ドクター今川の『京都旅行記』 | ヨコ美クリニック院長今川の学会報告/旅行記

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ドクター今川の『京都旅行記』

 

◆ISAPSとJSAPSの同時開催で過去最大規模に!

 

 2年前のリオ(ブラジル)旅行でお世話になった、アマゾン河口パラー州の大都会ベレンのI先生(アマゾニア病院院長で2011年ブラジル形成外科学会会長)から一通のメールが届きました。奥さん、内科医の息子さんとフィアンセの4人で来日すること、10月23日から京都で開催される学会前に、私のクリニックを見学したいと書かれていました。(※I先生のことは『ブラジル旅行記』でも紹介しています)

 10月21日、予定どおりにI先生は夕方まで植毛とSMPのオペに立ち会い、夕食は5人で九州料理店へ行き、日本酒やワインを酌み交わし翌朝彼らは私より一日早く京都へと出発しました。

 

◆23日(日曜日)

 

 私も昼ごろ京都入り。今回は2年毎に開かれる『国際美容外科学会』(以下ISAPS)と合同開催の『日本美容外科学会』(以下JSAPS)の総会です。会場は平安神宮の近くの『みやこめっせ』(京都最大のイベント会場・展示場)で。会期はISAPSが10月23日~27日、JSAPSが10月23日~25日。
 参加者は海外から1600人、JSAPSに参加する日本人を合わせると総勢2000人を超え、美容外科関連の学術集会としては過去最大級の規模。これだけ多くの外国人が一同に集まることはなかなかないので、駅前で乗り込んだタクシーの運転手さんも「何かあるんですか?」と。
 会期中は「ハイアットリージェンシー京都」に宿泊。実は1年半ほど前に学会指定のホテルはすでに満室で予約できない状態。葵祭や祇園祭と並ぶ京都三大祭の一つとして知られる“時代祭”が行われる時期と聞いていたので、その時点で即予約。さすがにこの時期は料金もかなり割高です。後から聞いた話では部屋探しは実際にはそれほどでもないとのことで、料金が安くなる直前の時点で予約をいったんキャンセルし、新たに予約する人もけっこういるそうです。人気の京都なので「予約が取れてラッキー」と思っていましたが、意外な裏技があるんですね(笑)。

 夕方にJSAPSの会議に出席。各委員の報告、ISAPSやJSAPSのスケジュール、予算決め等々の話し合い。その後、評議委員など主だった人たちと一緒に祇園で行なわれたJSAPSのレセプションパーティーに招かれました。

 

◆24日(月曜日)ISAPSとJSAPSが同時にスタート

 

 早朝I先生一行とホテルのフロントで合流し、真向いの三十三間堂にお参り。千体の観音像の中には「自分が会いたい人」「自分に似ている人」が必ずいるそうです。そのあと会場に向かいましたが、ISAPSは7室の会場、JSAPSは3室の会場で口演が同時併行で行われ、それらの会場を行き来しながら丸一日、講義を聞いて真面目にお勉強。

 

 

◆ノーベル賞の山中伸弥教授が特別講演

 

口演が一段落した夕方からは今度はISAPSのレセプションがあってノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が特別講演を行いました。iPS細胞を使った臨床研究、スーパードナーの話はとても興味深いものでした。その後は着物姿の外国人師匠によるお茶のお点前や、和太鼓の演奏があったりとオリエンタルムードいっぱいのプログラムに海外の先生たちは大喜び!その後は二次会で日本人の友人達と遅くまで日本酒を堪能。

 


 

 

◆25日(火曜日)

 

 午前中は早起きをして1人で散歩がてら、ぶらぶらとホテル周辺の名所巡り。
 京都国立博物館では『坂本龍馬展』(没後150年)が開催されていて、龍馬が色々な人に送った72通もの直筆の手紙や遺品の数々が展示公開されていました。

 

 

 
 智積院(真言宗智山派総本山)も、庭園がとても広く建物と緑の景観が素晴らしい。宝物館の壁一面に飾られた長谷川等伯一門の『楓図』『桜図』をはじめとした金碧障壁画(国宝)も圧巻でした。
 次に戦国時代の大名浅井長政が祀られている養源院。本堂の「うぐいす張りの廊下」を歩きながら天井を見上げると、関ヶ原の合戦の際の伏見城の戦闘の跡を移築したという生々しい『血天井』。他にも俵屋宗達が描いた襖絵『松図』など数多くの国宝級の作品を直に見ることができ感動しました。
 昼前に学会会場に向かうタクシーの運転手さんに、「京都で外国人に一番人気の場所は?」と聞くと、「伏見稲荷大社です」との答え。理由は800本の鳥居がずらっと並んでいる様がとても神秘的だと。伏見稲荷大社は24時間入ることができ、入場無料というのが外国人特にフランス人に人気の一番の理由らしいですよ(笑)。
学会会場では、サービスのお弁当を食べながら話を聞くランチョンセミナーというのがよく開催されます。医療機器メーカーが、売り込みたい製品やその使用方法を医師に紹介してもらうというものですね。私はこういうやり方に少し抵抗があってほとんど参加しません。昼食は400年の歴史を持つという錦市場にI先生を案内して、2人で市場内の関西風鰻のかば焼きを堪能しました。
 口演終了後、夕刻にISAPSの各種委員と一緒にファキュリティディナー(Faculty Dinner)に招待されました。と言っても、能、日本舞踊やマジックなども催されほとんど宴会でしたけどね(笑)。その会場で昨年、中国・杭州で開催された『中国毛髪外科学会』に私を招いてくれたJ先生(杭州市第一人民病院の形成美容外科部長・女医)と医学部6年生の息子さんに再会して旧交を温めました。

 

 

◆26日(水曜日)

 

 午前中みっちり勉強したあと、昼食はJ先生親子とI先生と私の4人で、湯豆腐で有名な南禅寺の「順正」というお店へ。客室の『順正書院』は国の登録有形文化財。庭園もレストラン付設の庭としては日本でナンバーワンと言われているそうです。美しい庭を眺めながらの食事は会話も弾み、湯豆腐の味も格別でしたね。
 

 


口演終了後、この日も夕刻からプレジデンシャルディナー( Presidential Dinner) で多くの舞妓さんや芸妓さん達が広い会場に華を添え大いに盛り上がりました。

 

 

◆英語で1時間の講演・・・ちょっぴり緊張です

 

27日(木曜日)最終日は私の出番。
 今日が本番、朝7時から8時まで頭髪以外の眉毛、ヒゲの植毛について口演しました。 
 マスタークラスで、話す日本人は私一人。しっかり準備したとはいえ、英語で1時間の長丁場は初めてなのでいささか緊張気味です。
 眉毛やヒゲの植毛は特殊なオペなので十分な経験が必要ですが、未熟な技術によって、眉毛の左右がちぐはぐになってしまった女性や、台湾で受けたヒゲの植毛で傷跡がデコボコになり、泣く泣く私のところにやって来た香港の俳優さんなどのエピソードも交えて1時間あまり英語でスピーチ。

 朝も早く、75ドルという別料金がかかるにも関わらず、多くの方に参加していただき真剣に私の話に耳を傾けてくれました。終わって部屋を出ようとすると、数人の参加者が私のところにかけよって来て「先生のところで研修はできますか?」と。「研修制度はないけど、見学だけならOKですよ」と答えて名刺を渡しておきました。

 余談ですが、以前、ヒゲのムック本を出している出版社から取材を受け、「植毛の90%は頭髪に対して、残りの10%が他の部分に対して、そのうちの5.5%が眉毛でヒゲが3.7%・・・。」というような話をしたことがあります。
 その際に、こちらからもこんな質問をぶつけてみました。「うち以外のクリニックにも、取材を申し込んだのですか?」と。するとその人は、ヒゲの植毛を掲げているクリニックに片っ端から電話したけど、応じたのは当院を含めて3軒だけだったと。しかも、その2軒のクリニックはビフォー&アフターの写真(症例)はなかったそうです。特殊な技術が必要なヒゲ植毛を実際にやっているクリニックは皆無のようですね。
 


 その後、息つく暇もなく別室で行われる8時から10時までの植毛のシンポジウムに直行。
 講師は私(日本)を含めてアメリカ4人、ブラジル、トルコ、中国(J先生)、フランス各一人の計9名が15分間の持ち時間でスピーチ。私のテーマは「アジア人の植毛」です。人種によって髪の毛の質は違い、日本人のように黒くて太い髪の毛に対する植毛ではどのような点に注意すべきか、といった内容の話をしました。
 形成美容外科では、植毛はまだまだマイナーな分野ですし、眼・鼻・乳房などいろいろなジャンルの中でヘアのセッションがあとの方に回されるのは仕方のないかもしれません。
 そんなわけで最終日は大忙し。シンポジウム後は、すぐに横浜へと戻った次第です。