みじかいストーリー 

 書いてみた 

 

 

 

『 手相(前編)』

 

 

 

ここで手相占いをするようになってかれこれ二年。

 

”当たる”と口コミで広がり、順番待ちの列ができることもある。

 

 

屋外でやっているので天候が悪い日は出来ないが、

 

この評判のおかげで、今はそれなりに収入もある。

 

ありがたいことだ。

 

 

 

 

 

この場所の少し後ろには川が流れていて、桜の木が数本植えられている。

 

花が咲く頃にはそれは美しくとても癒される。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、珍しくあまり人も来ないので、

 

もうそろそろ帰ろうかと椅子から腰を浮かせたとき、

 

二十代くらいの若い女性が近づいて来た。

 

 

 

「あのっ、見てもらいたいんですけど…今日はもう…終わりですか…?」

 

 

 

「いえいえ大丈夫ですよ、お掛けになって下さい」

 

私はニッコリ微笑み、椅子にかけるように促した。

 

 

 

 

(恋愛の相談かな…)

 

チラッとそんな事を思いながら、彼女の両手のひらを見せてもらって驚いた!

 

 

 

(!?………何だ…この手相は……)

 

 

 

今まで見た事も無い、いや、それどころか、

 

手相の概念すら吹っ飛んでしまうような手相なのだ。

 

 

 

 

私が眉間にしわを寄せてじ~~~~っと手のひらを見ているので、

 

彼女が心配して、おそるおそる聞いてきた。

 

 

 

 

 

「あの……何か悪いことでもあるんですか…?」

 

 

 

 

 

私はハッと我にかえり、とっさに満面の笑みを彼女に向けてこう言った。

 

「いや~~珍しい手相だったんで思わず見入ってしまいましたよ」

 

 

 


ははははははアセアセ

 

 

 

動揺を笑って胡麻化そうとする、あるあるだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の思考は完全にフリーズ状態になってしまったのだ。

 

 

 

 

つづく