日生劇場で上演中の、ウディ・アレン脚本・福田雄一演出・ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』を観てきました。

(以前アップした記事内容に、記憶があいまいなところがあり正確ではない可能性がある部分を訂正して、さらに感想を加筆しました。2月17日)

 

この『ブロードウェイと銃弾』は、1994年にウディ・アレン監督で公開された映画を、ウディ・アレン自らがミュージカル化して2014年にブロードウェイで上演されたもので、1920年代の禁酒法時代のニューヨークを舞台にしたコメディミュージカル。

 

私は原作の映画は観たことはないんですが、今回、キャスティングがすごくはまっていたと思うし、役にぴったりのキャスト達が、その魅力を十分に発揮していたと思います。

衣装や美術もその年代にあわせていてとても素敵で、音楽も1920年代から30年代のジャズやポップスが使われていて粋でした。

そして何より、笑えて楽しかった!これはもう、理屈抜きに楽しむ作品だと思います。

 

とはいえ、そこはウディ・アレン。バックステージもののコメディの中に、皮肉や、毒や、風刺が込められているし、そもそもいろいろと不謹慎。

囲み取材で、日生劇場でこんなに露出の多い衣装の作品が上演されるのははじめて、という話がありましたが、お色気もありで、「あらまあ。」と思うところもありました(笑)。

でも、下品にはなりすぎていなかったと思うし、そのへんも含めて、笑い飛ばしたいところ。

(約1カ所、やや、ひいた台詞はありましたが・・・変えないのかなあ)

 

でも、翻訳ものの芝居を日本で上演して観客を笑わせるのは、文化や言語の違いもあって難しいと思うんですが、笑いどころできっちり笑えたのは、日本の観客向けにうまくアレンジした、演出の福田雄一さんの手腕なのだろうな、と思いました。

福田さんは、フリーダムな作品作りをするという印象で、アドリブ合戦もあると聞き、

 

正直、今回の『ブロードウェイと銃弾』では、あまり崩しすぎないでほしいなあ、と思っていました。アドリブもあっていいとは思うし、事実笑えることも多いんですが、作品の中で「遊び」を取り入れることと、「ふざける」こととは違う、と個人的には思っているので。

 

でも、この作品は、かなりダンスの量が多くて、演出における振付の役割がすごく大きいんですね。また、今回は脚本の台詞を変えずにそのまま演出したそうで、いつも自分で台詞を書く福田さんにとっては新たな挑戦だったとのこと。

私は、オリジナルの部分と、福田さんならではの味付けがある部分との兼ね合いは、今の感じがちょうどいいと思うので、このままキープしてほしいなあ、と個人的には思います。

 

オリジナルの振付をしたのはブロードウェイで数々の賞を受賞しているスーザン・ストローマンで、今回、振付師のジェームス・グレイさんのもと、日本のダンサーがスーザンのオリジナルの振付で踊るんですが、セクシーで、キュートで、粋で、カッコいいです!

衣装替えもすごく多いし、振付の要求水準も高くて大変だと思いますが、アンサンブルの皆さんすごく健闘されていると思います。ダンスも、大きな見どころですね。

 

 

劇作家のデビッド(浦井健治)は、念願かなって、自分の戯曲をブロードウェイにかけられることになりますが、プロデューサーのジュリアン(加治将樹)が見つけてきたスポンサーは、マフィアの親玉のニック(ブラザー・トム)。

ニックは、愛人のオリーブ(平野綾)という大根役者を主演にしろと要求し、監視役に部下のチーチ(城田優)を送り込んできます。

 

デビッドは往年の大女優のヘレン(前田美波里)のオファーに成功しますが、ヘレンは脚本を書き換えるように色仕掛けで要求してくるし、他にも癖の強い俳優たちに囲まれて、右往左往。作品も迷走していきますが、そこにチーチが脚本と演出に口をはさんできます。

が、むしろチーチの提案の方が的確で、作品はどんどん良くなっていくのですが、やがて事件がおき・・・

 

というお話なんですが、

 

デビッドを演じた浦井健治さん。私は浦井くんの生の舞台は『デスノート』と『トロイラスとクレシダ』を観たのみですが、その時の、緊張感ある印象とは違って、今回は、周りに翻弄され、右往左往するさまが、ふわふわ感たっぷりで可愛らしく、いろいろなものの間で揺れるデビッドをコミカルに、時にシリアスに演じていて、この役にぴったりだなあ、と思いました。

恋人のエレン(愛加あゆ)とのデュエットも素敵でしたし、ヘレンとのシーンも見もの。

 

チーチを演じた城田優さん、ソフト帽やスーツをビシッと着こなし、強面のギャング役がぴったり。終始クールにふるまっているんですが、真剣にやればやるほど笑いを誘うというコメディの王道を意識している感じで、しっかりとした役作りが作品を支えていると思いました。

 

あと、話題のタップダンスシーン!

私は、最近、自分が“城田くん推し”であることを明確に自覚したので(笑)、開幕前から注目されていたタップダンスシーンは、むしろ自分の方が緊張していたんですが、初日、無事成功した時は、「ヤッター!!」と思いました。

このシーン、長身が活きる城田くんも、アンサンブルの皆さんもとてもカッコいいです!

 

それから、この作品、ニックの愛人のオリーブの存在も大きいと思うんですが、演じた平野綾さんがとても良かった!私は平野さんを拝見するのははじめてなんですが、おバカで、演技が下手な役を、嫌みもなく、可愛らしく演じていました。露出の多い衣装でも、いやらしい感じにはならず、その特徴的な声もとても活きていたと思います。

 

また、往年の大女優のヘレンを演じた前田美波里さん、さすがのオーラで、デビッドを誘惑する役だけど下品にはならず、上品さがあってとても素敵でした。

マフィアのボスのニックを演じたブラザー・トムさん。演技に緩急があって、ドスのきいたところとキュートなところの落差が可笑しかった。全体的に自由度高め。

 

エレンを演じた愛加あゆさんは、濃い人物たちの中で清涼感が際立っていたし、

ワーナーを演じた鈴木壮麻さんは、お茶目な言動が目をひくけど、劇中劇ではビシッと決まるところがカッコよかった。

ちょっと変わり者の女優のイーデンを演じた保坂知寿さんも楽しかった。

プロデューサーのジュリアンを演じた加治将樹さん、ヘレンとのシーンもメリハリがあってとても良かったし、明るさとちょっぴり胡散臭い感じがあるところが良かったです。

 

そして、皆さん、みんな歌がうまくて素敵でした!

 

舞台映像のPVがこちら↓

 

 

 

ここからは、物語の結末に触れる感想を書きたいと思いますので、未見の方は、自己判断のもと、お読みください!

 

 

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2018年2月7日(水)17時

日生劇場

脚本 ウディ・アレン

演出 福田雄一

翻訳・訳詞 土器屋利行

オリジナル振付 スーザン・ストローマン

振付補 ジェームス・グレイ

出演 浦井健治 城田優 平野綾 保坂知寿 愛加あゆ ブラザートム 鈴木壮麻 前田美波里 加治将樹 青山航士 他

 

 

 

 

デビッドが、自分の書くものに妥協はしたくないと思いつつ、出資者の要求はのまざるを得ないところとか、自分の才能への自信や懐疑などは、“作家あるある”という感じで、ウディ・アレン自身を投影しているようだし、

本当はチーチが書いていることを黙っていたり、ヘレンの誘惑にのってしまうところなどは、弱さや芯の通らなさを感じさせるし、

一方で、ギャングのチーチの方が才能があること、それをデビッド自身が認めざるを得なくなっていくところはとてもシニカル。

 

やがてチーチの方がより良い舞台づくりにのめりこみ、オリーブの大根ぶりに耐えられなくなっていくけど、逆にデビッドの方が「妥協も必要」といさめるところの逆転も可笑しい。

一生懸命、よい舞台にしようと、脚本を書いたり演出をしていくチーチに、観ているこちらも共感してきて、なんだか嬉しくなったり、応援したくなったりもしてくるんですが、どうしてもオリーブを使いたくないチーチは、舞台の初日前に、ついにオリーブを殺してしまいます。

 

チーチがやったと直感でわかったデビッドは、「作品のためとはいえ、人の命を奪うなんて・・」とチーチを責めますが、チーチの方は、作品の方が、芸術の方が大事だ、と主張します。

それを容認できないデビッドは、自分自身の限界も知ることになる・・・。

 

倫理的に考えれば答えは当然と思われるのに、人命と舞台の成功とどちらが大事か、という問いを俎上にのせるところに、芸術のためには、何をどこまで犠牲にできるか、を問うていて、ショービジネスや作り手の残酷さやある種の狂気を描いているようにも思えました。

 

オリーブの代役を立てて初日の幕は開きますが、オリーブ殺しがばれたチーチは、撃たれてしまいます。舞台は成功しますが、そのパーティ会場で、デビッドは、脚本を書いていたのは自分ではなくチーチだ、と真実を告白します。

はじめ、周りは驚くものの、「まあ、なにはともあれ、舞台は成功したし・・」と、なんとなくの大団円になるんですが、ここはちょっと釈然としない感じ。

チーチが死んでからの展開が、「あれ、これで終わり・・?」となってしまい、カタルシスにならないのですよね。でもこれ脚本がそうなっているんですものね・・・。

 

ケラリーノ・サンドロヴィッチさんがウディ・アレンの『カイロの紫のばら』を翻案して作った『キネマと恋人』では、結末は映画を踏襲していましたが、新たに付け加えた登場人物の効果もあって、切なくも胸が温まる気持ちになって観終わることができたんですが、今回は、脚本と振付はオリジナルのものを使うこと、という制約があったのかな、と推察しますが、それゆえ難しい部分もあったのかと。

 

ただ、実はエレンが芝居をしていた、ということや、デビッドの感情も、何となく流れてしまう感じがあるので、もっとくっきりしていたらよかったのかな、とか、福田さんの演出として、最後のシーンでは何を強調したいか、が明確だったらよかったかな、とも思いました。

でも、とにもかくにも舞台が成功して金が儲かればいい、ということの風刺ととらえればいいのかな、とも思います。

 

デビッドは、一度は別れた恋人のエレンともう一度やり直すことになるんですが、自分自身に才能がないことをきっぱりと認めたうえでのことなのがちょっと切ない。

そして、チーチが死んだことも、悲しかった。今までさんざん人殺しをしてきたので、同情の余地はないんですが、そうか、稀有な才能が消えてしまったことが悲しいんだな、と思って、そこに、常々良い作品を観たいと思っている自分のエゴをちらりと感じたり。

と、こんな風に、笑いの中にも少し苦いものが残る部分もある作品でしたが、個人的にはそこが好きです。

 

東京公演の後は大阪、博多と長丁場で、演じる方々も、スタッフの方々も大変だと思いますが、どうか、最後まで、お怪我などありませんように。

そして、たくさんの観客に、笑いを届けてほしいと思います。