ハンナ | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

「よそよそしさの起源」と題してハイデッガーを取り上げた。
 
ハイデッガーを取り上げたからには、
是が非でも取り上げねばならぬ人物がいる。
 
ハイデッガーの愛人、哲学者、思想家、
「彼女は世界に真実を伝えた」と評され、
 
世界中の注目を一身に集めたハンナ・アーレント。
 
ハイデッガーとの抗争中でも
「神の思し召しがあれば、私は死後もあなたを一層愛するでしょう」
という手紙を送ることのできる器の女性、ハンナ・アーレント。
 
ハンナがハイデッガーと愛人関係で結ばれたという状況には、
実は、その下地ともいうべき事実が隠されていたような気もいたします。
 
ハンナは高校時代、寝起きの珈琲タイムという習慣を変えるのを拒否、
1時限目の授業をボイコットするという事件を起こしている。
 
この事件は学校側とハンナの間で、より高等な難問を解けたら、
ハンナにだけハンナの主張を認めるという諮問により解決。
 
ハンナは珈琲タイムを維持するために難問を解いて見せてしまう。
 
このころのハンナの根底にあったのがキルケゴール。
 
ハンナはハイデッガーとの出会いによって、思想家としてのスキルアップを実現、
アインシュタインとも交流をもつほどの女性へと成長していく。
 
「考えることで、人間は強くなる」(「人間の条件」ハンナ・アーレント)
 
ハンナが世界中で最も注目されたきっかけは、ナチスの戦犯アイヒマンの裁判。
彼女の発言は一大スキャンダルとして世界中を震撼させた。
 
「上からの命令に忠実に従うアイヒマンのような小役人が、思考を放棄し、
 官僚組織の歯車になってしまうことで、ホロコーストのような巨悪に加担してしまうということ。
 
 悪は狂信者や変質者によって生まれるものではなく、
 ごく普通に生きていると思い込んでいる凡庸な一般人によって引き起こされてしまう事態を指している」
 
有名な「ハンナ・リポート」の一節。
 
一見、戦犯アイヒマンを擁護しているかのように思われがちなハンナの見解は、
案の定、世界中で誤解曲解を受け、世紀のスキャンダラスなセンセーショナルを巻き起こす。
 
ハンナの真実はキルケゴールを読んだ人なら容易に理解できる。
ハンナの主張はハイデッガーを読んだ人でもアタリマエに理解できる。
 
「ハンナ・リポート」の真の凄さは
世界が凡庸な、己の悪行にも気づかぬ輩で成り立っているということを
証明してしまったことにあるような気もしないでもないのです。
 
ハンナとハイデッガー。
 
ハンナは「根は人が善くて、私の心をしきりに揺り動かす人なつこさ
 (こうとしか私には表現できないのですが)を確信した」
 
と述べ、彼の前では著名人の顔を捨てて、女学生のように振る舞ったといわれる。
(「ハンナ・アーレント伝」エリザベス・ヤング)
 
ハンナは結婚後もハイデッガーとの関係は続け、
二人は生涯離れることがなかったという。
 
「神の思し召しがあれば、私は死後もあなたを一層愛するでしょう」
ハンナは身を持って、自らの主義主張を実践して見せていたかのようです。
 
最後に、
 
世紀のダブル不倫、世紀のスキャンダラスには
ハンナが自ら実践して見せた彼女の世紀の言葉、
 
「嫌いな人の真実よりも、好きな人の嘘が良い」