなかったんじゃないかしら、と思って、松永玲子さんの演技は、飴と鞭を使い分け、人心を把握して操るヨシダの恐ろしさを感じさせるのに十分なものでした。

 

ツツミは、治験コーディネーターで、担当の癌患者に対しては誠意をつくしてあたり、患者が死亡した時は心から悲しむんですが、一方では、ヨシダに協力的で、イシイにも夫殺しを迫る。ツツミは、ヨシダのことを、昔から嘘つきだったけど憎めない、というようなことを言っていましたが、私は、観ていて今ひとつ、ヨシダとツツミの関係が理解できませんでした。

実際の事件について読むと、ツツミとヨシダはレズビアンの関係だった、とあったので、ああ、そうか・・と思いましたが、この作品ではその点は明確に描いていませんでしたね。

 

人の命に携わる仕事の看護師が、人を殺めたことに、私たちはショックを受けるわけですが、ツツミに限らず、イケガミも、イシイも、ヨシダも、患者に対してはいい看護師だったのではないかなあ、と何となく思いました。

ヨシダが、いずれは誰でも死ぬのだから、と(男たちの死もなんということはないという意図で)何度も繰り返して言うんですが、日々、人の死に直面している看護師だからこそ、その言葉の説得力が大きかったのかなあ、と思ったり。

 

金や女にだらしないダメ男たちについては、そのダメ振りが滑稽に思えて、ちょっと可愛くも見えてしまったんですが、演出の瀬戸山美咲さんがこんな風に演出したのはなぜかしら。もっと切実な描き方をした方が、より女たちが彼らを殺さざるを得なかった説得力が出たような気がしますが、いや、それでは、ヨシダの罠にはまってしまう・・?笑

 

男を殺した後もどこか浮足立って生きているように見えるイケガミを演じた安藤玉惠さんは不思議な魅力があったし、

ツツミの、患者思いの姿と冷酷な姿の二面性が見事だった松本紀保さん、

倫理とのはざまで苦しみ、混乱する姿が印象的だった高橋由美子さん、

そして観終わった後、思わず、「ヨシダ、怖い・・」と友人と言い合った松永玲子さん。

 

タイトルの、「夜、ナク、鳥」とは、ナイチンゲールとも呼ばれる夜行性の鳥のことで、看護師の代名詞でもありますね。

この事件の犯人たちは、「黒い看護師」と呼ばれているようですが、

でも、自分は彼女たちと絶対に違うと言い切れるのか。

誰でも、(自分自身も)、何らかの偶然や状況が重なったら、そうなる可能性が・・心の中の黒い鳥をもっているのかもしれないし、時にそれを鳴かせてしまう弱さをもっているのかも、などと思うと、ひんやりとしたものが心をよぎっていきました。

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