シアターコクーン『8月の家族たち』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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基本、ネタばれしていますので、未見の方はご注意ください。


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シアターコクーンで上演中の、『8月の家族たち』を観てきました。

トレイシー・レッツ作、ケラリーノ・サンドロヴィッチ上演台本、演出で、豪華な俳優陣による、とある家族の愛憎劇。

ブラック・コメディと謳われているように、かなりシリアスな内容でしたが、大の大人が感情をむき出しにする様が滑稽で、ケラさんらしい笑いがまぶされ、全体的にはドライな仕上がり。

ドライだけど、観劇後には、重さや苦さも残りました。


以下、完全ネタバレありの感想ですので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!



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2016年5月10日(火)マチネ

シアターコクーン

作・トレイシー・レッツ

翻訳・目黒条

上演台本・演出・ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演・麻実れい 秋山菜津子 常磐貴子 音月桂 橋本さとし 犬山イヌコ 羽鳥名美子 中村靖日 藤田秀世 小野花梨 村井國夫 木場勝巳 生瀬勝久




オクラホマ州に暮らすひと組の夫婦。

夫のベバリー(村井國夫)はアルコール依存症。

妻のバイオレット(麻実れい)は薬物依存症。

夫婦の関係は破綻しているけれど、未だ別れずに暮らしています。

夫のベバリーが、使用人のジョナ(羽鳥名美子)を雇うための面接の場面から物語が始まりました。

面接中に、バイオレットの奇声が響き、クスリでおかしくなった姿をさらすバイオレット。


8月のある日、夫のベバリーが突然失踪してしまいます。その知らせを受けて、バイオレットの元に、妹のマティ・フェイ(犬山イヌコ)とその夫チャーリー(木場勝巳)、次女のアイビー(常磐貴子)、長女のバーバラ(秋山菜津子)とその夫のビル(生瀬勝久)、孫娘のジーン(小野花梨)、そして3女のカレン(音月桂)と婚約者のスティーブ(橋本さとし)がやってきます。


久々に娘や妹達が一堂に会しますが、バイオレットは、クスリによる錯乱状態で、家族達は振り回されるばかり。やがて、保安官(藤田秀世)がベバリーの遺体が湖で発見されたことを告げに来ます。どうやら、ベバリーは自殺したらしい。

葬式の後、一族全員でのディナーになりますが、バイオレットはその席でも暴言を吐き、ディナーは滅茶苦茶に。長女のバーバラは母親ととっくみあいの喧嘩をして、ついに母親からクスリを取り上げます。


実家に集まってきた者達も、実はいろいろな問題を抱えていて、


長女夫婦は夫の浮気がもとで離婚寸前。孫娘のジーンもマリファナを常習している。

次女のアイビーは、妹の息子で従妹にあたるリトル・チャールズ(中村靖日)と密かに付き合っている。

3女のカレンの婚約者のスティーブも、どうも不誠実な男のよう。

妹のマティ・フェイは、なぜか息子のリトル・チャールズにつらくあたっている。


などなど、これらのエピソードが笑いも誘いつつテンポ良く示されて、観客はそれぞれが抱える問題を明確に知ることになります。


そして、母親のバイオレットは、実はすべてを見抜いている。ディナーの席で、バイオレットは次々と彼らの秘密を暴露していきます。

秘密を言い当てられて、みんなが困惑するところは、ちょっと小気味いい気持ちになってしまったし、クスリでラリっていながらも、母親としての洞察力が衰えていない描き方には、感心しました。


物語の終盤には、さらなるショッキングな秘密が暴かれることになり、結局、娘達は3人とも、母親を残して家を出て行ってしまいます。


次女は出生の秘密をもつリトル・チャーリーと、

3女は孫娘に手を出そうとしたフィアンセと、

夫と離婚した長女は、母親が本当は父親の自殺を止められたかもしれないのに、そうしなかったことを知り、母に対する怒りと絶望で、出て行く。

最後に残ったのは、職務に忠実な使用人のジョナのみ。


バイオレットは、孤独で、娘達を愛したいのにうまく愛せない。幼い頃に、自分の母親からつらくあたられたエピソードも語られましたが、あんな風に狂乱してしまっては、子ども達は出て行くしかない。


妹と夫が関係を持っていたこと、

妹の子どもの父親は夫であること、

夫もそのことで苦しんでいたこと、

それらを自分の中にとどめておいたこと。

その苦しみから逃れるためにクスリに依存したのかもしれないけど、結局、年老いて、夫を失い、娘達を失ってしまった。


反面、娘達からすると、母親の呪縛から逃れることができた、と言えるかもしれないけど、その前途は決して明るいものとは思えない。それに、また何かあったら、母親は娘達を呼び戻そうとするだろうし、その時は、やはり娘達は戻ってくるのでしょうか。


この作品は、戯曲はピューリッツア賞、作品はトニー賞優秀作品賞などを受賞していて、映画化もされているそうです。

ケラさんが日本で封切りされた映画を観た時には、観客はあまり笑っていなくて、でも、ブロードウェイの上演映像を観た時は、爆笑の連続だったそう。


私が観た回では、開幕後間もないせいもあったかもしれませんが、爆笑の連続とまではいかなかった感じでした。ブロードウェイで大爆笑、というのは国民性の違いなのかしら。

ただ、上演台本はよくできていたと思うし、ケラさんじゃなかったら、もっと笑いがおきなかった気もします。


脚本は、家族の抱える問題や家族間の力動がすごく鮮明に描かれていて、戯曲賞をとるのも納得。演じる俳優さん達も、キャスティングがぴったりで、それぞれの人物像が明確でした。

特に、バイオレットを演じた麻実さんは、嵐のように感情が変わる様が見事で、クスリを飲んでいないときの、老いた姿は痛々しいほど。

また、長女のバーバラを演じた秋山さんも、ネガティブな感情を語る時も潔くて格好良く、二人のバトルシーンは凄まじくて楽しかった。


ただ、二人の演技に少し重さを感じるところがあって、もう少し遊びがあってもよかったような気がします。この点、ケラさんオリジナルの脚本だと、また違う感じになるのかも。

私は、もう少し、自分が大笑いをするのかな、と思っていましたが、ちょっとシリアスな面に気をとられてしまったような。


ただ、みんな清々しいほど感情をむき出しにしていたし、そこが笑えるところでもあり、人の家のゴタゴタを見るのは、ちょっと“意地悪な楽しさ”もありますね。

あと、テーブルを囲んでのあの不穏なディナーのシーンで、盆が回ったのはおもしろい演出だと思いました。


今までの観劇歴を振り返ってみると、私にとって、家族を描いた劇は、距離の取り方が難しい部分もあるようで、もちろん、劇には何かしらの家族の要素が出てくるわけだけど、リアルでウエットなものはちょっと苦手で、ユーモアや非日常でコーティングされている(と感じられる)ものが好きみたい。

そういう意味では、ケラのドライさはやっぱり好きです。

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