ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

お芝居大好き。今日もぽけっとにチケットを入れて劇場へ。
小劇場からシェイクスピアまで、観てきたお芝居の感想をつづります。
基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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すみだパークスタジオ倉で上演中の、フジノサツコ脚本・森新太郎演出・オフィスコットーネプロデュース『怪談 牡丹燈籠』を観てきました。

オフィスコットーネプロデュースの作品は、何作か観たことがありますが、地味だけれど重厚で見応えのある作品が多い印象なのと、(時にテーマが重くてひるむこともありますが)、今回、俳優陣も魅力的で、夏だし、怪談話もいいかもねー、と思ってチケットをとりました。


『牡丹燈籠』については、あの、「カラン、コロン」といういわゆる“お札はがし”の場面しか浮かばなかったんですが、三遊亭円朝の『牡丹燈籠』は、もっといろいろなストーリーが絡み合っている長大なお話しなんですね。

今回は、三遊亭円朝の落語をもとに、フジノサツコさんが脚本を書いていて、お露と新三郎だけでなく、お国と源次郎、お峰と伴蔵、そして孝助の仇討ちまでのエピソードが、2時間の上演時間の中に、コンパクトにまとめられていました。


この作品の宣伝動画を見たとき、衣裳が着物ではなく、白いロングドレスなどの洋装で、「なんか、シェイクスピアみたい!?」とびっくりして、どんな感じなのかなあ・・と、興味とちょっぴりの不安を感じながら観に行きましたが、斬新な美術と、あえて具象を廃した闇の中に、人間の業や恐ろしさを浮かび上がらせる演出が刺激的で、おもしろかったです!


私は前方の席だったんですが、この舞台、座席の位置によって印象が違ってくると思うので、できれば後方の席でもう一回観たいくらい。

7月30日(日)が千秋楽で、残りわずかですが、小劇場ならではの魅力にあふれる新感覚の『怪談 牡丹燈籠』、暑い夏の日の観劇にオススメです。



以下、ネタバレありの感想ですので、未見の方はご注意ください!






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2017年7月22日(土)18時30分

すみだパークスタジオ倉

脚本・フジノサツコ

演出・森新太郎

出演・柳下大 山本亨 西尾友樹 松本紀保 太田緑ロランス 青山勝 松金よね子 花王おさむ 児玉貴志 原口健太郎 川嶋由莉 宮島健 新上貴美 井下宣久 升田茂








劇場に入ると、舞台上には紗幕がかかっているだけで、他には何もなし。そして、全体的にぼんやりと暗い。やがて、その紗幕が、右に、左にとゆっくりと回転しだし、場面の転換や、この世とあの世の往来などを現していきました。


幽霊と交わったことで地獄に堕ちた、浪人の萩原新三郎(柳下大)の独白から物語がはじまり、飯島平左衛門(青山勝)の娘のお露(川嶋由莉)との馴れ初めから、夜な夜な通ってくるお露との情交、やがてお露が幽霊だとわかってからの手のひら返し。

脅えて幽霊が入ってこられないように仏像とお札で幽霊封じをするものの、金に目がくらんだ下男の伴蔵(山本亨)が仏像を盗み、札をはがしてしまうため、新三郎は死んでしまう。


その後も、新三郎が出てくる場面があったんですが、今作では、地獄にいる新三郎が語る『牡丹燈籠』という趣向だったんですね。私には、はじめ、ちょっとその構造がわかりづらかったんですが、でも、新三郎を演じた柳下大さんの、どこか内省的な感じがする、深い憂いと哀しみをたたえた演技が印象的でした。


お露も、おつきの女中のお米(松金よね子)も、白いロングドレスを着ていて、舞台の上をスーッと滑るように動いているのに、カラン、コロン、と下駄の音が効果音で入っているのが何とも不思議で、でも心地よくもありました。

今回、登場人物はすべて洋装でしたが、奇をてらった感じはしなかったのはなぜかしら。


川嶋由莉さんの演じたお露は、まだ少女のような硬さと初々しさがあって、新三郎を何度も訪ねていく女の情念のようなものは感じられませんでしたが、逆にその幼さが哀しみをよんでいたような気がします。

お露と一緒に新三郎を訪ねるお米を演じた松金よね子さんは、独特の台詞回しがとても良くて楽しめました。


お露の父親の飯島平左衛門の妻が死んだ後、妾になったお国(太田緑ロランス)は、隣家の次男、宮野辺源次郎(児玉貴志)と不義密通をしていて、平左衛門を殺して家を乗っ取ろうとしていますが、その計画を平左衛門の奉公人の孝助(西尾友樹)が知ってしまいます。


お国と源次郎は、邪魔な孝助を消そうと画策をしますがうまくいかず、やがて平左衛門を斬り殺し、あり金を奪って逃げますが、孝助は、二人の不義を知っていた平左衛門から頼まれた仇討ちをするべく、二人を追いかけます。


孝助を演じた西尾友樹さんの、その忠誠心の一途さや、かつて自分の父親を殺したのが平左衛門であると本人から告白された時の驚愕と苦悩、それでも平左衛門のために仇を討とうと決心するさま、そして徐々に復讐にとらわれ、執拗にお国達を追いかけていくところの狂気など、熱意あふれる演技がとても良かったです。

平左衛門を演じた青山勝さんの、度量の大きい人物像もよかった。


お国を演じた太田緑ロランスさんは、黒いドレスに真っ赤な口紅。大きな瞳を動かしながら、邪魔者を殺せ、と源次郎をけしかける。闇の中の赤い唇から次々と陰謀が吐き出されるのがすごく怖かった。

お国の言いなりの、気の弱い源次郎とのコントラストもよかったです。


新三郎の下男の伴蔵と、その妻のお峰(松本紀保)の、金に目がくらんで恩義のある新三郎が幽霊に取り殺されるのもいとわないところの演技も、人間の弱さを物語っていて何ともやるせなかったです。

お峰の発案で、幽霊のお米に、100両持ってくればお札をはがしてやる、と交渉し、本当に空から100両が降ってきた時に、獣のように這いつくばってお金を拾う伴蔵の姿には、笑いを誘われましたが、今でもなんだか忘れられません。


お峰を演じた松本紀保さん、劇団チョコレートケーキの『治天ノ君』で皇后を演じた時の凛とした上品さとはうって変わって、金への欲にまみれた愚かな様子は、同じ人とは思えないほどでした。

100両を元手に夫婦で夫の郷里に帰って荒物屋を起こし、繁盛したものの、伴蔵の浮気が発覚し、「貧乏な時に、あんなにあんたに尽くしたのに!」とキーキーと伴蔵を責める場面はこちらも耳をふさぎたくなりましたが、妻としての無念も感じさせて、悲しい気持ちにもなりました。


そして、ついに孝助はお国と源次郎を見つけて二人を殺し、平左衛門の仇を討ちます。

また、伴蔵は、もう一度やり直そう、とお峰をだまし、あげく、殺してしまいます。

と、紗幕の向こうから新三郎が現れて、二人を、新三郎が住む場所へと誘ってゆきました。


最後の場面で、新三郎が発した台詞は、後から森新太郎さんが加えた、とアフタートークで話が出たと思うんですが、今、その台詞を思い出せないのが悔しい!

紗幕が右に左に揺れ、うねりのある音楽を聞いているうちに、私の頭も痺れてきて、ちょっと幻惑されたようになっていたせいかも?

(あの回転は40秒ごとだそうで、最初はスタッフが人力で回していたけど、今は電動だそうです。俳優さんが、演技とのタイミングをあわせるのも、難しそう!)


孝助が最後に仇討ちを果たすところは、カタルシスをよんでもいい場面だと思うんですが、復讐という妄執にとらわれた者をも地獄へと旅立たせたところに、森新太郎さんの解釈があるように思いました。


回転する紗幕と深い闇を見ているうちに、私も闇の中に引き込まれていくような、というより、むしろ、自分からあちら側にいってしまう予感すら覚えた瞬間があって、


白いシャツに真っ赤な返り血を浴びた孝助、

妻を殺した伴蔵、

二人を手招きする新三郎、

床には残虐に殺された者達の死体、


この世も地獄、

あの世も地獄、

と思った時に、人間の欲望と業の恐ろしさを思って、背筋が凍る思いがしたのでした。

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