ブス会『男女逆転版 痴人の愛』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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こまばアゴラ劇場で上演された、ブス会・ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕40周年記念・ペヤンヌマキ作・演出『男女逆転版 痴人の愛』を観てきました。

ブス会の作品は、以前『女のみち2012 再演』を観たことがあって、女達のあけすけすぎる会話に、ちょっとびっくりしましたが、やがてエールを送りたい気持ちになって、自分もエールを送られたような、そんな気持ちになった作品でした。

 

今回、ブス会主催のペヤンヌマキさんと、安藤玉恵さんが、ともに40歳になる生誕40周年記念ということで、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を、時代を現代に移して男女を置き換えて描くというので、興味を覚えてチケットをとりました。

能舞台のような舞台装置に、チェロの生演奏を混ぜたりと、意欲的な試みのある作品で、安藤玉恵さんの生き生きとした演技が魅力的でした。

 

以下、ネタバレありの感想です。

 

 

 

 

 

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2017年12月10日(日)14時

こまばアゴラ劇場

作・演出 ペヤンヌマキ

出演 安藤玉恵 福本雄樹 山岸門人

チェロ演奏 浅井智佳子

 

 

 

 

大学教員の「私」(安藤玉恵)は、40歳になるまで仕事ひとすじに地味に生きてきた女性で、冒頭で、「この国では女は結婚しても幸せになれない」というような台詞があったと思うんですが、そんな思いもあってか、独身でいることを選んでいます。(今、ふと思ったんですが、ではどこの国なら幸せになれるのかしらん?まあ、それはともかく)

そんな「私」は、未成熟な少年を教育して自分好みの男に育て上げたい、という密かな願望をもっています。

 

ある日、バーで、親もいなくて野良犬のような生活をしている15歳のナオミ(福本雄樹)という少年と出会います。「私」は、ナオミを自分の家に住まわせて、一流の大学に入れて、一流の男にすべく、教育をするのですが、ナオミが受かったのは音楽関係の専門学校。

 

そして、「私」の理想通りにはいかず、ナオミは、男女の区別なくいろいろな人と付き合っては、放蕩三昧。しかも、音楽の才能がないこともわかってしまう。

それでも、「私」は、ナオミを見捨てることができず、きちんとするように言い聞かせ、家から出ることを禁止すらしますが、ナオミは隙を見て女に会いに行ったりと、「私」を裏切り続ける。

ついに、我慢ができなくなった「私」は、ナオミを追い出しますが・・・

 

谷崎潤一郎の『痴人の愛』同様、教育を受けさせて相手を立派な人間にしようとするも、やがて嫉妬に苛まれていくところは同じですが、谷崎潤一郎の『痴人の愛』では、男が女の肉体に溺れていくのに比べて、この逆転版ではナオミの「お母さん」になるところが逆転版ゆえんでしょうか。

15歳の未熟な少年の、「お母さん」になること。

 

「私」がナオミに感じていたのは、母性だったのか、それとも性愛だったのか、図らずも母性がわいてきたのか、母になることの願望もあったのか、あるいは、年の差を考えた時、自分の男にすることはためらわれ、「お母さん」になることで、自分自身に縛りをかけたのか・・

その正解はわかりませんが、「私」自身もわかっていなかったように見えて、ナオミに対する感情が、ゆらゆらと揺らめくさまが印象的でした。

 

自分の思い通りにならないナオミを責め立てて、だんだんと嫉妬にかられていくところは、ああ、やっぱりそうなるよねえ・・と痛々しかった。

自分が追いだしたナオミの不在を嘆くところも切なかったし、追い出したナオミがひょっこり荷物を取りに帰ってきた時、「なんでもするから。やっぱりここにいてほしい」と懇願するところは観ていて悲しくなりました。

 

その時、ナオミが、20歳の自分からしたら45歳のあんたはババアだよ、色気づいてんなよ、気持ち悪い、というようなことを言い捨てるんですが、ここも、逆転版ゆえというか、男の方が年上というのは成立するけど、25歳年上の女を性的対象としてみれるかというと、まあ、難しいだろうなあ・・と思いますが、それを言われた「私」がとても傷ついたのはわかりました。

 

そして、逆上した「私」は、ナオミの首を絞めて殺そうとしますが、その時、ナオミの身体が反応していることに気づき、ナオミの上に覆いかぶさります。

その時の「私」の勝ち誇ったような顔。

やがて、「私」は、45歳で出産し、48歳の今、3歳のナオミを育てている、という独白がありました。

子供を宿す、ということは女にしかできないわけで、これは・・「私」の勝利なんでしょうか?

でも、少年のナオミを自分の思うような男にしようとしたり、今また自分が産んだ子をコントロールしようとしている、そのエゴイズムは怖い気がします。

 

ナオミを演じた福本雄樹さん、繊細さと、不敵さと美しさが入り混じった人物像が魅力的でした。ただ、はじめて登場した時の姿が、フードをかぶっていて顔が見えなくても、すでに「男」だと感じたので、もう少し、野良犬のような少年性があったらよかったな、と思いました。

バーのマスターやナオミの友人を演じた山岸門人さん、その演じ分けや、穏やかで確実な演技が良かったです。

 

チェロの生演奏を取り入れたり、能を意識した演出もあったり、また文学的に描こうとしたところもあったようだったりと、いろいろな試みをしていることがわかりましたが、少しテイストがばらばらな感じはありました。

あと、これは意図的なものかもしれませんが、安藤玉恵さんの一人芝居というようにも見えました。

が、歓びや苦しみ、執着、嫉妬など、くるくる変わる感情の表現が豊かで、安藤玉恵さんの魅力を満喫しました。

 

この作品は、出産や母性など、40歳だからこそ、直面する揺れ動く心理が描かれていて、この生誕企画は、年齢の節目ごとにやるようなので、50歳になった時にはどんな物語が生まれるのかな?と興味を覚えます。

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