ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

お芝居大好き。今日もぽけっとにチケットを入れて劇場へ。
小劇場からシェイクスピアまで、観てきたお芝居の感想をつづります。
基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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本多劇場で上演中の、前川知大作・寺十悟演出・2017年版『関数ドミノ』を観てきました。

私は、2014年のイキウメ版『関数ドミノ』を観ましたが、今作品は、2009年版にもとづくとのこと。

2014年版の感想はここに (←ネタバレしていますのでご注意ください!)


2009年版は、DVDで観たのみですが、ラストや登場人物が違っていますね。

2017年版には、一部2014年版の要素も混ざっているよう。

寺十悟さんの演出は、人物像がくっきりとしていて、物語の構造を丁寧に、具象的に見せていた印象。はじめて前川作品を観る方にも、わかりやすかったのではないでしょうか。

キャストの演技も熱がこもっていて、全体的に熱感が高い感じがしました。

イキウメファンとしては、つい、両者を比べてしまったりもしましたが、思ったことは、やはり、前川脚本は強い!ということ。


話の展開を知っていても、二転、三転とするところは気持ちが引っ張られたし、終盤に向かうところも惹きつけられて、ラストは劇場全体が息をのむ感じになったのをひしひしと感じました。

演出家が変わっても、物語の強度は変わらないのだなあ、と思いました。

今回のラストは、2014年版に比べると違っていて、多分、観客達は、その時、同じことを願ったのではないでしょうか。


以下、ネタバレありの感想です。

結末に触れていますので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!







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2017年10月7日(土)18時

本多劇場

作・前川知大

演出・寺十悟

出演・瀬戸康史 柄本時生 小島藤子 鈴木裕樹 山田悠介 池岡亮介 八幡みゆき 千葉雅子 勝村政信






オープニングで、舞台奥に大破した車が照らし出され、キャストがシルエットで浮かび上がるところから始まって、まず、「車を出すんだ!」とちょっと驚きました。

イキウメの舞台では、観客は登場人物の会話から想像力を働かせていたのに比べると、可視的なインパクト。

ブラインドの影がストライプに登場人物を照らしたりと、照明も印象的で、独特の“絵”が描かれていたように思います。



ある都市で起きた奇妙な交通事故。

歩行者が急に道路に飛び出したため、減速する間もなく走ってきた車がこのままでは歩行者をはねてしまうとなった時、歩行者の数センチ手前で止まり、透明な壁にぶつかったかのように大破してしまいます。

歩行者に怪我はなく、運転手も軽傷でしたが、助手席に乗っていた妻は意識不明の重体に・・・

目撃者が3人おり、事故処理を担当する保険会社の調査員(勝村政信)が関係者を集めて検証を始めると、目撃者の一人、真壁薫(瀬戸康史)が、ある仮説をとなえはじめます。


この真壁が言うには、世界には願ったことが必ずかなう「ドミノ」という存在がいて、本人は自覚がなくても、瞬時に願いが叶うことがある。

今回は、事故を目撃していたうちの一人がとっさに歩行者が助かることを願ったために、この奇蹟のようなことが起きた。

目撃者の一人の左門森魚(柄本時生)こそが、「ドミノ」だと・・・


そして、左門がドミノだということを証明するためのある計画を立てます。

HIVに感染している土呂弘光(山田悠介)が左門に近づいて友達になり、左門が心から土呂のことを思うなら、HIVウィルスは消えるはず・・・


今回、「ドミノ説」を執拗に唱えるのは、20歳前半くらいの(?)真壁。学生かどうかの情報はなかったように思いますが、精神科医の主治医(千葉雅子)が、真壁の母から頼まれてカウンセリングを行っていることから、真壁自身が不安定な精神状態にあることを思わせます。


主治医は、真壁の言う「ドミノ説」は、自分の不全感を転化しようとする妄想であると言います。演じた千葉雅子さんは、終始冷静で、説得力がある演技で、やはり真壁の妄想なのか、と思う瞬間が何回か来るのですが・・・


「自分がうまくいかないのは、いつも側にドミノがいたせい。やつらのせいで何もかもが台無しになり、自分は損ばかりしている」と妄執する姿は、若さゆえの未熟さや自尊感情の低さ、反面、自意識の強さ、ということもできて、真壁を若い年齢に設定したことで、これから変わることができるかもしれない、という未来への希望も感じさせました。


2014年版では、真壁が中年の男の設定だったので、今思うとそれはとても痛々しいことのように思えます。

真壁を演じた瀬戸康史さんは、綺麗な顔立ちをしているので、こういう、コンプレックスにまみれた役柄を演じるにはハンディがあるように思いましたが、卑屈さや嫉妬などのネガティブな感情を全身で現していて、熱演でした。


そして、ドミノと目される左門を演じた柄本時生さんは、なぜか最近いいことばかり続くけど、それに対しても飄々と受けとめていて、人柄の良さも感じさせ、

イキウメの浜田信也さんが演じた2014年版の左門がもっと自信満々だったのに比べ、今回の左門はむしろ無自覚に幸運が舞い込んできている感じで、「無自覚な神様」というドミノ像にぴったりでした。


土呂が左門にHIVの感染者であることを告白し、左門から「治ってほしい」という言葉を必死になって引き出し、ついに、ウィルスは土呂の体から消えます。

登場人物も、観客も、奇蹟を目の当たりにするのですが、最後に、実は、ドミノは左門ではなく、真壁自身だった、という驚きの展開が待っています。


それを突き止めたのは保険調査員で、はじめは真壁の言うことに懐疑的だったけれど、全員の行動を冷静に見て分析をしていて、

今までのことは、すべて真壁が望んだがゆえにおこったこと。

自分こそがドミノだったのに、と、筆舌に尽くせない後悔が真壁を襲います。


2014年版では、自分がドミノだったことを知った真壁は、「消えろ!俺!」と言って暗転し、その後真壁の姿はない、という絶望的なラストでしたが、

今回は、突然倒れて意識がなくなってしまった友人(小島藤子)を救おうと、必死で友人の背中をさする姿に、真壁自身も一歩を踏み出すことができるのではないかしら、という希望を感じさせるものでした。


保険調査員を演じた勝村政信さんは、はじめは軽妙な人物像から、(個人的には最初の方の、セットを使ったギャグは好きではありませんが)真壁の仮説への懐疑を経た後の冷静さ、そして最後に真壁に告げる時の重々しく、突き放したような大人の態度への変化が印象的でした。

ラストシーンは、勝村さんのひと言、ひと言が効いていたと思います。


他のキャストも、それぞれに熱演で、個々のキャラクターが明確に描かれていたと思います。

それに比べると、イキウメ版は、没個性というわけではないけれど、抑制が効いていて、独特のアンサンブルとしてこちらに届いてくる感じ。

舞台全体としては、イキウメ版の方が観客の想像力を引き出す余白があって、その余白や抑制された表現の中のヒューマニズムなどに自分の脳が刺激されるところが好きなのだなあ、と改めて思ったりしました。


でも、この『関数ドミノ』が観客の心をとらえるのは、嫉妬やひがみなどの誰もがもつネガティブな感情を扱っていて、かつ、「信じるか、信じないか」というシンプルな命題をつきつけているからかも。

そして、現実と非現実の間に観客を遊ばせながら、説教くさくならないところもいいな、と思います。


あと、ドミノも、期間限定で、誰しもがドミノになることがある、という設定も優しい(笑)


人を羨む心や、うまくいかない諸々を他人や社会のせいにしたりするのは誰しもあることだと思うけれど、他罰的な人ほど、幸せそうに見えないのもよくあることで。

何が幸せか、なんて一概には言えないけど、自分自身が幸せな気分で生きていくために、自分の運も不運も自分で引き受けていきたいな、とそんなことを思いました。

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