『入るべからず』 前編

 

 

昔むかし、あるところに

 

 

働き者の喜助という男がいました。

 

 

喜助は、イノシシに畑を荒らされて困っていました。

 

 

イノシシ除けの柵を作っても、いとも簡単に倒されてしまいます。

 

 

 

困った喜助は近くにある小さな祠で手を合わせ神様にお願いしました。

 

 

 

 

 

「神様、畑がイノシシに荒らされて困っています。

 

 

どうかお知恵を授けて下さい」

 

 

 

 

 

 

その夜、喜助の夢に神様が現れてこう言いました。

 

 

 

 

 

 

「そなたの願いを叶えよう。紙に[イノシシ入るべからず]と書き、

 

 

その紙を畑の四隅に埋めるのじゃ。それでそなたの願いは叶うであろう」

 

 

 

 

 

パッと目を覚ました喜助はさっそく神様のお告げの通りにしました。

 

 

 

 

 

 

朝、目が覚めて急いで畑へ行くと、

 

 

神様のお告げ通り畑は荒らされていませんでした。

 

 

次の日も、その次の日も、畑は無事でした。

 

 

 

 

 

 

喜助は大喜びで神様にお礼をいいに行きました。

 

 

 

 

 

 

「神様ありがとうございます!

 

 

おかげさまで、あれからイノシシに荒らされることも無くなりました。

 

 

これでまた、たくさんの作物が実ります。ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

それから数日たったある日、

 

 

いつものように畑に行くと、なんと!また畑が荒らされていたのです。

 

 

イノシシの足跡ではありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

喜助は夜中にそ~っと畑をのぞいていると、タヌキが二匹やってきて、

 

 

畑の作物を掘り返しているのです。

 

 

 

 

 

 

それから度々畑が荒らされるようになり、

 

 

喜助はまた神様にお願いしに行きました。

 

 

 

 

つづく