ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

お芝居大好き。今日もぽけっとにチケットを入れて劇場へ。
小劇場からシェイクスピアまで、観てきたお芝居の感想をつづります。
基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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シアタートラムで上演中の、前川知大作・演出・イキウメ『散歩する侵略者』を観てきました。

『散歩する侵略者』は2005年の初演、2007年、2011年に続き、今回が4回目の上演です。

私は2011年版を観ています。詳細を覚えてはいなかったのですが、全体的に白っぽい無機質な舞台だった印象で、発想がユニークだなあ、と思ったのと、あることを奪われた人間の変わりようとラストシーンが心に残っていました。

 

今回は、前回の無彩色だった印象の舞台に比べると、「色がついた」感じを受けたのですが、受け取るこちら側の現実や感じ方が変わったせいかもしれません。

俳優陣の演技はとても充実していて、イキウメのメンバーの演技は、力強く、円熟味を増してきたように思いました。客演の方々もとても良くて、作品の完成度も高く、やっぱり、イキウメの舞台は好きだなあ!と思ったのでした。

 

以下、すっかりネタバレしていますので、未見の方は、自己判断のもと、お読みください!

 

 

 

 

 

 

 

 

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2017年11月3日(金)19時

シアタートラム

作・演出 前川知大

出演 浜田信也 安井順平 盛隆二 大窪人衛 森下創 内田慈 松岡依都美 板垣雄亮 天野はな 栩原楽人

 

 

 

 

 

日本海に面した小さな港町、金輪町。

波の音が聞こえ、灰色がかった波の色が映し出される中に、客席に背を向けて男がたたずんでいます。

このシーン、(記念すべき)私の初イキウメ、『見えざるモノの生き残り』の冒頭のシーンを思い出しました。

 

冒頭の男は、3日間行方不明の後発見された加瀬真治(浜田信也)であることが判明しますが、以前とは人格が変わってしまった様子に、妻の鳴海(内田慈)は戸惑いを隠せません。医師の車田(盛隆二)は脳の障害を疑い、介護が必要であると妻に告げます。

 

真治は、毎日散歩と称して町を歩き回っていますが、実は、真治の体は宇宙人に乗っ取られていて、その宇宙人は、地球を侵略するための準備段階として、地球人の「概念」を集めて回っています。

概念を奪われた人間は、それについて理解することができなくなってしまい、精神の変調をきたしてしまうのですが、そんな症状の人間が増えていき・・・

 

同じ頃、老婆が家族を惨殺し、信じられない方法で自殺をする、という事件が起きます。一人生き残った孫娘の立花あきら(天野はな)は、警察に保護され、入院していますが、この娘の様子も尋常ではない。

取材でこの町を訪れていた元警察官のジャーナリスト、桜井(安井順平)は、男子高校生の天野真(大窪人衛)と出会いますが、この孫娘と男子高校生も、すでに真治の仲間の宇宙人に体を乗っ取られています。老婆の殺人と自殺も宇宙人が体に入ったせいなのでした。

 

地球を侵略しに来た宇宙人、と言われると、荒唐無稽というか、ベタというか、どう反応すればいいかわからない感じにもなるのですが、“概念を奪われる”ということに関しては、その発想が斬新だなあ、と思うと同時に、危機感や恐怖を感じるような、複雑な気持ちになりました。

自分の中で、概念と感情が結びついているからでしょうか?でも、感情とは結びつかない概念もあるし・・・。

 

概念を奪われた人間の結果がそれぞれで、

妹思いだった鳴海の姉の明日美(松岡依都美)は、真治によって「家族」の概念を奪われた後、家族に対して愛情を示せなくなり、

天野によって「自分」という概念を奪われた医師は、自他の区別がつかなくなってしまいます。

また、職場をやめてから社会に適応しようとせず、無職でいつも斜に構えた言動をしている丸尾(森下創)は、真治に「所有」の概念を奪われると、むしろ解放されて、多幸感すら覚えています。

 

この物語の背景として、隣国との戦争が始まりそうな状況にあり、その時はこの町が最前線になる、というのがあるんですが、今回の作品では、現実の日本の状況とかなりリンクさせていたような気がします。

丸尾が、元の職場の後輩の長谷部(栩原楽人)と空を見ていてUFOだと思っていたのが実はミサイルだったとか、「隣の国」という台詞などは、2011年版にあったでしょうか?私は忘れてしまっているんですが、だとしたら、現実の方が追いついてしまったのかもしれないし、その時と今とでは自分が感じる危機感に差があるのを実感します。

劇中の戦闘機の轟音も、2011年に観た時とは違って聞こえました。

 

「所有」の概念を奪われた丸尾が、やがて反戦を唱え、平和運動家になっていくところも興味深かったですし、丸尾と長谷部の台詞のやりとりや、はじめ懐疑的だったジャーナリストの桜井が、本当に人類が侵略の危機にあっていると理解し、なんとかしなくてはと思っても、それが元同僚の警察官の船越(板垣雄亮)をはじめ、周囲になかなか理解されない描写などに、作者なりの問題提起を混ぜてあったように思います。が、受け取る側の考え方によって解釈は違ってくるかもしれません。

 

ふと、「侵略」といっても、武力によるものや宇宙人の襲来だけではなく、間接的な侵略もあることを考えると、私達はもうすでに、「ある種の概念」を奪われているかも・・?と思ったりもしました。

 

そして、この作品のもうひとつの柱が、真治と鳴海の夫婦の物語なんですが、もともと、夫婦の仲は冷えていて、別居していたという設定なのに、夫がこうなった時に、すぐに気持ちを切り替えて、介護しようと思えるかしら?とは思いました。

この辺は、黒沢清監督の映画版の方が、その葛藤が詳細に描かれていたと思います。

 

「あなたはしんちゃんなの?」と聞く鳴海に、

真治の体に入っている宇宙人は、真治がこうであったかもしれない可能性のひとつだ、というような

答えをするんですが、

「こんな夫だったらいいのに・・」とか、「夫にこんなふうに言ってほしい」と思っていたような夫に、今、なっていたとしたら・・・それは、妻としては嬉しいかもしれない。

鳴海を演じた内田慈さんの押さえた演技からは、本当はまだ夫のことを愛していたのだろうな、ということが伝わってきたので、そこは納得いった感じです。

 

真治に入っている宇宙人は、概念を集めるという仕事が完了したと言い、「帰る」と言いますが、宇宙人が体から抜けると、元の人間は死んでしまう。

そして、もう間もなく、宇宙人が地球を侵略しにやってきて、確実に人類は滅びる・・・

 

それを知った鳴海は、

「あなたはまだ概念を集め終わってはいない。愛という概念を、私から奪ってほしい」と言います。

そうすれば、死んでしまう夫を悲しむ気持ちももてなくなるだろうから・・、と。

このシーンは、鳴海の真治への想いの強さも感じさせて、ロマンチックで切ないシーンでした。

はじめは躊躇する真治でしたが、鳴海から「愛」の概念を受け取った彼は、ただ、圧倒され、慟哭し、立ち尽くします。

この真治の姿には、涙を誘われましたし、人類としてのカタルシスすら感じましたが、

 

鳴海の行為も、自己犠牲や無償のもの、といえると同時に、自分以外の人間から「愛」という概念を奪ってほしくなかった、という思いもあったのではないかと思うと、「愛」は「所有」や「執着」、「支配」などともまた近いともいえて、それゆえ、人類がなかなか平和に近づけないのかなあ、と思ったりもします。

 

それでも、ラストシーンに心揺さぶられるのは、私達は「愛」を言葉では説明できなくても、それを「知っている」からだと思うし、散歩する侵略者が、その目的を見失うほどの「それ」があるからこそ、人間なのだと思いたい、とそんなふうに思うのでした。

 

真治を演じた浜田信也さん、はじめの、非人間的で不気味な感じから、段々と変化していくところ、そして最後の涙と慟哭、素晴らしかった。複雑で、強い視線が今も印象に残っています。あと、随分筋肉つけましたよね?胸筋に目がいってしまいました(そこ?)

内田慈さんも適役でしたし、大窪人衛さんも狂気めいた演技に磨きがかかっていました。

 

盛隆二さんは、硬質さとコミカルさが混ざった演技がとても良かったし、彼が演じた医師がとった冷静な行動は、見ていて希望がもてる気持ちになりました。

安井順平さんは、相変わらず巧い演技で作品のリズムを生み出していたし、森下創さんは、やっぱりああいう役が似合ってる。

明日美を演じた松岡依都美さんの、段々と壊れていくさまが悲しかったし、立花あきらを演じた天野はなさんの無邪気な残酷さが心に残っているし、長谷部を演じた栩原楽人さんの、森下創さんとの掛け合いが良かったです。

 

私は、このイキウメ版の、一縷の望みと余韻を残し、観客の想像力に任せるラストもいいな、と思います。

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