彩の国シェイクスピアシリーズ第33弾『アテネのタイモン』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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小劇場からシェイクスピアまで、観てきたお芝居の感想をつづります。
基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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さいたま芸術劇場で上演された、シェイクスピア作・吉田鋼太郎演出『アテネのタイモン』を観てきました。

彩の国シェイクスピアシリーズの二代目芸術監督に就任した吉田鋼太郎さんの演出で、私はAUNの作品をいくつか観ましたが、鋼太郎さん演出のシェイクスピアは久しぶり。

 

観る前に、何も予習していかなかったんですが、内容がとてもわかりやすく伝わってきました。AUNでは小劇場で上演していたため、大きな舞台はどんな風に演出するのかな、と思いましたが、堂々とした使いっぷり。

ところどころ、蜷川さんの演出を思わせる部分もあって、蜷川さんへのオマージュを感じましたし、全体的にリラックスして楽しめる雰囲気があって、面白く観ることができました。

 

また、今回、AUNや、蜷川組や、カクシンハンなどから、シェイクスピア俳優さんたちが集結していたのがとても贅沢で、信頼できるその演技力を大いに楽しみました。

シェイクスピアははじめてという柿澤勇人さんも、台詞が明晰で立ち姿もよく、シェイクピア劇にすごくなじんでいたと思います。

 

以下、ネタバレありの感想ですので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!

 

 

 

 

 

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2017年12月16日(土)18時30分

さいたま芸術劇場

作・W・シェイクスピア

翻訳・松岡和子

演出・吉田鋼太郎

出演・吉田鋼太郎 藤原達也 柿澤勇人 横田栄司 大石継太 間宮啓行 谷田歩 河内大和他

 

 

 

 

 

 

 

 

アテネの貴族のタイモン(吉田鋼太郎)は、誰にでも気前よく金品を与え続けて、その称賛の声を友情と勘違いしています。執事のフレヴィアス(横田栄司)の助言も聞かずに金を使い続けていた結果、ついに破産してしまいます。

 

やむなく友人の貴族たちに借金の申し込みをするよう、使いを出しますが、タイモンからあんなに恩恵を受けていたにも関わらず、友人たちは、なんだかんだと理由をつけて、誰一人タイモンを助けてくれません。

タイモンは、みんなが自分の金目当てだったことを知り、怒り心頭。

貴族たちを再び招待して、ご馳走すると見せかけ、石とお湯が入っている皿のみを供し、驚く彼らにお湯をかけ、石を投げつけて追い返します。

 

はたから見ていると、貴族たちが単なるおべっかいを言っているのにすぎないのがわかるし、それに気づかないタイモン、甘すぎるでしょ・・と思うし、執事の言うこともちゃんと聞かないし、哲学者のアペマンタス(藤原竜也)の皮肉交じりの忠告にも耳を貸さないし、挙句のはては、ああ、やっぱりな・・・と思うんですが、貴族たちから借金の申し込みを断られるところは、かわいそうになってしまいます。

 

また、友人の貴族たちの言動も、人間の欲やずるさをカリカチュアして表していて、こういうこと、あるあるだなあ・・と、でも、より愚かに見えたのは友人たちの方でした。また、使いの者が貴族たちのところに行って断られるシーンは、ちょっと小劇場っぽい遊びもあった感じでおもしろかったです。

 

そして、最後、タイモンが大暴れするところのキレっぷりは、さすが鋼太郎さん、という感じで、ちょっとスッとしてしまいました。

あと、借用書の紙が赤い色だったところ。あの「赤」に、蜷川さんの舞台の「赤」を重ねて見ている自分がいました。

 

二幕目は、うってかわって陰鬱な森の中。

すっかり人間不信に陥ったタイモンは、森の中の洞窟に引きこもってしまいます。

人間に対する不信と、呪詛を吐きながら、樹の根を食べて生きているタイモン。

ここにも、それぞれの思惑で貴族や元老院議員たちが訪ねてくるんですが、誰が来ても追い払ってしまうし、哲学者アペマンタスや執事のフレヴィアスが来ても、その真意を理解しながらも、人間への不信を解こうとはしません。鋼太郎さん演じるその絶望は、迫力すらありました。

 

二幕では、森を訪れる者とタイモンとの対話劇になるんですが、この対話自体がおもしろかったです。でも、そう思えたということは、台詞の意味や関係性を演出家がしっかりととらえているからこそだと思います。

 

アテネを追放された将軍、アルシバイアディーズ(柿澤勇人)が、アテネに復讐を企てて進軍する途中、森の中でタイモンと出会い、タイモンの境遇に同情を示しますが、タイモンはそれにも心を動かされない。

最後、タイモンは海辺で死んだこと、その墓碑銘には全人類への憎しみの言葉が刻まれていたことが兵士の報告で告げられます。

 

この、一幕と二幕での振り切れ感や、タイモンが全く救われずに終わるのも、なんだかすごい・・・

でも、アテネ側がアルシバイアディーズに和解を申し入れた時、彼がそれを受け入れたのは、森の中でタイモンと出会ったことが彼の心の中に何かを生み出したからかしら?などと想像して、私はそこに救いを見出したい気持ちになりました。

 

この戯曲、読むだけだとあんまりおもしろいと思えないような気がしますが、鋼太郎さんの演出は、演出家としてどう理解し、何を伝えたいかが明確だからこそ、観ていてわかりやすく、面白いと思えた気がします。

そして、演じる側にも、観る側にも、「シェイクスピアの劇を楽しもう!」と、その楽しさを共有させてくれるムードがあって、それでいて、物語にギューッと集中させるリーダーシップもある、そんな鋼太郎さん演出の、次回作がまたとても楽しみです。

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