アガリスクエンターテイメント~その企画、共謀につき~『そして怒濤の伏線回収』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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小劇場からシェイクスピアまで、観てきたお芝居の感想をつづります。
基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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新宿シアター・ミラクルで上演された、冨坂友脚本・演出・アガリスクエンターテイメント~その企画、共謀につき~『そして怒濤の伏線回収』を観てきました。


とある町の寂れた商店街の救済のために、地元出身者のまちづくりコンサルタントを招いて、商店の青年達が対策を話し合う会議コメディ。

紛糾する会議、錯綜する思惑、暴かれる秘密・・・やがてある解決策を見いだして、一件落着、と思いきや、そこで終わらないのがアガリスク。

ちょっと待った!まだ伏線が回収されていない!と言い出したキャストの発言をきっかけに、なぜかみんなで伏線を回収しまくるというクレイジーな展開に。


以下、ネタバレありの感想です。





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2017年9月23日(土)13時

新宿シアター・ミラクル

脚本・演出 冨坂友

出演 伊藤圭太 熊谷有芳 鹿島ゆきこ 山田健太郎 高木健 津和野諒 前田友里子 矢吹ジャンプ 沈ゆうこ 淺越岳人 榎並夕紀 甲田守






今回も、劇場は笑いと熱気に包まれて、キャストの熱演はもはや格闘技。

あれだけの台詞、スピードを乗りこなすのは並大抵のことではないと思いますが、みなさんとても見事でした。私もたくさん笑って、なんだかスポーツ観戦をしたような気分になりました。

が、観に行くまでに、実は謎の葛藤があって・・・


今回の公演は、「その企画、共謀につき」という企画のもとに行われた公演で、演目の決定から、企画会議、公開稽古、試演会などに観客が参加して、意見交換しながら作るというもの。

稽古場見学や試演会への参加というレベルではなく、「演劇制作の根本の部分から共有し、一緒に新作を開発していくプロジェクト(当日パンフレットより)」。


はじめにこの企画を知った時は、おお!と思って、ここまで思い切ったことをやる劇団は他にはないだろうし、ファンとすれば、大好きな作家さんや俳優さん達の制作現場に参加できるのは楽しくないわけがない!と思ったんですが、

でも、それって、いいの・・・?

と思ってしまい、


ひとつには、私ができるだけ先入観なしに作品を観たいタイプで、観に行く演目を決める時にはあらすじを参考にしますが、実際の作品を観るまでのワクワクや、観た時に自分が何を感じるか、自分の心がどう動くか、を楽しみにしているというのがあるかも。(若干ナルシズムがはいっているかも?笑)

なので、原則、観劇前と、自分が感想を書くまでは他の方の感想は読まないし、(そのわりに自分はネタバレ全開ですみません)観た後に、勝手に自分でああだこうだと考えるのがもはや趣味で、メイキングを見るのは好きだけど、それはあくまでも本公演を観た後のお楽しみなので、今回の企画に参加すると、そのあたりが、

というのと、


これは感覚的なことで、言葉でうまく説明できないんですが、作品の作り手と観客との間には、一線があるべきなんじゃないかしら、という思いがあって。

演劇で生計を立てているか否かに限らず、料金をとって芝居を見せる作り手というのは、プロ、ですよね?

なので、プロの領域に、観客が参加するのって、いいのかなあ?と。両者の間には、ある種の距離が必要なのではないかなあ?とかいろいろ考えてしまいました。


これって、私の頭が固いせいかもしれませんが、なんだか自分でこだわっているうちに、ファンの方々は次々と共謀者に名乗りをあげて、会議や稽古に参加して、とても楽しそう。

その楽しそうな様子を見聞きすると、それはそれですごくうらやましくなって、複雑な気分に(笑)


実際の会議に参加しなくても、制作過程はWEBの特設サイトでレポートされていたし、冨坂さんが執筆中の台本も、リアルタイムで読めるようになっていましたが、もういっそ、今回は、事前の情報なしで観てみよう、と思って、せっかくの劇団の企画とは真逆の態度で観劇することになってしまいました。

(どうしてこうなった


でも、実際に共謀者として参加された方や、サイト等で経過を追っていた方々は、今回、他では得られない経験をされたと思うし、作り手の方々も、観客と制作過程を共有する、ということでパワーを得られたかもですね。

この企画を楽しまれた方々の、気分を害することになってしまったら、ごめんなさい。この感想を書き終わったら、今までの経過を読ませてもらおうと思っています。


ほとんど情報のない状態でこの作品を観ると、まず、前半の部分は、アガリスク得意の会議もので、商店街の救済をめぐって、コスト削減のためにアーケードを撤去しようとする側と、地域の絆としてのシンボルの撤去に反対する側との丁々発止のやりとりや、敵味方が入り乱れてのあれこれ、俳優さん達の個性を生かした配役もとても楽しく、いつも通りのおもしろさ。

でもこれ、いつも通り、なんて簡単に言ってしまいましたが、前半部分だけでも相当に内容が濃いし、そこだけでもひとつの芝居として成立していました。


俳優さん達の演技もみんな良くて、コンサルタント役の伊藤圭太さん(実は私、秘かに『わが家の最終的解決』で伊藤さんが演じたフリッツ萌えしていました)のテンションの持続が素晴らしかったし、高木健さんはほんとに塗装職人にしか見えなかったし、山田健太郎さんの優柔不断なほんわかムードと、対する妻役の鹿島ゆきこさんの少しドライな軽やかさもよかった。


コンサルタント助手の熊谷有芳さんのクールな視線に痺れたし、津和野諒さんのあいかわらずのボケつっこみの冴え、とまたしても可哀想な境遇、矢吹ジャンプさんの温かさ、娘役の沈ゆうこさんの憮然とした表情の可愛らしさ、華やかさが目をひく前田友里子さん、議論を混ぜっ返す役がぴったりの淺越岳人さん、今回のアーティスト役の台詞に笑わせられた甲田守さん、あと意外にうざい役が似合っていて新境地を見た気がする榎並夕紀さん、と、大いに楽しませてもらいました。


後半の、「伏線を回収する」となったところは、前半のウエルメイドな感じをひっくり返す面白さを狙ったのかな、と思いますが、前半、普通の会議ものとしてのリアリティに引っ張られて観ていた私としては、そこの転換についていけず、

「みんな、急にどうした??」という感じに。


もともと、今回の演目は、いわゆる伏線回収って、面白いのか?それって作り手のエゴじゃないのか?という所から始まっていたと思うんですが(それ以降の経過を追っていないんですが)、後半を観ていて、クレイジーな状態になっているみんなは確かにそれだけで可笑しく、大いに笑ってしまったものの、これは「伏線回収」の欺瞞性を笑うものなのかどうなのか?そこをどうとらえていいのかわからなくて、そのトランス状態に乗り切れませんでした。


あと、「伏線回収」といっても、今まで出てきた用語を扱っているだけに思えてしまって、あれ、そもそも伏線って何だっけ・・・?とも。

むしろ、「伏線回収」を扱うならば、前半はもっとシュールな話でもよかったのではないかな、と思いました。

企画のはじめの段階から過程を追っていたら、また違った感想になるのかもしれませんが、ほとんど前情報なしで観劇した私にとって、全体におもしろかったけど、後半乗り切れなかったのが残念だったな、というのが正直なところです。


でも、こんなクレイジーな作品(褒めてます)を創れるのは常に新しい挑戦を続けているアガリスクエンターテイメントならではで、今後も、よりアグレッシブに、より先鋭化していって、もしかしたらそのうち私の感性がついていけなくなるときがくるのかなあ、とぼんやりと思ったりもしますが、その姿勢こそ、小劇場にしかできないことかも?


過去の作品の『笑いの太字』の中で、「新しい価値」という言葉が出てくるんですが、私はとても好きで、創造と破壊をくり返しながら、「新しい価値」を生み出そうとしている作り手を尊敬するし、その創造物を享受できることはとても嬉しい。

アガリスクエンターテイメントの今後の作品作りを、また楽しみに待ちたいと思います。

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