『お墓参り』
「お父さん、お母さん、そちらの世界でどうしてますか?
お陰様で私も主人も元気にしています。
社会人一年生の亜美も元気に会社に行っています」
今日は主人と二人で私の実家のお墓参りに来ました。
お線香に火をつけ、静かに立ち昇る煙の前で手を合わせ、
ご先祖様、父、母のことを思い浮かべました。
「ほらほら、お父さん、みさ子がお参りに来てくれましたよ」
「おぉそうか、じゃあ俺たちも行ってみるとするか」
「どこかに綺麗な蝶々いないかしら・・・・あっ!いた、いた!
黒くて綺麗なアゲハ蝶!私はあの蝶にお願いするわね」
「俺はあそこにいる大きくて立派なカブトムシにしよう。!
あのカブトムシだと気付いてくれそうだが・・・」
お墓の前で手を合わせている私たちの前に、
綺麗なアゲハ蝶がひらひらと飛んで来ました。
お墓に止まったり、
また私達の周りを優雅に飛んだりしました。
ふと見ると、お墓の側に大きなカブトムシがいて、
動きもせず、じっとこちらを見ているような感じがしました。
「ねぇねぇ、あなた!私、このカブトムシがお父さんで、
あのアゲハ蝶がお母さんのように感じるんだけど!」
「うん、そうだな、確かにそんな感じがするよ」
「二人とも来てくれたのね、ありがとう!」
私は泣きながら、もう一度お墓に手を合わせました。
「よかった!みさ子、わかってくれたようですね」
「そうだな、みんな元気に笑顔で暮らせよ、今日はありがとう」
いつの間にかカブトムシも、アゲハ蝶も姿が見えなくなっていました。
