『うさぎとカメと・・・』
うさぎがカメに提案しました。
「前回はうっかり油断して負けちゃったけど、
もう一回勝負しないか?」
カメは少し考えました。
「いいけど・・・・・・あ、そうだ!
あの芋虫さんも一緒だったらいいよ!」
カメは近くを歩いていた芋虫を指さしました。
うさぎは芋虫にたずねました。
「芋虫さん、今自分とカメさんとで
あの丘まで競争しようと思っているんだけど、
芋虫さんも一緒にどうだい?」
すると芋虫は、いとも簡単に「いいよ」と返事をしたのです。
うさぎは思いました。
(前回は油断したけど、
自分が勝つに決まっているじゃないか!
汚名返上だ!
しかしカメさんもずるいな、
芋虫さんがビリに決まっているのに、
よっぽど負けたくないんだな)
カメは思いました。
(今回はうさぎさんも油断しないだろうから、
まともに競争したら負けるに決まっている。
でも、芋虫さんと一緒ならビリにはならないよね)
カメは前回の競争で、思いがけず勝ったので
勝つことに対する欲が出ていたのです。
さて競争が始まります。
うさぎがルールの説明をしました。
「あの丘の上に立っている旗を
最初につかんだもんが勝ちだよ」
「よーい、スタート!」
うさぎはみるみるうちに丘の上にやって来ました。
ゴールの少し手前でいったん止まり、
丘の下の方を見ました。
「カメさんはまだあんな所にいるのか、
あ~~これでやっと汚名返上できるぞ。
うさぎがカメに負けたなんて
恥ずかしいったらありゃしない」
うさぎは丘の上で、辺りの景色を見ながら
喜びに浸っていました。
「さて、そろそろゴールしようかな」
うさぎが旗をつかもうとしたその時、
声が聞こえてきました。
「やあうさぎさん、ワタシが一番のようだね」
見ると、旗の根元に芋虫がくっついていたのです。
うさぎはびっくりしました。
「ど、ど、どうやって来たんだい!?」
「どうやってって、走って来たに決まってるだろう。
芋虫は本気を出したら早いんだよ!」
うさぎはヘナヘナとその場に座り込んでしまいました。
実は、芋虫はうさぎにくっついていたのです。
うさぎがゴール手前で油断している隙に、
ゴールに到着したのでした。
さて、
一方、カメさんですが・・・
ビリになりたくなくて芋虫さんを誘った、
”悪いカメ”と言われるようになってしまいましたとさ。
おしまい
